真輝はそのまま玄関に。
「ちょっと~~。朝ご飯、出来たのに~~。」
オタマを持ちながらキッチンから廊下に顔を、愛佳。
「真輝~~~。」
すぐさまシューズに。そしてドアをパタン。
「んもぅ~~~。あの子ったら~~。」
と、言いながらも…。
「…って、事は…。彼女に…、何か、あったって…???」
陽織、祖母が持つ平べったいものを見て、
「おばあちゃん、それって…???」
幸乃、陽織を見て、スマホを見て、
「あぁ、これかぃ。スマートフォンと言う、電話。柚香のだけどね~~。」
「男の人も、それ、持ってた。」
その声に幸乃、
「男の人…???」
「うん。昨日だか、一昨日だか…。」
「あぁ~~。なるほど。」
幸乃、
「うん。」
頷いて。
「今じゃ、殆ど、ひとりは、1台は持っている時代だね~~。…昔は…、こういう事は…、考えられなかったけどね~~。」
そして幸乃、柚香のスマホから履歴を…。
真輝は走っていた。頭の中は柚香と陽織で占領されていた。
幸乃、通話履歴の1ヵ所に指をトン。3回で相手は出る。
「もしもし。柚香さん、僕だけど…、何か…???」
テーブルでコーヒーを飲んでいる藪岡。
スマホ越しに幸乃、
「先生。藪岡先生。」
その声に藪岡、いきなりビクンと。
「柚香さんの…。おばあさんの…。幸乃…。さん…???」
幸乃、ゆっくりと、
「えぇ…。…朝早くから…。すみません。」
「あ…、いえ…。」
藪岡、顔を傾げて、目をキョロキョロと…。
「…ん…???…と、言う事は…。柚香さんのスマホから…???」
そして藪岡、
「…もしかして…。」
陽織はベッドに腰を下ろして。
幸乃、椅子に座りながら、
「えぇ。陽織が、昨夜…、お店に行って。」
いきなりスマホから、
「えっ…???…昨日…???…あれから…。」
「えぇ。…で、帰っては来たようです。…けど…。」
「けど…。」
「朝になっても…。柚香に戻る事はなく…。」
藪岡、
「そ、そんな…。…じゃ、今も…。」
「えぇ。…陽織の…、ままです。」
藪岡、話を聞いて、
「そうですか~~。…と、言う事は…。…何かしら…、サイクルが…、変わった…。」
「私は…。まだ…、あまり詳しい事は…、分からないんですけど…。…ただ…、今は…。このまま…、陽織を…。」
妻の有美香(ゆみか)がリビングへ。夫は電話中。
「ふん。」
藪岡、スマホに、
「えぇ…。その方が、よろしいかと…。…それにしても…。まさか…、朝になっても…。」
「えぇ。」
幸乃の声。
「多分…、一旦は、寝たと思うんですけど…。…それでも…・。」
目をキョロキョロと藪岡、
「…で…、これから…???」
幸乃、あちらこちらを見ている陽織に目を…。そして優しく笑みを…。
「えぇ。…とりあえず…、慌てても仕方、ありませんから。先ほど、ふたりで朝食を…。…メグちゃんが柚香のスマホに電話。」
瞬間、藪岡、
「メグちゃん。」
「えぇ。柚香の友達の…。」
藪岡、頷いて、
「あぁ。」
「その子も驚いて。…で、その子から、今度は真輝君にも。」
再び藪岡、頷いて、
「うんうんうん。そうですか~~。」
有美香、コーヒーを手にテーブルに。
そんな有美香を見る藪岡、
「……。」
そしてスマホに、
「そうですか~~。とにかく、分かりました。…わざわざ。電話、ありがとうございました。…ですよね。…大学の方は…。」
藪岡、テーブルの上のパンフレットのある部分を指でトン。
有美香、その部分を見て目をパチクリ。そして2度頷く。
「そういう事ですね~~。…あ。それと…。…確か…、長篠観音病院ですか。」
幸乃の声、
「えぇ。」
「そちらの…、先生にも。」
「分かりました。」
藪岡、
「朝から、ありがとうございます。…失礼します。」
通話を切る。そして妻の有美香に、
「OK。この時間なら大丈夫。行けるよ。」
有美香、
「ナイス。ありがと。亜葵乃、かなり練習してたから~~。」
藪岡の長女、亜葵乃(あきの)の事である。
学校の吹奏楽部でサックスを吹いている。
その吹奏楽部の定期演奏会のチラシを藪岡、朝から見ていたのである。
有美香、
「何…???…電話。何やら…、複雑そう…。患者さん…???」
今度は新聞を見ながら藪岡、
「あ、いや…。患者じゃないんだけど…。ひょんな事から知り合ってね。」
「ふ~~~ん。」
「解離性同一性障害。」
その言葉に有美香、いきなり、
「はっ…???…うそ。…凄~~い。…そんな人…、いるんだ…???」
「ふん。」
藪岡、
「残念ながらね~~。」
「人の身体に…、別の人格が…乗り移るっ…。…いやいやいやいや。」
そして、
「恐いよね~~。」
「大学2年の女子だ。」
その声にまた有美香、
「うそ。」
そして悲しい顔をして、
「あららららら~~。余計…、悲しくなる~~。」
「目下、その子、別人格になってる。」
いきなり有美香、思いっ切り口を尖らせて、目を真ん丸に…。

LIBRA~リブラ~ vol,111. 幸乃、通話履歴の1ヵ所に指をトン。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
