私は正真正銘のペーパードライバーだ。
16年前に免許は取ったけれど、一度も一人で車を運転したことがない。
娘が生後4ヶ月のときに自動車学校に通いはじめ、免許を取るまでに7ヶ月かかった。
娘が産まれてからの私は、育児にヘトヘトの毎日だった。
赤ちゃんのお世話は、想像以上に大変だった。
ある日、娘に授乳をしていると、夫が私に言った。
「お前、いつまでのんびりしてるんだ? いつになったら車の免許を取るんだ?」
そう言われて私はショックだった。
慣れない子育てを必死にがんばっていたのに、夫には私がのんびりしているようにしか見えていなかったのだ。
こんな大変なときに車の免許を取りに行けなんて、無茶苦茶なことを言うなとも思った。
その気持ちを伝えたけれど、言葉が足りなかったのか夫には理解してもらえなかった。
悔しい気持ちでいっぱいだった。
私は夫とケンカをした勢いで、教習所の入校手続きに行った。
もともと反射神経も運動神経も鈍いうえに、授乳の合間に娘を母に預けての教習所通い。
私が自動車学校を卒業するころには、娘も生後11ヶ月になっていた。
なんとか免許は取得したものの、嬉しさよりも「こんな私が車を運転していいのか」という不安のほうが大きかった。
そして、私はかたくなに車を運転しなかった。
自分が運転したら、ぜったいに事故を起こす。
こわい。。
夫に言われたときだけ渋々ハンドルを握り、助手席で見守ってもらいながら、同じ町内を運転する程度だった。
結局、私の運転免許証は身分証明書になってしまった。
運転することを完全に諦めてから長い月日が経つ。
よほどのことがない限り、私は一生運転しないままだろう。
それでいいと思っている。
でも、この車社会で生きていると、ペーパードライバーであることに劣等感を感じることが多い。
多くの人が普通にできることが自分にはできない。
免許を取る前は周りから
「免許ぐらい取っておかないと」
「早く免許取らないとねぇ」
と言われ続けていたせいか、車を運転できないこと=劣っていることのように感じてしまう。
自分で運転しないことを選んでいるのだから、それも仕方ないのだけど、多くの人が普通に車に乗って、普通に運転できていることが、私には不思議でたまらない。
他のペーパードライバーの方も私と同じような気持ちなのかな。