と、思って栄二が基子を支えたのが、
両手が塞がっていた基子の胸だったのである。
基子の胸を支えたままで、体を起こし、
栄二の左手が今度は基子の背中を抱いた姿勢になったのだった。
驚いたのはどちらも同じではあったが、
その時のお互いの表情が、ついお互いのフィールドを外してしまったのだった。
数秒、お互いは唇を合わせていた。
しかも…お互いに拒絶する事なく。
そして、本能のまま栄二は、タンクトップの上から基子の、
綺麗で豊かな胸を愛撫したのだった。
その後、優しく栄二の手を自分の胸から外し、
そして栄二の唇から自分の唇を外し、
「…栄さん…。」
と、言いながら顔を横に振ったのだった。
缶ビールを飲み、幾らか酔いが回っているとは言え、
思い掛けない状況に栄二も我に返り、焦りを隠しながらも、
基子に頭を下げるばかりで、その場をやり過ごしてしまったのである。
基子は悪びれる訳でもなく、
逆に栄二に申し訳ないと感じた瞬間だったのだった。
その一回限りのエピソードは栄二と基子の、
頭の片隅に刻まれるものとなったのだった。
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