藪岡、グラスの中の物を飲みながら…。 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

ドキドキ 再び陽織、動き始める。

藪岡、グラスの中の物を飲みながら、
「うん。中々いい子じゃない。ルシアの言う通り、手際良さそうだし…。」

ルシアも、
「ふふん。」

陽織、テーブルの空いた皿をトレイに。そしてカウンターの中で…。

「客への言葉遣いもいい。うん。はは。…こりゃ、客も嬉しいわ。」

ルシア、
「…でしょう~~。」

藪岡、
「但し…だ。」
右手でグラスを持ったままで…。そして肇の隣で洗い物をしている陽織を見て、
「記憶がない…。分からない。…たったの3時間。…ふ~~ん。」

亮輔、
「藪さん…???」

「…ん…???…あ~~。…なんとも…。いただけないね~~。」

その声に亮輔、
「えっ…???」

藪岡、亮輔を見て、
「ん~~???…ふふ。…尋常じゃ…、ない。」

「尋常じゃない…。」
「…要するに…。…普通じゃない。…って事。」

亮輔、
「あん。なるほど…。」
けれども、すぐに、
「えっ…???…って…、どういう事…???」

「はは。」
藪岡、
「そんなの…、俺にも分からないさ。ただ…。ひとつだけ。…追及していくのみ。」
そして藪岡、洗い物をしている陽織に、
「ねね、陽織ちゃん。」

陽織、
「あ、はい。」

「陽織ちゃん。家族は…???家には誰が…。」
「おばあちゃんです。」

その声に藪岡、
「おばあちゃん。」

「あ、はい。」

藪岡、少し口を尖らせて、
「おばあちゃん…だけ…???」

陽織、
「あ、はい。」

陽織、少し聞いた言葉に顔を傾げて、藪岡に、
「あ、あの…。何か…???」

慌てて藪岡、
「あ、いいや。ふん。おばあちゃんか…。」

亮輔は藪岡を黙って見ている。
阿須賀はそんな亮輔を、少しだけ眠そうな感じで、チロリと顔を外して小さな欠伸。

藪岡、陽織に、
「じゃあさ、陽織ちゃん、おばあちゃん以外に、ご両親は…???」

その、「ご両親は…???」の声に陽織、思わず手が止まって…。

そんな陽織を見て肇、
「……。」

ルシアも藪岡も。

そして亮輔も…、
「…ん…???」

藪岡、手の止まった陽織に、
「陽織ちゃん…。」

陽織、小さな声でボソッと。
「分かんない。」
そして、もう一度、
「分からないんです。」

肇もルシアも藪岡も亮輔も、
「分からない。」

阿須賀は僅かに顔を傾げて…、そして、
「ねぇ~~。亮輔~~。」

藪岡、
「分からない。…分からないって…。…どういう事かな…???」

陽織、藪岡に、
「私…。ず~~っと、長い間、眠っていたような…。…で…、目が覚めたら、病院にいたんです。」

一同、
「病院…。」
そして、それぞれ顔を見合わせながら…。
「そして…。…変な話なんですけど…。あの時…。…病院で見た景色が、その…、長い間、眠っていた…。それからの…、初めての景色…。」

また一同、
「初めての景色…。」
そして顔を見合わせて…。

その時、
「キャッハハハハ。バカじゃないの、あんた、大学生なのに、病院で目が覚めて。そして、その時見た景色が、今まで見た中で、初めての景色なんて…。」
そして少しだけ、陽織をバカにした顔で、
「ふん。有り得ないでしょ。」

その声に亮輔、阿須賀に、
「おぃ。」
少しだけキツイ顔をして…。

すると阿須賀、亮輔に、
「何よ。もぅ~~。さっきから~~。陽織だか何だか知らないけど~~。この女の子の事ばっかり~~。」

亮輔、
「は・あ…???…何怒ってんだよ~~。」

「怒りたくもなります~~。折角、楽しい夜になる予定だったのにぃ~~。ふん。私、帰る。」
グラスをカウンターに叩きつけるように。
「ごちそう様~~。」
勢いよく椅子から離れて、ツンとした顔をして玄関の方に。

そして、勢いよくドアを開けて、バタン。

亮輔、クシャリとした顔で、
「…ったくよぅ~~。な~~に怒ってんだか~~。」

そんな亮輔に藪岡、慰めるような顔で…、
「大変だな。」

肇もルシアも同様の顏で…。

亮輔、口を一文字に。目を見開いて、
「ふ~~~ん~~。」

藪岡、そんな亮輔に、
「いいのか…???…追いかけないで…。」


数秒後…、亮輔、顔を小刻みに揺らしながら、
「はいはい。…ったく~~。…しょうがねぇなぁ~~。」
徐に椅子から立ち上がり…。

ルシア、亮輔に、
「行ってらっしゃい。」

肇、ルシアを見て、幾分、困ったような顔をして…。

藪岡、
「さてと…。陽織ちゃん。」

陽織、
「はい。」

「長い間…、眠っていたような…って、言ったよね。」
「あ、はい。」

「そして…。病院で見た景色が…。今まで…、初めて見た景色…。」

その声に陽織、
「あ…、はい。」

肇、陽織を見て藪岡を…。

ルシアも、
「藪さん…。」

藪岡、
「…で…、陽織ちゃんのご両親は、君自身、分からない。」

「あ、あ~~。はい。…で、でも…。」

藪岡、僅かに顔を傾げて、
「うん。…でも…。」

「小さい…。時の…記憶は…、僅かに…。あるんです。」
「小さいときの…、記憶…。」








LIBRA~リブラ~   vol,031.   藪岡、グラスの中の物を飲みながら…。

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