「インスタンベルの方も…。」
翔。
奈都美、
「うん。お陰様で…。なんとか…。」
「良かったな。」
「うん。」
けれども、そこから会話が続かない。
ふたり、共に店の中を眺めながら…。お互いをチラチラと…。
翔、奈都美、同時に、
「あの…さ。」
「ねぇ…。」
翔、
「なんか…、飲むか…???」
「うん。」
翔、手を挙げて…。ウェイトレス、
「お決まりでしょうか…。」
翔、
「俺は…、生。」
そして奈都美を見て…。
「私は…レモンサワー。」
「畏まりました。」
席を外れるウェイトレス。
翔、少し体を動かして、
「この前は…。ごめんな…。」
奈都美、
「うん…???何…???」
「尾田ちゃんから聞いたけど…。」
奈都美に指をチョンと、
「インスタンベルの帰り…。その…。なんだ…。」
奈都美、口を尖らせながら、メニューを見て、
「……。」
翔、
「その…、なんだ…。…断り切れなくって…さ…。」
その声に奈都美、
「はっ…???」
「…って…言うか…。」
奈都美、
「…なんの話…???」
「なんの…話って…。その…。彼女が…。」
「彼女…???」
翔、
「あ…、いや…。」
奈都美、
「私以外に、彼女って…、いるの…???…翔…???」
「あ…。いや…。ごめん。」
そして、一息、
「ふ~~~。」
奈都美、
「翔…???」
ウェイトレスが生とサワーをトレイに…。
「お待たせしました。」
そして翔、グラスを持って、
「とりあえず…。」
けれど奈都美はグラスを持たない。
翔、仕方なくグラスを奈都美にクィっとかざして、一口。
「これから…、また…、忙しくなるな…。」
奈都美、
「はい…???」
「いや…。だから…。これから…インスタンベルや、アレフーズ。今までにない…仕事量に…なるような…。」
奈都美、
「うん。」
ここでようやくサワーを一口。
「このまま…、忙しくなって…、変わらなく…なるのか…。」
奈都美、その声に、
「…どういう…意味…???」
「なんか…さ…。…ナツが…、遠くなって…きてんだよ。…俺…。」
その翔の声に奈都美、ドキン。
「尾田ちゃんとナツ…。仕事…見ていれば、見ているだけ…。中に入っていけなくなって…。さ…。」
奈都美、翔のグラスを見ながら、目を見開いて…。
「こんな事…、言うのも…変なんだけど…。ナツが…尾田ちゃんと一緒に仕事していて…。悪い方向に行けば…。まぁ…、こんな風には…。いや…、変な事、言う…。っていうのは…分かってる。…けど…、仮に、何か問題あってもさ…、ナツと尾田ちゃん、必ず、いい方に向いて…。」
奈都美、鼓動が少しずつ高鳴る。
「ナツが、前に、尾田ちゃんと一緒の事。うざがっているの…、話してくれた時には、俺も…ナツを…。…今は…。」
奈都美、口を真一文字にして、
「…今は…、なによ…。」
翔、
「ナツ…。」
奈都美、
「うん…???」
「俺…、ナツに…、何か…悪いこと…、してんのかな…???」
その声に奈都美、少し、目頭が熱くなって…。けれども、なんとか堪えるように…。
けれども、何かしら、体を縮こまらせて、
「…な…、何も…、悪い事…、してないよ…。」
そして顔を起こして、少し首を振り、鼻を啜って。
翔、
「ナツ…。」
奈都美、目をパチクリ。すると僅かに涙が目尻を…。
「ふぅ~~。」
左手中指を左目尻に。そしてそのまま右目元、そして親指を…。
「ナツ…。このまま、今の…状態は…、変わんないと…思う。」
奈都美、なんとも焦点が合わなく…。
「俺は…、今でも…、ナツ…、好きだよ。…けど…。」
奈都美、黙ったままで…。
「優里亜。」
ここで初めて優里亜という名前を、翔。
「…ごめん。名前出して…。…けど…、あいつも…、何も、悪いこと…してないんだ。」
奈都美、口のものを飲み込んだ感じで…。
「ナツ…。これからの事…考えると…。俺…。…あいつの事…、断れない。」
奈都美、自然に頭の中に浮かんでくる伸永の顔…。
翔の顔をしっかりと見れなくなって。涙も出てきそうに…。
いきなり慌てて、体を動かし、顔を左手で撫でるように、
「か…かける…。ごめん。私…、帰るね…。」
翔、
「ナ…、ナツ…。」

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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。