机の上の電話が鳴る。
一ノ瀬和歌葉(いちのせわかば)、
「ふん。内線…。」
受話器を取って、
「はい、セールスプロモーション、一ノ瀬~~。」
電話の向こう、
「あっ、和歌葉~~。」
和歌葉、
「はい、文歌(ふみか)~~。どしたの…???」
「ちょいとやば~~い。」
「ふん…???」
「ひとり…欠員~~。」
「はっ…???」
「花音(かのん)胃腸炎で欠席~~。ひとり足んなくなっちゃった~~。」
和歌葉、
「げっ。」
文歌とは、経理部の社員である。
錦野文歌(にしきのふみか)、和歌葉と同期で、ただ今恋人募集中~~。
そして花音(かのん)というのは、エクレールの研究室のスタッフ。
電話の向こうで文歌、
「ねね、そっちで誰か…花音の代わり…いない…???」
そんな声に和歌葉、
「誰か…って…。」
周りを見ながら、
「誰よ…???」
文歌…、
「こっちは…。」
周りを見ながら…、
「ははは。私以外は…、み~~んな…既婚者…。無理、無理、無理無理無理っ。」
和歌葉もその声に、
「んもぅ~~。こっちだって…。私以外は~~。千晶…。茉祐子…。巴…。…あっ、いるじゃん。…つぅか~~。…参ったなこりゃ。」
文歌、小さな声でもしっかりと、
「ねぇ~~~。」
和歌葉、
「んもぅ~~~。声、掛けてはみるけど…。ん~~。自信…ないなぁ~~。」
「お願いっ。」
またまた文歌、小さな声でもしっかりと…。
和歌葉、
「ん~~。分かった、分かった、後で、電話する。」
「サンキュ~~。」
そのまま通話が切れる。
和歌葉、オデコに右手を…、
「…ったく~~。」
そしてそのまま頭を掻きながら…。また辺りを見回して…。
すると、チーフの凛花が席を外して…。
その隣は…、流川朱莉(るかわあかり)、凛花の右腕的存在のスタッフ…。
だが…、席にはいない。部署にいるのは男子2名と茉祐子、千晶。
和歌葉、茉祐子と千晶のところに。
「ねね、ふたりとも…。明後日って…何か…予定…、入ってる…???」
茉祐子、右上の和歌葉に顔を上げて…。
そして千晶は左上に顔を…。ふたり同時に、
「明後日…???」
千晶、
「あ~~。わた…し…は、ダメ。お姉ちゃんの誕生日。一緒に夕食って、約束。もう…お店…予約してあるから…。」
和歌葉、
「あっちゃ~~。…んじゃ…、茉祐子は…、茉祐子…???」
茉祐子、
「わた…は…???…」
そして…、
「ふん…。別に…、何も…今のところ…。」
すぐさま和歌葉、
「ラッキー。」
千晶も茉祐子も、そんな和歌葉を見て、
「は…あ…???」
和歌葉、咄嗟に茉祐子に両手を合わせて、
「茉祐子、お願い。」
「なになに…???」
そして和歌葉、茉祐子の右耳に…。
途端に茉祐子、
「えっ!!!合コンっ!!!」
和歌葉、
「バカッ。声おっきぃ。」
その声に、わずかに反応したのが、勇吾と海崎瑛輔(かいざきえいすけ)。
他の女性スタッフは電話中。
またまた両手を合わせて、
「この通り、お願い。私を助けると思って…。今、言った通り、欠員…出ちゃって…。」
茉祐子、すぐさま、
「いやいやいやいや。いや…。あの…、和歌葉~~。合コンって…。」
和歌葉、
「お願い。」
千晶、
「あっちゃ~~~。」
和歌葉、またまた茉祐子に、
「この通り…。」
両手を合わせて…。
顔をクシャリと茉祐子、
「和歌葉~~。私…、まだ…、そんな…。」
千晶、顔を縦に伸ばしたように、
「これは、これは…、こまりましたね~~。」
茉祐子、
「全……然っ、その気…ないんですけど…。」
和歌葉、目をパチクリと…、そしてなんとも笑顔を絶やさずに…、
お願いします感覚で、
「そこをなんとか…。ねね、茉祐子~~。」
茉祐子、ガックリと顔を項垂れるように…。そしてため息を突いて、
「はぁ~~。なんで…私が…合コン…。」
和歌葉、瞬間、
「あっ、ありがと、茉祐子~~。うんうんうん。恩に着る~~。」
千晶、
「はいはい。私は~~、チョイト…トイレ~~。」
席を外す。
そしてその千晶の椅子に和歌葉が座り、茉祐子に、
「あのね。」
自分のスマホから…。
そんなふたりをチラチラと気にしているふたりの視線。
勇吾、
「ふん。」
「合コンか~~。茉祐子さん…。」
瑛輔。

薫子と茉祐子~その愛~ vol.9. 「ひとり…欠員~~。」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
