羽田からの車の中で幸乃、
「先生。」
藪岡、顔を左に、
「あ、はい。」
幸乃、
「実は…。これはまだ、柚香には…。」
そして…、機内でも…。既に雲の上。
柚香、頭の中で、
「…結局…、おばあちゃんには、あの事…、言えなかったなぁ~~。…それに…、藪岡先生にも…。…でも…。…あんな…、非現実的な事…。どうやって…。初めて会った、この人たちに…。真輝君だから…。…いつも一緒だったから…。」
そして…。
「…1か月は…。会えない…か…。」
藪岡、幸乃に、
「おばあさん…。何か…???」
運転しながら。
幸乃、
「えぇ~~。…熊沢先生には…、話しては…、あるんですけど…。」
「あ、はい。」
「実は…。…私が…、最近、見る。」
瞬間、藪岡、
「あぁ~~。はい。確か…、病院でも…、そういう事…。何かしら、夢と言うか…、幻…と、言うか…。心霊現象…???」
幸乃、前を向いて、
「あ、はい。…それ…、なんですけど…。実は…。」
藪岡、チラリと幸乃を見て、
「あ、はい。」
ハンドルを右に…。そして、戻して。
幸乃、
「最初の頃は…、姿は見えるものの、何を言っているのかは飛び飛びで…。分からなかったんです。」
「えぇ…。」
「それが…。この間…。」
「あ、はい。」
「柚香が…、フランスに行くと決めた辺りから…。」
藪岡、また、
「あ、はい。」
「今度は…。言っている事も…。姿も、手を伸ばせば手を握れるほど…。」
藪岡、幸乃を見て、
「えっ…???」
「柚香と陽織の…、両親です。…私の部屋に…。布団の傍に。」
藪岡、
「ん~~~???…で…???」
幸乃、チラリと藪岡を見て。そして前を向いて、
「今度はハッキリと、ふたりが言っている事も…。」
「もしかして…。言っている内容も…。」
その声に幸乃、頭をコクリと…。
「えぇ。」
「何と…。」
「陽織を…。半年だけ。半年だけ、柚香の体を借りてこの、現実の世界で。」
藪岡、目をパチクリと。
「陽織ちゃんを…。半年…だけ…???…そして…、柚香さんの体を借りて…???…今の世界で…???」
幸乃、また頭をコクリと。
「えぇ。」
また藪岡を見て、
「…そして…、その半年が…。…つまりは…、柚香が…、事故に遭ってからの…、半年。」
その話に藪岡、
「…ん…???」
両眉の先端を僅かに吊り上げて、
「…と、言う事は…。柚香さんが…???…陽織さんに変わった時から…。」
幸乃、
「えぇ…。明後日で…。半年。…経つんです。」
藪岡、その、幸乃の声に、
「まさか…。」
「現実離れ、していると思うんです。」
藪岡、
「……。」
幸乃、続ける。
「夢のような…、幻のような…。まさかの…、心霊現象…???…なんでしょうけど…。…でも。」
藪岡、何かを考えているような風に、
「しっかりと…、聞こえた。…ですか。」
チラリと幸乃を見て。
幸乃も、
「えぇ。」
頭をコクリと。
「…ですけど…。…この話を…、信じるか、信じないか…。…とにかく、今は、既にこの世にいない人物からの…。」
「確かに。」
藪岡。
「簡単に。…信じろ。…と、言われても…。…深夜、部屋の中にいきなり現れて…。話し掛けて…。そして…、消えていなくなる。」
幸乃、
「えぇ。」
「確かに。信じろ。…と、言われても…。一概に…。…ん~~~。」
「ただ…。」
藪岡、幸乃を見て、
「ただ…。」
幸乃、
「えぇ。熊沢先生からすれば…。」
「熊沢…先生。」
藪岡。
幸乃、
「えぇ。熊沢先生からすれば…。信じてみましょうと。」
瞬間、藪岡、
「えっ…???…それは…、どういう根拠で…。」
「つまりは…。柚香が陽織に変わった事自体からすれば…。極々自然。」
「あ。そっか~~。つまりは…。柚香さん自身、陽織ちゃんに変わる事自体が、既に、現実離れしている。…しかも…、この世には存在しない人物。既に亡くなっている人物。」
幸乃、その声に、
「えぇ。」
藪岡、
「そぅか~~。なるほど…。…確かに。一概に、信じられる話、ではないけど…。実際に、今、起きている…。柚香さんが陽織ちゃんになっている事は、今では、現実。…それを誰もが認めている。…で、あれば、おばあさんの部屋に両親が現れて、話をした事も、信じない訳には、行かなくなってくる。柚香さんと陽織ちゃんも、非現実的な事が実際に起きている訳だから。」
「熊沢先生も、それらしい事を…。」
目を見開いて藪岡、
「なるほど…。さすがはベテラン医師。素晴らしい解釈。うん。頷ける。」
そこまで言って藪岡、
「いやいやいや。…私も…ちょっと…。考え方が…、偏っていたみたいです。」
幸乃を見て、
「お恥ずかしい限り。」
幸乃、ニコニコとしながら、
「いいぇ~~。…でも…。もし、それが…現実的であるなら…。」
藪岡も、
「えぇ。柚香さん、フランスで…。」
そして藪岡、幸乃を見て、
「ところで…、柚香さん、真輝君とは…???」
その声に幸乃、目をパチクリと、
「どうでしょうかね~~。この前の日曜日には…、ふたりで出掛けて。」
「おやおや。」

LIBRA~リブラ~ vol,208. 幸乃、「実は…。これはまだ、柚香には…。」
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※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
