ドラマ 将軍 SHOGUN 切腹 戸田広松 | 東京・横浜物語

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ドラマ「SHOGUN 将軍」における切腹シーンの解釈について

 

ふとドラマ「SHOGUN 将軍」に登場する印象的な3つの切腹シーンにおいて、

1つは私達日本人にとっても、

いや、現代日本人だからこそ、

非常に理解し難い感覚があると思ったので書いてみたいと思います。

 

先ず、第1話の宇佐美藤(後に世界中の男が惚れてしまう名シーンを演じる女性)の夫が、

五大老の会議の席で主君の虎永が侮辱されたと激昂し、

刀を抜こうと、敷居を一歩越えてしまったシーン。

 

ここで大写しにされた踏み越えた足を見た、

歌舞伎や文楽、はたまた時代劇好きの人は、

「あ、確実に切腹するな」と思ったはずです。

 

入る事の許されない席で護衛として外で待たねばならない身なのに、

まさかの刀を抜こうとする軽率な行為。

 

人の好さと忠義心は日本人なら即座に理解する風貌。

 

だが当然、自分の切腹のみならず、

我が子の命まで奪われてしまう結末となる訳です。

 

これは理解し易かったと思います。

 

主君やお偉方の御前で何をするのか、と。

 

しかしイイヤツだろうな、とも。

 

続いて最後の第10話において、

虎永の家臣と言うか、一応忠誠を誓っているが、

実に食えない役柄の樫木薮重の切腹シーン。

 

これも非常に分かり易いと思います。

 

敵方の石堂和成と通じていたのが分かった以上、

当然切腹するのは理解出来ます。

 

さて問題は第8話において、

長年虎永に仕えている忠臣中の忠臣、

戸田広松の切腹シーンです。

 

これはかなり壮絶な場面であり鬼気迫る名演技でもあります。

 

一刻も早く戦争の準備をしなければ負けてしまう場面において、

主君の虎永は家臣達を前に戦わない、降伏すると頑なに主張します。

 

結果的に主君を諫めようとする広松に死ねとあっさり言う始末。

 

そうして広松は我が子の広勝に介錯を頼むと言う、

悲惨な事態となります。

 

虎永の前で、子の広勝は後を追うと言うも、

広松はならぬと断言し、

絶対に殿を見捨てるなとまで言い、

腹を切るのであります。

 

絶妙のタイミングで息子の広勝は父広松の首を刎ねます。

 

転がる広松の首。

 

まさに狂っているのですが。

 

何故なのでしょうか。

 

これを本当に虎永の臆病風と解釈するのもありかと思います。

 

虎永のモデルである家康には武田信玄の罠にはまり、

漏らしながら逃げた話も有名なくらいですし。

 

しかし史実では後に天下を獲るのも私達は知っているのですから、

ここは深読みをしたいところです。

 

この理由は第10話においてあっさりと虎永の口から説明され、

なるほどそうだったのか、となるのですが、

そもそも第8話の時点では、当然未来の話であるが故に、

史実を知っている私達日本人でも名演を前に理解出来ないのであります。

 

その理由は「戦争の事」だからです。

 

何をどう考えても一刻も早く戦争の準備をしないといけない時期に、

降伏する、の一点張りで、戦力になる忠臣中の忠臣かつ勇者まで切腹させてしまう事態。

 

ちなみに凶暴で食えない役の前述した樫木薮重と広松の相対する場面が出て来ます。

 

上下関係もありますが凶暴な樫木が震え上がり、

即座に広松のヤバい危険な部分を見抜く観察力も見事に描かれています。


歴戦の勇士とは如何なる存在なのか、を。

 

さて、このドラマでは至る所にスパイの存在が巧妙に描かれています。

 

宣教師もクリスチャンも、忠臣の中にもスパイが必ずいるように。

 

現代の平和日本に生きる私達はスパイを知りません。

 

そのため何となくそれっぽい感じの怪しい人を想像してしまいますが、

実は極めて巧妙に送り込まれています。

 

凄い良識人で優しい人だったりします。

 

さすがに今現在の日本ではようやく現政権下にいるなと感じている人は多いでしょうが、

相変らずおめでたい人も多いと感じています。

 

何故、広松に切腹させたのかと言うと、

スパイに本当に降伏すると思わせるためだったと考えた方がいいでしょう。

 

だからこそ息子には後追いはさせずに、

殿を守れと最後まで忠義の心を崩しません。

 

そしてその発言から自分の死に方を心得ていたと考える方が筋が通ります。

 

つまり広松ほどの歴戦の勇者であるならば、

戦争のやり方を知っています。

 

第10話で明かされる、直ぐに戦争体制を構築して、

大阪に攻めるなど愚の骨頂であり、

そんな事では絶対に勝てないと言う事。

 

それを虎永も広松も充分過ぎるほど分かっていた、と。

 

紛れ込んでいるスパイに本当に降伏するつもりなのを、

忠臣広松の自らの死によって確実なものと感じさせて報告させる意図があった、と。

 

この間に虎永は手を打って、

最も大切な落ち葉の方による亡き太閤の軍を動かさせないのを確約させるのであります。

 

それはもちろん密約として。

 

こうして関が原に集結した石堂の軍は錦の御旗を失い総崩れになって行く、と。

 

勝てるかどうか分からない戦争を前にするのは、

単に精強な軍隊だけでは勝てないのを知っている虎永に広松に。

 

敵に連合を組ませたら最後、

一気に劣勢になる、と。

 

だからこそスパイの暗躍が決定的に重要になる訳です。

 

かつてスイス国民に配布されていたスイス政府編纂の書籍「民間防衛」では、

敵国が平時から何を仕掛けて来るのか?について詳細に教えてくれています。

 

長い歴史の中で武装永世中立を貫くスイス。

 

生半可な方法では永世中立など維持出来る訳もなく。

 

そんな事まで思い出させてくれたドラマ「SHOGUN 将軍」でした。

 

終わり