そして…。陽織の話を聞いた幸乃、ますます…顔を左右に。
けれども陽織に、目の焦点が合わない割にも…。
「しっかし…、陽織。いやはや…。凄い。」
その声に陽織、
「何が…???」
キョトンとして。
「おぱあちゃん、陽織に、その事を話した事、一度もない。…まっ。確かに、柚香、お姉ちゃんには子供の頃、何度か、話して聞かせた事はあるけど…・。…まさか…。陽織、おまえ…。それ…。」
つまりは陽織、2歳の時に柚香が病院で幸乃に迷惑掛けたその全てを記憶していたのだった。
幸乃に枕を投げつけたり、食事も摂らなかったり、しかも病室で暴れて、
それを止めに入った幸乃の腕を齧ったり幸乃に乱暴したりしたことを…。
その事が切っ掛けで偶然にも長野診療所に行くことになった事も。
全て、記憶にあるのだった。
ただ…、幸乃、立て続けの不思議な事に…、確かに、頭の整理が出来ない。
と、言う事もあるのではあるが…。けれども、現に生きている陽織。
また、いつ柚香に戻るのか分からない、ではあるが、
とにかく、生きていると言う事にだけは、常に、安心させられるのでは…あった。
そして…。陽織、柚香からその意識が変わって…。
それ以来、大学にもいつも通り…。そして、大学生活にも、友達とは柚香のままで…。
けれども、それ以外には…。時には陽織、亮輔や阿須賀と一緒の時には、
まるで阿須賀が中学や高校の時のように、ヤンキーの雰囲気も醸し出してはいた。
それには亮輔も阿須賀も驚き、亮輔、
「おぃおぃ。マジかよ。性格も~~???」
けれども阿須賀、
「いや…。亮輔~~。…でもさ。陽織ちゃん、ある意味、店では物凄い上品にお客には振舞うから…。以前の陽織ちゃんではないほど…。」
その声には亮輔、
「ほんとか~~???」
確かに。陽織、時には物凄い上品で大人びた仕草や言葉遣いもあり、
その変貌ぶりにはルシアも肇も感心はしていた。
ただ、亮輔や阿須賀、そして、真輝と一緒にいる時には、
今まで見なかった、ヤンキー気質の性格も併せ持っていた。
これには真輝も更に混乱。
「どうしちまったんだよ~~。まるで性格が全く。」
その事を愛実にも話したが…。愛実も、
「う~~ん。確かに、そういうところ…、ないって言ったら…、そうでもなくはない。かな~~。言葉の…端々に…。…でも、今の陽織ちゃん…。私はとにかく柚香に戻って欲しい。それだけ。」
真輝もその声に、
「なんだよな~~。…それにしても…、また、1週間以上~~。」
愛実も、
「ん~~~。もの…凄い、複雑な気持ち、なんだけど~~。」
「右に同じ。」
「まっ。旦那としてはね~~。当~~然。」
瞬間、真輝、顔をグンニャリとさせて、
「愛実さ~~~ん。」
思わず愛実、
「えっ…???…あっ。聞こえた…???…あは…、あはははははは~~。って、言われてナンボよ。好きな癖に。」
「な~~事、言ったって~~。」
その声に愛実、
「もぅ~~~。ウジウジしない。…そういうトコ、ユズ、嫌いだよ~~。」
真輝も口をグンニャリとさせて、
「分かっては…、いるんだ…、けどね~~。」
「あ~~。めんどくさい、切るよ。」
と、プツリ。
いきなり通話を切られた真輝、
「ひぇ~~~。…ったく~~。」
そして、数日が過ぎた…。
ある事件が起きた。
その日もエンカントでは深夜帯にも限らず店内は満席。
珍しく、カウンター席も客で埋まっていた。
そんな時にも手際の良い陽織。客たちにも愛されていた。
ただ…、一部の男性客が…。
女性客に絡み…。
「おぃ、いいだろう~~。へへへへへ。」
かなり泥酔していたようだった。
隣の女性客は、その男性客と一緒の客ではあったが…。
けれどもあまりにもしつこいその男性に、
「ちょっと~~。やめて~~。」
「なんだよ~~。前の店ではいい感じだったじゃんよ~~。へへへへ。」
しかも、あろうことか、その男性客、今度は別の隣の女性客にも…。
ルシアと肇は、まま、良くある客同士のトラブル…程度で…、
酒の場である。もしこれが何かしら、傷害沙汰にも…、と、見守ってはいたが…。
ただ…、ある意味、オーバーヒートしそうな…。
乱暴な口を叩く男性客。仕舞いには連れの女性にグラスの中の液体を顔目掛けて。
女性はそのショックに。
大声で、
「酷~~い。」
そこに陽織が。
「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので…。申し訳ありませんが…。」
頭を下げて…。
その瞬間、男性客、テーブルを左足でドン。
勢い余って、そのテーブルの端が陽織の左大腿を直撃。
いきなり陽織、その痛さに腰を…。
「痛っ。」
男性客、女性に、
「何言ってんだおまえ。客に何意見してんだ。てめぇ~~。」
そしてとなりの女性のグラスの中の液体を陽織に。
見兼ねたルシアと肇も、すぐさまその場に。

LIBRA~リブラ~ vol,182. 「しっかし…、陽織。いやはや…。凄い。」
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