純一には分からなかったかも知れないが、 姉朋子にとっては、この死に際の父親の顔と手の、
わずかながらのぬくもりを感じられた事が、
何より救いだったとも言える。
それ以来、朋子はその父親の遺言のような、
手のぬくもりを胸に、純一と姉弟揃って、
子供ながらに何とか頑張ろうと考えるようになったのだった。
その甲斐あって、祖父もその朋子の姿を傍でみながらも、
それでも敢えて子供たちのやりたいようにさせてやるのだった。
しかも、朋子と純一の生活は、
傍から見れば他愛もない事かも知れないが、
驚くほどに姉と弟との喧嘩などは一切なく、
どんな事でも、お互いに相通じるような姉と弟なのだった。
そういう意味では朋子が父親から任せられた「純一の事…」が、
ある意味では「母さんが出来なかった事…」を…。
と言う意味も含まれ、それが敢えて、
「純ちゃんは母さんを知らない、生まれたばっかりだったから…。だから、私が母さんになるしかない…。」
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