薫朗、出掛け先から電話で、
「ロンドの寺崎企画開発室長からメールが行ったと思うけど、みど…。」
スマホを耳に翠、
「ふ~~ん。何とも、良くぞ、こんなの…製品化するなんて、出来たもん。かかか。もう…てんやわんやだわ。かなりのリサーチになるよ、これ…。」
「うん。多分、そうなるだろう…。」
「はい…???どういう事…???ユッキ。」
「実は、あの商品。今まで何度か、他所の会社にオーダーして、出来ないって、断られた案件なんだと。」
その声に翠、
「はい…???」
「素材から仕様まで…。しかも、工賃ですら、ウチでは無理です。って、断られたらしい。」
「そ…。そんな…。」
「けれど。この商品。」
翠、薫朗の話しを聞いて、
「うん。これだけのヤツ。確実に。」
ふたり同時に、
「売れる!!!」
「もう~~。全く、とんでもないの、引き受けてくれたもんだわ、ボスも~~。」
「あぁ~~。でも…この仕事、ヒットしたら…。」
「ロンドにも、名が売れる。……ったく~~。やるっきゃ、ないか~~。」
「た~のむぜ~~。チーフ殿~~。」
翠、
「ふん。」
薫朗、
「あ~~っと。新人さんの…歓迎会って…???」
「うん。今度の金曜。」
そして、クスリと笑って、
「何、新人さんなんて、中学の同級生、もしかして…、名前呼ぶの…恥ずかしいとか…。」
「かかかか。正直言って、それは…あるよな~~。」
「レストラン、ルッポラ。」
「おぅ。じゃな。」
そして電話を切って翠、
「ふぅ~~。~~ったく~~。」
椅子をスライドさせて万美、
「ん~~???ユッキ…???」
「ふん。…この商品。あっちこっちの工場で、嫌われてるみたい。」
「で~~。ウチに回って来たってね~~。」
「まっ。そういう事~~。」
「チーフ、この仕様、何とか工場さん、OKのようです。…姫宮…さん…とか…。」
いきなり橙。
「うそ。今まで、こんな仕様、姫宮さん…。やった事…???」
「それなんですけど…。今日中には、サンプル、送れるそうです。」
「えぇぇぇぇぇ…。この仕様…。姫宮さんの…誰…???」
既に、ロンドの受注に、幾つかの工場にアプローチは掛けていた。
そのアプローチにラブコールをしたのが千葉に工場を持つ、「姫宮ソーイング」である。
小規模な工場ではあるが、株式会社アンジェリーナよりも、その歴史は長い。
しかも、その、「姫宮ソーイング」の社長が、院瀬見惇哉と大学の同期なのである。
そして、何より、ジェシカのスタッフとも、交流の深い会社でもある。
翠、いきなり電話をして、
「もしもし、ジェシカの逢坂です。お世話様です。」
電話の相手、姫宮ソーイングのリサーチ・ルーム主任、駒田曜子(こまだようこ)。
「はい、みど~~。お疲れ~~。例のヤツ、OKよ。はははは。」
翠、
「曜子さ~~ん。ありがとう~~。えぇぇぇぇ…???…でも…、誰…???」
「ウチにいるでしょう~。古株のエンジニアが…。ただ、誰より、愛想は悪いけどね。」
翠、
「えっ、えぇぇぇぇぇ…???愛想が悪い、古株、エンジニア…???」
「ほらほら、髭面の…。」
その瞬間、翠、
「わっ!!!!」

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庄司紗千 海をこえて
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。