その日、睦美は高井戸家には現れなかった。
理由は、教室のママたち数名から誘われたのであった。
夜の8時。
芙美花、
「おばちゃん、今日は来ないね~~。」
耀司、芙美花の作ったナポリタンを食べながら、
「あぁ。…だ~~ねぇ~~。」
「何だか、凄い、家の中、静か~~~。はははは。」
「確かに。」
「必ず、おばちゃんがいて。そして、立て続けに睦美さん、来てたからね~~。」
耀司、頷きながら、
「うんうんうん。」
その頃、汐梨は、仕事が終わって電車の中。
そして、こちらは、未だにママさんたちと歓談中の睦美。
何やら、結婚話が進んでいる様子。
小室志奈子(こむろしなこ)、眞鍋に、
「眞鍋さ~~ん、そんな事言ってたら~~。すぐに40になっちゃうよ~~。」
隣の席の浦木尚江(うらきなおえ)も、
「そぅそぅ。私なんて、ヤバイ、もぅ30~~。な~~んて言いながらに、マッチングアプリで、何とかゲット~~。」
ふたり、共に、5歳の子供がいる。
ヨシカワ音楽教室のレッスン生の母親たちである。
眞鍋、そんなふたりに、
「マッチングアプリ。」
浦木、
「うんうんうん。」
そしてスマホで、ササササと。
「これなんだけどね。」
「…って。尚江さん、まだそのアプリ~~???」
小室。
「ふん。まだアンインストールしてな~~い。万が一、誰かに相談された時なんて、いいかも~~って思って~~。」
睦美、画面を見せてもらって、
「へぇ~~。今って、こういうの…、あるんだ~~。」
浦木、
「わお。雑学の眞鍋さん。こういうの、知らないかぁ~~。」
眞鍋、右手を振りながら、
「いえいえ。全然。」
そして睦美、画面を見ながら、
「わお、凄っ。」
「かっこいい人、いるでしょう~~。」
ニコニコと浦木。
小室も、
「うんうんうん。いいかも~~。マッチングアプリ、今、人気だもん。」
「とにかく。」
浦木。
「今、日本で一番結婚率が高いって評判なのがマッチングアプリ。4人にひとりが利用して結婚~~ん。…って言うかぁ~~。まっ。確かに。結婚率のダントツは~~、職場の同僚や先輩、後輩が結婚相手って言う場合もあるけど~~。他には友人、知人からの紹介ね。他には学校の同級生や~~。その学校の先輩や後輩が結婚相手~~。そして、後はお見合い。…なんだけど~~。それには全く属さないで~~、の、異性を求めている人が~~、利用しているのがこれ。マッチングアプリ。」
眞鍋、
「へぇ~~。凄いんだ~~。」
けれども浦木、
「但し。勧誘はしない。まま、私は~~。実際には自分の為に何とか方法を探して~~。…って、でも、事実、職場の同僚や先輩、後輩には、そういう人、いないし~~。当然、学校の先輩や後輩にも、そういう人はなし。どっちかって言うと~~周りに知られない。って言うか~~。周りの人、誰もが知らない人と結婚したいって言う、ある種の願望…???…あったからね~~。」
小室、
「うんうんうん。そういう人には、多分、向いてるかも~~。」
浦木、
「土台、その人に合っているか、合ってないかは、その人が決めればいいんだし。ただ、こういうのも、ある。…と、だけ~~。ただ、国内で登録者数って言うのがあるんだけど~~。多いマッチングアプリは登録者数2000万人。」
間髪入れずに睦美、
「凄~~い。」
浦木、
「でも、勧誘はしないわよ。ひとつの方法としてね。眞鍋さん、年齢の割に、奇麗だも~~ん。」
その声に睦美、赤らめて、
「そんな…。」
小室、
「はははは、赤くなった~~。」
睦美、瞬間、頭の中で、
「…でもな~~。私には…。」
高井戸の顔が…。
そして僅かの間。
そして、それを見逃さない浦木。
「えっ…???…眞鍋さん…???」
僅かなりにも何かを考えていたのだろう。僅か2秒でも。
けれども、その間が…。
浦木、眞鍋に、
「何、今の間…???」
小室も、
「うんうんうん。なんか、ちょっと間があった。えっ…???」
浦木、眞鍋を見て、
「眞鍋さん…???」
その声に睦美、
「えっ…???」
僅かにまだ頬を。
浦木、眞鍋を見ながら、
「えっ…???…って、眞鍋さん。…もしかして…、誰か、好きな人。」
いきなり慌てての睦美、体をビクン。そして両手を挙げて、大袈裟に、
「いやいやいやいやいや。いない、いない。全然。好きな人なんて。」
ただ…。その大袈裟な姿勢が、昔なら、
「な~~んだ~~。いないのか~~。」
と、なるのだが…。時代は…変わった。
大袈裟な姿勢を取れば、取るほど…。
浦木、
「あ。いる。」
真顔で。
「こりゃいるな。」
瞬間、眞鍋、浦木の顔を見て、キョトンと。
「え…???」
連動しての小室も、顔を縦に。
「うん。いるね。」
睦美、今度は小室を見て、またまた両手を振りながら、
「いやいやいや。いません。いませんよ、そんな人。」
浦木、真鍋に、
「だから、それ。」
睦美、目を丸く、
「え…???」
小室、
「やたら、ムキになるとこ。」

ママでいい…。 vol,186. こちらは、未だにママさんたちと歓談中の睦美。
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