吉竹、麦茶を。
「…に、なっちゃいましたか~~。」
小埜瀬も、可笑しがりながら、
「えぇ。…で、結局は…。」
自分の首に平手でスパッ。
吉竹、
「何と。」
「…って、言うか、私も、その場で、キッパリ、あぁ、辞めてやる。二度とこんな会社って。」
「な~~るほどね~~。…で…???…それからは…。」
「えぇ。トラスビーで営業をやってましたんで、営業職をと言う事で…。あの頃は…、不動産が目まぐるしく勢い、合ったんですよ。…で、不動産関係に。」
「ほぅ~~。」
「ただ…。そこも…。」
その一言で吉竹、
「ん~~~~???」
「勢いがある。…と、言う事は…。」
小埜瀬、クスリと笑って。
「結局は…、建築ラッシュ。とにかく、納期に間に合えばいい。当然、出てきますわ。」
吉竹もクスリと笑って…。
そしてふたり同時に。
「手抜き。」
「もぅ~~。最初の数年は良かったです。…けど…、波が…、頂点だったんでしょうね~~。あれからいきなり…。」
右手の平を上に。そして下に。
「ドドドド。…と。」
口を搾って、
「手抜きで顧客からはクレーム。それに…、住んでみてからのあちらこちらの欠陥。水漏れ、ヒビ。散々でした。…挙句の果てに…。あの…、リーマンショック。完璧に…、アウトでしたね~~。」
「アウト…。」
「えぇ。結局は…、その不動産会社。潰れちゃいまして。」
「ありゃりゃ。」
「それから…1年は…、無職。…44になってましたから。」
「な~~るほど~~。確かに。40代からの転職は~~。中々どうして~~。…幾ら、大卒であったとしても…。」
「えぇ。」
「…で…???」
テーブルに両肘を突いて左拳を右手で包んでの吉竹。
「あ、はい。」
小埜瀬。
「大学で同期だった友人からの電話で、たまに飲まないかって…、誘われましてね。」
「ほぅ~~。」
「今、東京に出張で来てるから会おうって。」
「へぇ~~~。」
「…で、会って飲んで…。そしたら、その同期の友人が、仙台で、化粧品会社の部長をしてるって。」
吉竹、目をパチクリと。
「おやおやおや。えっ…???…その…、化粧品会社って…???…もしかして…。」
「えぇ。エレガンザ化粧品、仙台支社。」
「あっ。とぉ~~~。な~~るほど~~。そういう訳~~。」
小埜瀬、
「えぇ~~。あの当時、販売促進に力を入れていて人手が足りないって。…で、今、仕事を探しているなら、東京ではないが、地方でも、頑張ってみないかって。」
吉竹、小さく2度程頷いて、
「ふんふんふん。」
「で…。」
小埜瀬、
「販売促進から始めて、営業。企画開発。そしてプロジェクトチームに。」
「な~~るほどね~~。」
けれども吉竹、
「あ、でも…。小埜瀬さん。今、東京に戻って…と、言うと…。…お住まいは…???」
その声に小埜瀬、
「あ、えぇ~~。はは。運が良い事に。仙台での、私の上司。」
「えぇ。」
「これまた同期に不動産事業者に友人がいて、安い物件があったら教えてくれって。…で、数日後には…。」
吉竹、
「へぇ~~。凄い人脈。」
「えぇ。トントン拍子に。」
「な~~るほどね~~。まっ。私のところに、小埜瀬さんの履歴書が回って来ている訳ではないので…。」
「えっ…???…そう…なんですか…???」
「えぇ。…多分…、社長のところで、止まっているかと…。…と、言うより…。異動ですから…。」
その声に小埜瀬、僅かに顔を綻ばせて、
「…ですね。」
「えっ…???」
また吉竹。
「…と、言う事は…。小埜瀬さん。今度東京に来て。…で、賃貸の物件。」
「えぇ。まっ。一軒家にはなりますが。」
「ほぅ。」
けれども吉竹、右目を歪めて、
「…ん…???」
今度は顔を傾げて、
「あれ…???」
小埜瀬、
「あ、はい。」
吉竹、座っている姿勢から少し体を…、座り方を直して、
「あの…。また。…つかぬ事を…。」
「あ、はい。」
「小埜瀬さん…。もしかして…。家族構成…。」
「あ~~。はいはい。はい。独り身です。…と、言うか~~~。あ~~~ははははは。バツイチです。」
いきなり吉竹、
「バツイチ。」
瞬きをして。
小埜瀬、
「あ、はい。一度だけ、結婚歴。けど…、離婚…と、言うか…。私の場合は…。まぁ…。死別ですね。」
そこまで言って小埜瀬。
「…ん…???…あっ。こういう場合は…、バツイチには…、ならないか…。あ。はははは。」
「死別…。ですか~~。」
吉竹。
小埜瀬、
「あ、はい。」
笑顔でも、下を向いて、
「もぅ~~。20年もなります。甲状腺癌で…。」
吉竹、
「そうでしたか~~~。…あ。じゃあ~~。奥様、亡くされて…、ひとりで…???」
「…と、言うか~~。ひとり、息子がいるんですけど…。今はもぅ…。独り立ちして…。まぁ…。今、何処にいるのやら。」
吉竹、思わず、
「えっ…???」
「大学卒業して、それからはもぅ~~。親元、離れてます。…と、言うか、大学入ってからはもぅ~~。自分流でしたから。家には一切。」

好きになれない。 vol,016. 「今後のマーケティング事業部、乞うご期待。」
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