藪岡、医局の、自分の机で、
「…ん…???…今のは…、真輝君の声…。」
柚香、奥の部屋で、押し入れから布団を…。
「と~~。これで良し。」
廊下を…。
「真輝君、お願い。」
真輝、幸乃の上半身を。
そして柚香、両膝の中に両手を、
「うん。」
全く動かない幸乃。ふたりで静かに布団に。
真輝、
「とにかく、これで。」
柚香、
「うん。ありがと。」
真輝、幸乃を見て、
「まっ。確かに。おばあさんの気持ちになれば、もぅ…、病院は…。」
柚香、そんな真輝を見て、
「真輝君。」
真輝、
「いや。亮輔も電話で…。」
「うん。」
「陽織ちゃん、熱、出したでしょ。39度。」
柚香、コクリと。
「病院って…、亮輔、言ったらしいけど…。陽織ちゃん、病院は嫌って。」
その声に柚香、
「あ、あ~~。…心肺…停止。」
「あんな事…、あったし。」
柚香、ふと、
「あ、今、藪岡先生から、おばあちゃんのスマホに。」
「えっ…???」
すると、今度は柚香のスマホの着メロ。
「あっと。」
すぐさま茶の間に戻って。
「先生…。」
そして、
「もしもし、柚香です。」
スマホの向こう、
「あっ。柚香さん。藪岡です。」
スマホに柚香、
「あ、すみません。いきなり電話、切っちゃって。」
柚香、廊下を…。そして…。
藪岡の声、
「今…、おばあさん…。あ、それと…、何だか、真輝君の声も。」
「あ、はい。…実は…。」
柚香、藪岡に話しを…。
藪岡、
「えっ…???…おばあさん、倒れた。」
「でも…。」
柚香、
「病院はやだって…。…で、真輝君と一緒に、今、おばあちゃんの部屋に。」
「そっか~~~。そんな事に…。」
柚香、スマホに、
「すみません。先生…、ご迷惑、ご心配。」
そして真輝に、
「藪岡先生。」
真輝、顔をコクリと。
スマホから藪岡の声。
「実は、おばあさんに話しがあって。…まだ、柚香さん、陽織ちゃんのままだと思って。」
柚香、キョトンとして、
「あぁ…。えぇ…。でも、私。」
「あ、うん。」
柚香、
「…で、話って…。」
藪岡、
「うん。まっ。これは…、当人にでも…。…実は…。僕も、あれからいろいろと…。解離性同一性障害。」
「あ、はい。」
「調べている内に…。まっ、当然なんだけど…。あちこちにも、情報共有として…。」
柚香、また、
「あ、はい。」
「そうしたら~~。ある人から僕に、連絡が…。」
「連絡…。」
「フランスの…、ある大学の教授で…。しかも…、この人、実は…。精神医学の権威なんだ。」
いきなり柚香、
「精神医学の権威。」
真輝、柚香を見て。柚香も真輝を…。
藪岡、
「…で、その教授から僕に、一度、その人に会ってみたいって…話が…。」
柚香、いきなり目を真ん丸に、
「うそ、凄っ。」
そして、
「あ、ちょっと待ってください。」
柚香、スマホをスピーカーにして、
「先生、お願いします。」
藪岡、
「いきなり僕にも凄い話が舞い込んできて、その大学の教授、フィリップ・ピエールと言うんだが…。フランスのドーウィン大学の教授。しかも、精神医学でも権威ある精神科医だ。その人が、柚香さんに是非会いたいと。」
真輝も、
「凄ぇ~~。」
藪岡、その声に、
「おっと~~。もしかして…、スピーカー…???」
柚香、思わず目を瞑って。真輝、いきなり口を搾って。
柚香、スマホに、
「すみません。」
藪岡、
「あ、いやいやいや。真輝君もいるなら丁度いい。まっ。これは、当然、柚香さんやおばあさん、幸乃さんの合意が必要になる。」
柚香、
「あ、はい。」
「教授の話によれば、こういう事だそうだ。」
柚香、また、
「あ、はい。」
「教授が一度、こっち、東京に来る。…で、柚香さんとおばあさんに会う。実際にだ。」
「あ、はい。」
「そして、今の状況をとにかく、詳細まで診察する。…多少、時間は掛かるかも…知れないが…。そして…。教授のOKが…、出たとする。」
また柚香、
「あ、はい。」
「問題は、ここからなんだが…。」
話を聞きながら柚香、真輝を見ながら、
「問題は…、ここから…。」
藪岡、
「あぁ。…つまりは…、教授の話では…、治る。…と、言う、確信が付けば…。自分の下で…、柚香さんを…、治療。つまりは…、療養と、言う事になる訳だが…。」
柚香、僅かに、両眉の先端を吊り上げて、
「自分の下で…療養…???」
「あぁ。」
藪岡、
「…つまりは…。フランスで…、君を…。柚香さんを…、療養したいと…。」
いきなり真輝、
「凄ぇ~~~。」
そんな真輝に柚香も、僅かにニコリと。
藪岡、
「あぁ。」
柚香、いきなりの事で、
「あ、あ、あ~~~。…でも…。…あの…、先生…。」
藪岡、柚香の声で、
「あぁ。確かに、凄い事だ。実際、僕自身も驚いている。まさかと…。」
柚香、
「あ、いや…。…でも、私…、いきなり…、フランスって…。」
「確かに。」
間髪入れずに藪岡、
「いきなりフランスだ。昨日、僕に、その連絡が入った。」
また真輝、
「凄っ。昨日。」

LIBRA~リブラ~ vol,193. 「真輝君、お願い。」
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