その時、確かに紗友莉はワインのせいで多少酔いが回っていた。 運転席側の窓の空いているドア越しに、
「ご馳走様。」
と、言う言葉を口にした時に、不意に左手を乗せたのだった。
その瞬間、ジミーは紗友莉の顔にほくそ笑んで、
優しく紗友莉の左手をドア越しから外して手を引き、
必然的に前のめりになった紗友莉の顔、
その唇に自分の唇を重ねた。
紗友莉は一瞬「!!!」
けれども、数秒、ふたりの唇は重なっていた。
ようやく体勢を取り戻した紗友莉が、
右手をドアに押し当てて重ねていた唇を放す。
その後にすぐさま前、後ろを見回したが…自分たちを見ている人はいなかった。
辺りは数人が駅に向かって、そして駅から歩を進める人のみだった。
左手を自分の唇に当て、一瞬ジミーに対して恐い表情をしながらも…、
その数秒後には、ジミーに、
「…もう…。」
その紗友莉の声を聞いた途端に、もう一度ほくそ笑んで、
「また電話するよ。」
そう言いながら、その場から車をゆっくりと走らせた。
そんなジミーの車の後ろを見ながら、
バッグを持つ両手を伸ばして身体を少し前屈みにして、
右足を少し高く上げて歩き出す紗友莉。
駅の階段の前で立ち止まり、一言…。
「…やっちゃった…。」
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