「ふぅ~~。スッキリ。…ん…???う~まそ。」
と、シャワーを浴びた後に、テーブルに着いて指を出した途端に、ペン。
「行儀悪い~~。もぅ~。」
健之の左手を叩く瑠唯子(るいこ)。
「痛って~~。」
そして小声で、
「いいじゃねぇかよ~~、ひとつくらい…。…ったく…。」
テーブルに皿を並べながら、
「どうなの、新しいトコ…???」
瑠唯子、健之の4歳上の姉である。現在矢萩家の一切を取り仕切っている。
健之、
「なん…とか…。やりたい仕事が今度のとこじゃ…、出来るって確率…大。ニシシシシ。」
「へぇ~~良かったじゃん。」
唇を尖らせて目を丸く、何度も頷く瑠唯子。
「んじゃ、今までの、や~~な顔は…、なくなるって事ね~~。」
「なんだよ、その…や~な顔ってのは~???」
「だってあんた、しょっちゅうじゃん。眉間に皺寄せたり、唇四角にしてみたり。あとは、不貞腐れて物に八つ当たりしたり…。」
「いや…、してねぇだろ…。」
「してるっつうの…。」
「してねぇ…。」
「はいはい、分かった、分かった。とにかく。ようやく。あんたも…一丁前の仕事が出来ると…。」
「うるせぇよ。…ん…、さすが姉貴。途端に俺の好きなヤツばっか。」
「まっ。父さんも一昨日から海外だし…。2ヶ月は帰ってこないしね~。」
矢萩瑠唯子、矢萩健之の姉であり、矢萩家の長女である。
そしてその父親が、大手ゼネコン清川(きよかわ)建設の常務執行役員、
矢萩武実(やはぎたけみ)である。
母親の矢萩笙子(やはぎしょうこ)は、
1年前から都内の医科大学付属病院に入院中である。病症は、肺結核。
母親の肺結核が発症後、わずか1週間で、
瑠唯子は今まで勤務していた化粧品会社を辞めている。
母親の看病と矢萩家を一切取り仕切る事に決めたのである。
確かに矢萩家の家長は父親の武実ではあるが、
実質、矢萩家の歴史を辿れば笙子が跡継ぎと言う事になる。
しかも、笙子も笙子なら、娘の瑠唯子にも、矢萩家の男子、
仕事は出来るが女性には頭が上がらない。
しかも瑠唯子は母親に似て、家事も全て熟す。
ニュージーランドのオークランド市の建設現場に向かう車の中で、
家族の画像を見る武実。
「瑠唯子。頼んだぞ~~。」

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