「なんでも。」
真宮。
「カミさんも、SNSでジョエルの夢蔵のインテリアを見てウチのインテリアも、そろそろ模様替えって。そんな風に感じちゃったんだと。」
小埜瀬、真宮に、
「へぇ~~。何とも光栄な…。」
優維香も、
「うんうんうん。」
けれども、
「あ、でも…、部長…???…どうして…私と…。」
小埜瀬を見て、
「リーダー…???…部長の奥様だったら、直々に部長が…。」
いきなり真宮、
「あ~~。それ、ダメ。」
ふたりに右手を振って。
「どうせジョエルに頼むんだったら、パパじゃなくって、あのインテリアを考えた本人たちにって。」
優維香、
「パパ。…って、部長、お子さん…いらっしゃった…。」
「いる訳ねぇだろ。カミさん、40過ぎてからの俺との結婚。…しかも…、15年も経ってんのに。」
優維香、申し訳なさそうに、
「で、ですよね~~。」
真宮、
「まっ。結婚してからは、いつの間にか冗談半分で言ったパパが、習慣になっちまったって奴~~。誤解するから辞めてくれっつぅても、いいじゃん、いいじゃん。その方がおしどり夫婦って感じで響きがいいもん。…だとさ。まっ。逆に、辞めてくれって言って辞める人でもないんでね。」
優維香、
「はぁ。」
「でだ。今日の夕方、ふたり、共に予定を空けといてくれ。」
いきなり優維香、目を真ん丸に、
「きょ、今日。」
真宮、そんな優維香に、
「そう。…だけど、何か…???」
優維香、チラリと隆英を見て。
「あ、いえ…。」
真宮、小埜瀬を見て、
「リーダーも、頼む。」
小埜瀬、その声に、
「あ、あ。あ、はい。分かりました。」
優維香、頭の中で、
「…って、いきなり、今日、夕方…。」
夕方。駅への道すがら…。
余り口から声が出ない優維香に隆英、
「どうしました…???…優維香さん…???…今日は何かしら、元気がなさそうに…。」
その声に優維香、隆英を見て、
「えっ…???」
「いつもとは…、表情も…、何かしら…。悠里さんも、何だか上の空。何かあったか…???…って心配してましたけど…。」
優維香、まっすぐ前を見て、
「ううん。別に…。ただ、いつになく、忙しくなってきたな~~って、思ってるだけ。」
隆英、
「ふ~~~ん。」
交差点。
渡ろうとすると、優維香、
「キャッ。」
もう少しでフードデリバリーの自転車とぶつかりそうに。
優維香、避けそうと体を反転させて隆英の体に。
そんな優維香を抱き締めて隆英、
「おっと、危ない。ははは。」
優維香、隆英にペコリと。
「ごめんなさい。もぅ~~。いきなり~~。」
隆英、優維香にニッコリと、
「気を付けましょう。」
そして…、ふたり、電車に乗って…。
もはや、限界だった。優維香、隣の隆英に、
「ねぇ。」
隆英、優維香を見て、
「うん…???」
「話があるんだけど。」
その声に隆英、
「はい。どうぞ。」
夕方のラッシュに近い時間帯。電車は混み始めていた。
優維香、
「おかあさんね。」
隆英、
「えぇ。」
「結婚するの。」
「おや。」
そして隆英、
「確か、優維香さんのおかあさん。以前に旦那様、亡くされて…。」
優維香、
「うんうんうん。」
そして、
「それから私とず~~っと、ふたりだけ。」
隆英、優維香を見て、
「ですよね~~。ふ~~ん。」
優維香、
「…でね。」
隆英、優維香を見ながら、
「はい。」
「その、結婚する相手が…。」
アナウンスが流れる。
それと同時に、つり革に掴まっていたふたりがいきなり隆英と優維香の前の方に傾いて…。
後ろの乗客が下りる準備で押されたのである。
元に戻ったつり革のふたり。
隆英、
「結婚する相手が…???」
優維香、コクリと。
「うん。…その人なんだけど~~。」
隆英、優維香を見て、
「うん…???」
優維香、隆英を見て、
「隆英さんのおとうさん。」
瞬間、隆英、目をパチクリとさせて、
「はい…???」
優維香、前を見ながら、
「うん。隆英さんのおとうさん。」
隆英、僅かに眉間に皺。
「お、親父…???」
優維香、コクリと。
「うん。小埜瀬瑛士って言ってたから。…で、間違いなく、フランスでのコンペでプレゼン、した男性。」
隆英、
「親父がまた…、どうして…???…と、言うか。」
すぐに父親の勤務している会社の名前を。
「あ、あ、あ~~。確かに。エレガンサ化粧品。」
優維香、
「う、うん。おかあさんの会社、エレガンサ化粧品。」
隆英、僅かに目を歪めて、
「まさか…。親父が優維香さんのおかあさんと…。…って言うか…。」
優維香、
「昨日、会ったの。おかあさんから、日曜日、私に付き合ってくれって言われて…。…そして…、出掛け先で…。紹介されて、いきなり、付き合ってます。…で、いきなりおかあさん、結婚するって。」
隆英、
「わ~~お。」
体が揺れる。
隆英、右側を見て、
「着きましたね。」
電車を降りて…。
歩きながら隆英、
「なるほど。…それで優維香さん。その事で今日一日。悠里さんには何も。」
階段を降りながら。
優維香、
「いや。だ~~って~~。悠里。悠里も今。その…、あの、ほら。例の…。」
隆英、目だけキョロキョロと。
「あ、あ~~。確かに。」

好きになれない。 vol,280. 「カミさん、40過ぎてからの俺との結婚。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
