真輝、目をキョロキョロと。そして、
「あっ。…そぅ…か。…はは。うんうんうん。そぅか。…そうだよ。…そぅいう事だよ。はは。」
そして、ニッコリとして、
「ばっかだな~~。俺。はは。そうだよ。死んだ訳じゃ、ないんだよ。かかか。こんな簡単な事~~。」
そして、こちらでは…。朝から食欲のなかった愛実。
朝の食卓で母親から、
「な~~にぃ~~。朝からブスッとした顔で~~。昨夜はあんなにニコニコと~~。それに引き換え、凄い、ムッツリとした顔で~~。何があったかは、知らないけど~~。…そんな…、ブスっと、ムスッとしてぇ~~。事故なんて、起こさないでよ~~。」
昼からのシフトの母に、最後は、口を尖らせながらも、ポツリと…、
「行ってきま~~す。」
午後の講義の前に、頭を両手で、
「あ~~ん~。なんでよ、ユズ~~~。もぅ~~~。」
こちらは幸乃。スマホで熊沢に…。
「先生…。」
熊沢、幸乃の話に、
「…夢…???…と言うか…、おばあちゃん。幸乃さん…。それって…。つまりは…、霊…???」
幸乃、
「…なのかは…。…分からないんですけど…。…なんだか、最近…。私にも…、変な…。」
熊沢、受話器を耳に、
「ん~~~。…何かが…、起きている…???…と、言うか…。…何かの…、前兆…。…いや…。私の…、憶測でしか、ないんですが…。」
そして、熊沢、
「おばあちゃん。幸乃さん。…もしかして…、妙に、気になる…、のであれば…。…それこそ、その分野の専門の…、藪岡先生に…。まっ。…でも、おばあちゃんの場合は…、別に、体に…。そして、精神的にも、特に。」
「えぇ。それなんです。特に…、体も精神的にも、極々、普通に…。ただ…、変な夢とか…、幻…???…と、言うか…。」
そこまで言って幸乃、可笑しがりながら、
「変な話。私…、生まれてこの方、心霊現象というのを…、一度も。」
その声に熊沢、
「かかかかか。…あ、いえ…、失礼しました。いやいやいや。実は、私もですよ。今まで、そんな経験は…。」
「大丈夫だとは…、思うんですけど…。…妙に気になって~~。柚香も今、あんな状態で…。いえ…。3週間、陽織のままで…。それが、昨日、また突然に、陽織から柚香に戻ったと思ったら、今朝になって…。また陽織に。…で、夜中に、私、そんな…、部屋の中で…。死んだはずの…。」
「そうですか~~。」
熊沢。
「まっ。実際、世の中、不可思議な事はあるものです。…ただ。…実際、今、柚香さんの身に、何かが起こっている。この事は確かです。実証済みですから。…でも、これだけは言えます。毎日、柚香さん、若しくは陽織さん。とにかく元気で生活している。生活に何ら支障に来す事は起きていない。…私たちは、信じる以外にありません。いつかは。いずれは柚香さん、元の柚香さんに戻ると。」
幸乃、聞こえる熊沢の話に、
「先生。」
「それこそ。…これで…、柚香さん、または陽織さんが、完全に、塞ぎ込んでしまう。家から出ずに、部屋に閉じ籠ってしまう。食事も出来ない。健康を害してしまう。そんな事があったら、それこそ一大事です。とにかく、待ちましょう。柚香さんにしても、陽織さんにしても、今現在、自分の身に起こっている事実に、ましてや、医療機関を受診するような考え、ないんですから。」
また幸乃、
「先生。」
「逆に…、私たちは、この事を凄いと捉えています。とにかく、ふたり、共に、前向きです。…私は…、信じますよ。」
幸乃、目を閉じて、
「先生。」
熊沢、受話器を耳に、
「信じる以外、答えはありません。幸乃さん。おばあちゃん。」
思わず、目から涙が一滴。幸乃、
「先生…。ありがとうございます。」
「おばあちゃん。幸乃さん。しっかり。うん。」
幸乃、思いっ切り、
「はぁ…。」
そして、鼻水を啜って、再び、
「先生…。ありがとうございます。」
熊沢、
「お願いしますよ。」
「ごめんくださいませ。」
通話は切れる。
幸乃、正座をしたその太腿にスマホを握った左手を…。
そして右手も…。強く、強く、抑え込んで、
「柚香~~。陽織~~。」
熊沢、受話器を元に、
「ん~~~。」
師長の惠都子、
「先生…???」
そこに松峰、
「熊沢先生、ちょっといいですか…???…おや…。どうなされ…???」
そんなふたりに熊沢、
「いえね。汀…。」
惠都子、
「あぁ、柚香さん。」
松峰も、
「あ~~。はいはい。…で…???」
「未だに…、現象は、続いている。しかも…、陽織さんになって3週間も…。そして柚香さんに戻って、僅か3日でまた陽織さんに。」
惠都子、
「うそ。…そんな…。」
松峰、
「はい…???…なんで、そんな…。…って…。えっ…???」
「そして、今度は。」
熊沢、
「おばあちゃんの…、幸乃さん。」
松峰、瞬きして、
「おばあちゃん…???…はっ…???」

LIBRA~リブラ~ vol,169. 「ばっかだな~~。俺。はは。そうだよ。死んだ訳じゃ…。」
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