仕事をすることが、たまらなくつらい時期があつた。

そのころ私は毎日自分に、
「辞めてはいけない」
「逃げてはいけない」
と言い聞かせていた。

派遣社員として、契約満了前に辞めてはいけない。

途中で辞める = 契約違反なんてぜったいにしてはいけないことだ。

仕事を変わったばかりで、新しい業務もたくさん覚えなきゃいけないのだから、ここで逃げるなんて卑怯だ。

教えてくれる人の時間と労力を無駄にしたら申し訳ない。

そう言い聞かせながら、逃げたい気持ちに負けそうな自分を必死に奮い立たせようとしていた。

でも…
がんばっても業務は、分からないことだらけだった。

仕事中悩んでばかりで、なかなか先に進まなかった。

恥ずかしくて、聞きたいことも人に聞けず。

逃げたい、逃げたい、逃げたい…。

そんな気持ちばかりが大きくなっていた。

分からないことは、自分なりにネットで調べたり、本を買って調べたりもしたけれど、それでも解決しなかった。

自分は頭が悪いから、選んだ仕事が間違いだったのだと自分を責めた。

仕事から帰ると、洗面所の鏡の前で自分の頭をポカポカ叩いて、バカだ、バカだと自分を罵ったりしていた。

その気持ちは、誰にも相談できなかった。

ストレスでいっぱいいっぱいになっていたある日、仕事中急に吐き気に襲われた。

トイレで症状が治まるまで待って、自分のデスクに戻ると、ふたたび吐き気が襲ってきた。

それでも、仕事に戻らなければとパソコンに向かっていたら、今度はマウスを持つ手がカタカタと震え出した。

その日以来、仕事を早退したり、欠勤したりする日が増えて行った。

日ごとに症状は強くなり、めまいもするようになった。

喉が締め付けられる感じがして、職場の人の前で思うように声が出なくなり。

目の下もピクピク痙攣するようになった。

あとから分かったけれど、そのときの私は自律神経をやられていたようだ。

もう限界だと思いながら、辞めてはいけない、逃げてはいけないと自分に言い聞かせて仕事に行っていた。

結局、最後は身体が思うように動かなくなり、強制終了する形になった…

突然会社に行けなくなったので、退職の挨拶もできずに辞めてしまった。

派遣会社の営業さんに、勤務先まで私物を取りに行ってもらい、とても恥ずかしくて情けない思いをした。

そして、その後も私は、懲りずに同じような辞め方を、別の勤務先でも繰り返してしまった。

辞めたらすぐに、次こそはきっとうまく行くと自分を奮い立たせて、新しい仕事を探していた。

ほんとうは十分な休養を取って、心と身体が回復してから探した方が良かったのに。

そのときは、収入がなくなることや職歴にブランクの期間ができることへの不安が大きくて、焦ってしまった。

同じパターンを何度か繰り返した後でようやく、身体の回復を優先しながら、自分に合う環境を探すことが一番だと考え直した。

そして、今の職場に出会えてからは、私の身体の症状はピタリと治まった。

今なら、昔の職場で身体の症状をがまんしながら続けなくても、辞めてよかったし、逃げてよかったと思う。

それでも、自分を労ることの大切さに気づくために、あのときの経験は必要だったと思っている。