「あらら…、べっとりソフト…。」 と、陽子…。
「こまった~!」
と、楓。
「ははは…これまた、やられたか…。」
と、男性。
自分の左胸にべっとりと付いたソフトの汚れを見て、すかさず、
「政姉ぇ、何か…ない…???これ拭くの…???」
「ん~???あっ、それ…、ちょっと待ってて。」
自分の持っているバッグからテッシュペーパーとハンカチを取り出し、
「はい、これ…。」
「おっサンキュ。」
その状況を見ていた楓、何も出来ずに、とにかく頭を何度も下げるだけ。
傍にいた陽子も朱実も同様に、相手の男性と女性に頭を下げる。
「ははは…大丈夫だって…。君の方こそ…身体…大丈夫…完璧に転んじゃったけど…???」
気恥ずかしくも頭を掻きながらの男性。
「私は…はい…、ありがとうございます。…お蔭で…だい…じょう…ぶ…ですけど…。」
その時、ふと感じて、自分の持っているポーチから財布を出して、
「すみません、これ…、クリーニング代に…。何も出来なくって…。」
と、男性に千円札を差し出す。
けれども…、
「あははは…、いいよ、いいよ、気にしないで気にしないで…うん。」
と、言って、両手を振る。
「行くよ、大輔。」
と、その男性の姉のような女性の声。
「ん…、おう。…んじゃ。」
そのままその女性と共に歩き出す男性。その後ろから、
「あ…あのぉ…。」
の、楓の言葉。けれども周りの声に掻き消されながら、その声も男性に届かず…。
「あの、本当にごめんなさい。」
男性の後ろに数歩駆け寄り、また深く頭を下げる楓。
そして…、
「ありがとうございました。」
※※※※※※※※※※※※※