「さてと。」
奈都美、
「そろそろ帰るわ。翔も…疲れるし…。」
翔、
「わざわざ、ありがとな。」
「また来るわ。」
「あぁ。まっ、俺も、明後日辺りには、もう…、殆ど、この仰々しいのには、おさらばするけど…。」
「うん。でも…、大事にしてよ~~。」
「わ~~かってる。」
そして奈都美は立ち上がり、玄関の方に。
そんな奈都美の後ろを翔。
奈都美、靴を履いて、そして後ろを振り向いて、翔の身体に抱き付く。
「じゃね。」
そして翔の唇にチュ。
「おやすみ。」
奈都美、ドアを開けてニッコリと。
「ふふん。」
右手を振り、ドアを閉める。
そのまま立ち尽くす翔。右手を右頬に、
「ふ~~。どうするよ。」
そして…。
仕上がったサンプル画数枚をインスタンベルに。
その数枚を見て萌咲と龍二、互いが気に入ってシェフに提出。
2日後には結果を連絡…と、言う事だった。
そしてその2日後、美緒を通して奈都美と伸永に届いた結果が…、「再提出」
奈都美、
「えっ…???なんで…???城嶋さんも、向島さんも褒めてくれたのに…。」
伸永も、腕組みをして…、
「ん~~。」
再提出の期限は5日後。
既に翔も現場復帰。
アレフーズも千尋から引き継ぎ、バトンタッチをしていた。
商品企画開発部の誰もが、
「どうして、これが…、再提出…???」
納得行かぬ間に伸永、そして奈都美、それぞれ、再度、条件の下で再考案。
最初のサンプル画とはまた別の角度からのイメージを数枚提出。
…ところがまたもや、シェフからの返答は、「再提出。」
これにはさすがに困り果てた萌咲、シェフのロナルドに、
「どうして、これじゃあだめなんですか…???」
と、詰め寄るが、ロナルドはこう呟く、
「あのふたりは…、分かっていると思いますよ。」
微笑みながら…。
「それじゃあだめだと言う事を…。私たちは、世界のお客様のために仕事をしている。つまりは、若い人もいれば、お年を召した方々もいる。当然、子供もいるんです。そういう方々のために、仕事をしているんです。それを…彼らも解っていると…思いますよ。」
始終、にこやかに…。
「モエ、もう一度、お願いしますねぇ。…けれども、チャンスは…あと、一度キリです。…それでも、もし…、ダメだったら…、その時は…。あきらめてください。」
その話に萌咲、
「そ…、そんな~~。」
シェフから言われた事を龍二に伝え、そして美緒に…。
伸永と奈都美はその話に頭を抱えてしまっていた。
再々提出に与えられた期限は同じく5日。
けれども全く新しいイメージが湧いてこない。
奈都美、
「一体、どうすりゃいいのよ。…ったく~~。」
それ以上に伸永の神経が土壇場まで来ていた。
今までの、どの仕事以上のプレッシャーだったのだ。
頭の中で、
「…世界レベル…???」
その言葉が螺旋を描くように回っていた。
瀧澤も腕組みをして、
「伸永…。ナッちゃん。」
それから3日間は夜遅くまでの作業が続く。
剛輔、
「え~~。あいつら…、まだ仕事やってんのか~~。」
翔、
「えぇ~~。俺も…手伝いたいんだけど…。今回ばかりは…。」
葉月も、
「うん。なんとも…、中に入ると…。それだけでも、進まなくなっちゃうような感じがして…。」
朋代、
「そんな…条件…厳しいの…???」
そんな朋代に葉月、コクリと…。
誰もいない商品企画開発部内、伸永と奈都美。
伸永、
「あと…、2日。」
奈都美、今まで仕上がったサンプル画。そしてまた新しいサンプル画を見ながらも、
「これでもだめ…。あ~~ん、もぅ。時間だけが過ぎていく。」
伸永、
「七瀬さん。そろそろ…帰った方が…。もぅ…10時…。」
「何言ってんのよ、帰れる訳ないでしょ。尾田君が必死になってんのに…。」
「それは…、そうですけど…。」
「なんとかなる。なんとかなるよ。今までだって、何とかなってきたんだもん。」
伸永、元気なく、
「えぇ…。」
けれども…。
時計の針は更に午前1時を…。
乱れた髪を掻きむしるように伸永…。
ふと向かい側を見ると奈都美が…。
伸永、
「七瀬さん…。」

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庄司紗千 海をこえて
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。