会社を出ての優維香、あちらこちら見て、
「もぅ~~。何処行ってんのよ~~。足も速いってか~~???」
右を見て、
「こっちは駅…。」
そして左を見て、
「こっちは…。」
すると…。
並木の枝たちの隙間から漏れる陽の光に、
「はぁ~~。気持ちいい~~~。」
瞬間、今までの感情がス~~ッと体から抜けて、
頭の中に、自分が今までデザインしたアイテムたちがコラージュにのように…。
「…と、言う事は…。もしかして…、こっち…???」
駆け足になって…。
そして数秒…。
すると…。通りの向こう側に…。
「あ、いた~~~。」
小埜瀬、歩道を歩きながら…。
すると、小埜瀬、日傘をさそうとしてさせないでいる老人の肩に手を。
そして、傘をさして老人に渡している。
優維香、何かしらニッコリと。
数メートル先に交差点。通りの向こうの小埜瀬を見ながらも…。
「あ、あぶない。」
女の子が小埜瀬にぶつかって転びそうに…。
そんな女の子を小埜瀬、転ぶ瞬間に抱き留めて…。
3歳くらいの女の子だろうか…。
女の子を抱き上げて、何かしら声を掛けてそのまま降ろして。
母親らしい女性が小埜瀬に近づきお礼を。
そして小埜瀬、その親子に右手を振って…。
ようやく信号が青。駆け足で優維香。
そして…、ようやく小埜瀬の後ろに…。
「リーダー。」
その声にいきなりビックリしたように小埜瀬、後ろを。
「おっと、びっくりした~~。」
優維香、少し顔を赤く、
「もぅ~~~。」
小埜瀬、そんな優維香を見てニッコリと、
「おやおやおや。チーフ殿~~。ははは、どうされました~~???」
「どうもこうも…。みんなが、気晴らしにって言うから~~。課長までも~~。」
そんな優維香に小埜瀬、
「おやおやおや。そうでしたか~~。…まっ。のんびりと参りましょう~~。」
優維香、
「どうしてリーダーは…。…そのぉ…。何で、そんなに落ち着いてるんですか~~???」
「いやいやいや。落ち着いているかって…、言われると、応えに困りますけど…。…逆に…、自然に…。…待つというのが僕の場合…。…そういう毎日…、送ってましたから…。」
「弓さんの事…、どう思ってるんですか…???」
すぐさま小埜瀬、優維香を見て、
「弓さん…???」
「はい。」
思わず難しい顔をして小埜瀬、
「ふ~~~ん。…そう言われても~~。…まっ。逆に~~。彼女とは~~。毎日、顔を合わす人じゃないですからね~~。」
優維香、
「えっ…???」
「僕の場合…。どちらかと言えば、毎日、顔を合わせている人と一緒にいられたら、それで満足。」
優維香を見て、
「そんな感じですね~~。」
そして、ニッコリと。
優維香、その声に、
「毎日、顔を合わせている人。」
小埜瀬、コクリと、
「えぇ。」
そして、
「僕の場合、ある意味、単純なんですが、母親って、あんまり、分からないんです。ほら。僕が産まれて間もなく亡くなりましたから。」
優維香、軽くコクリと、
「えぇ。はい。」
「もぅ~~。完璧に、おばあちゃん子でしたからね~~。」
「あ~~。うんうんうん。」
「親父は仕事、仕事。子供の頃からまず、僕を外に連れ出して遊んでくれる、なんて事は、まずなかったです。だから、僕にはとにかく、おばあちゃんだけだったんです。」
優維香、歩きながら、
「おかあさんの事…。」
小埜瀬、
「全然です。アルバムの中だけ。ただ、印象は…、奇麗な人。って事だけ。」
そして小埜瀬、可笑しがりながら、
「はは。いっつもおばあちゃんに色んなところに連れてってもらって…。…とに~~かく、元気なおばあちゃん。優しかったですよ~~~。絶対に怒る事のないおばあちゃんでした。失敗しても、繰り返して、我慢して。…それでも出来なかったらまた別のやり方に切り替える。まっ。悔しいって事も覚えた方がいいよ。生きる上では大切な事だ。…でも、隆英。人間に、必ずしも成功だけが正解じゃないよ~~。」
優維香、小埜瀬の話を聞きながら…。
「成功だけを夢見てもどうしようもない。その陰にある失敗の方が、どれだけ多いか。…でも、その失敗を繰り返して繰り返して、ようやく、これで何とかなる。そしてそれが叶う。それが現実なんだ。おばあちゃんは、この歳になっても、その事をしっかりと信じてる。まっ。おまえのおとうさんだって、そういう人だったんだけどね~~。梨穂子さん。おまえのおかあさん。死んじゃってからは、あの人も、変わった。」
優維香、前を見て、小埜瀬の話を聞きながら…。
「僕にはおばあちゃんがいる。だから、親父が家に帰っても、いつ帰って来たのか分からない。僕が朝目覚めれば親父は仕事に。そんな日々。…けど…。」
優維香、小埜瀬を見て…。
「僕が中学2年の時に…。おばあちゃんが…。」

好きになれない。 vol,261. 「…まっ。のんびりと参りましょう~~。」
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