自分の体を抱きかかえられたまま翠。
巽、自然に左手を放して、今度は翠の背中に。
巽、
「あっ。ごめん…。」
翠、自分の左胸に男性の手を感じて、少し赤くなり、
「あ…、ううん…。でも…。」
ぶつかった人物は男性。いきなり巽、走り去る後ろ姿に、
「おい!!!何やってんだ。ぶつかっておいて。」
けれども、その声を無視して横断歩道をまっすぐ走っていく男性。
翠、
「何が…???どう…???」
巽、
「分かんない。…でも…、大丈夫…???」
「うん。ありがと。…巽君、いなかったら、私…。」
「えっ…???あ…。いや…。」
そして、ようやく抱きかかえている翠を、
「あっ。ごめん。」
ようやく離れる体。
翠、
「ごめん。私の方こそ。」
赤い顔のまま。
頭を掻きながら。
「と、とにかく…、行こうか、僕も…お腹空いた。」
巽。
翠、頭をコクリと。
そして、
「うんうん。なんか…素敵な感じのお店。」
翠。
「…の…、ようですね~~。」
巽。
「まさか…。」
「いえいえ。僕だって…初めてですよ。」
「だ~~よね~~。さっきも…その様子…。ふふ。」
店内を見廻しながら巽。
いきなり、
「ぷっ。」
翠、
「ふん…???」
「あっ、いや…。」
「ゆず…、仕事…頑張ってるよ。今回、ジェシカで新しい商品…出すんだけど…。」
「うん。」
そこにウェイトレス。
「いらっしゃいませ。」
「逢坂…さん……???」
翠、
「あっ、私…ビール。それから…。」
「…と、はい、メニュー。」
テーブルの端からメニューを取り出して巽。
「ありがと…。」
一度、メニューを見廻して…。
巽、
「取り合えず、ビール2つ。」
ウェイトレス、
「畏まりました。」
「何に…する…か…???」
翠。
何にするか、まだ決まらない翠に、
「ドリア…、なんていいかも。」
巽。
翠、
「ドリア…???」
「うん。ここ…、洋食屋さん。ちょっと…いい…???」
そんな巽に翠、
「ふん。どうぞ。」
にっこりと。
メニューを見ながら巽、
「ん~~。これなんか…食べてみる…???」
翠にメニューを返しながら、指差して、
「グリルチキンのピリ辛トマトソースドリア。」
翠、
「グリルチキンのピリ辛トマトソースドリア…???…あぁ~~。うんうん。いいかも…。これ…。うん。」
巽、
「じゃ。」
頭を上げてカウンターを。
ウェイトレスが気づき、近寄ってくる。
「グリルチキンのピリ辛トマトソースドリア…2つ。」
ウェイトレス、
「ありがとうございます。畏まりました。」
離れるウェイター。
翠、
「さすが、遊馬君。」
そして、
「…で…???さっきの…???」
巽、
「へっ…???」
「なにか…おかしい事…???」
「あ~~。いや…。ゆずと…初めて出会った事…思い出したんだ。」
翠、グラスの水を、
「うん。」
「東大の入試、受験日ね。」
「うん。」
「時間ギリギリで通りを駆けてたんだって。その時、風がゆずの顔を直撃して。その時、目の中にゴミみたいなのが入って、その瞬間、すれ違う人とぶつかって、肩に掛けていたバッグが肩から外れて地面に落ちた。その時、バッグの中のものまで地面に。」
「あらら。」
「男性からは気を付けろって。」
「ひど~~い。ゆずが悪んじゃないのに。」
翠。
巽、笑顔で、
「ねぇ~~。」
巽もグラスの水を。
「そして…、ここからが…。」
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庄司紗千 海をこえて
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
