6月も下旬に入った頃
梅雨入りしたとはいえ
しばらくいいお天気が続いていた。


私はいつものように
自宅の和室でミシン作業をしていた。


この時期は雨さえ降らなければ
窓を全開にできるから
とても気持ちが良い。


外の音、
主に鳥の声なんか聞いちゃいながら
気分良くミシンを進める。

悟空の特等席 お外見えて最高♪



ーーー鳥の声


この日はやけに鳥の声が近い。


和室からカーポートを覗くと
止まり木にちょうどいいくらいの太さの
鉄の棒に止まっている燕たちがいた。


4〜5羽いただろうか。
楽しくおしゃべりをしているようだった。


幼少期、犬を飼ってもらえなかった代わりに
鳥を飼うことを許された。


主にセキセインコを飼っていた。


指にインコが止まる感触を想い出す。
小さくて細い指でガッシリ私の指を掴む。
爪が軽く食い込んで少しの痛みがまた愛しかった。フンが頭に落ちるあの瞬間もまた忘れられない。熱いものがツーと伝うあの感触…







鳥の鳴き声っていいなぁ


なんて思って
数時間後カーポートに出ると
燕が巣を作っていた。


やったーーーー‼︎


何故やったーなのか?
よくわからない。
でもその瞬間、私は確かに喜びを感じていた。


それから2、3日の間に巣が完成し
ツガイと思われる燕が行き来していた。



和室にいると燕が行き来するのが見える。
私は毎日嬉しかった。


もう卵産んだかな?
もう孵った?
いやまだ子供は見えてないし声も聞こえない。
まだでしょ。


そんな会話が毎日、
家族の中で
何回も何回もやりとりされた。


家を建てて11年ほど。
初めての事に家族みんなが沸いた。


唯一、父が心配だった。
糞が汚いとか言って
巣を取ってしまわないか?


予想は外れた。
むしろ、
餌をやらなくていいのか?
なんて、燕の心配をしていた。



そんな、髙橋家の話題の中心、燕ちゃん。



多分、今、
卵を温めてる段階なのではないかと
予想した。



朝になるとカーポートを覗いて
まだ産まれてないなぁ。
いつかなぁ。
なんて。







数日が経ち
ある朝いつものようにカーポートを覗くと






巣が、無い…



「ひぃっっ」



と思わず悲鳴のような
変な声を上げてしまった。



目線を下にやると



巣 が

落 下

し て い た



動揺を隠せなかった。
家の中をウロウロした。



ちょうど夫が休みだったのが良かった。



2人で巣のそばに行って

恐る恐る確認すると

卵もヒナもいなかった。



まだ卵も産まれてなかった?
外敵に食べられた?



昨夜は大祓の日。
雨風が強かった。



ネットで
「燕の巣 落下」
と検索すると
対処法がたくさんでてきた。



それにならい夫が
巣を元の場所に設置し直してくれた。



そうしているとツガイの燕が
私たちの頭上に飛んできた。



良かった…親燕は無事だったのだ。
せめてもの救いだった。



何か言いたげに
ピーピー鳴いている。


「早く巣を治してよ」
か?
「そんなんじゃ住めないよ!」
か?


どっちなんだろう。




巣を補正して間もなく
私達は出かける時間がきてしまった。



ツガイの燕はずっと
止まり木にちょうどいいくらいの太さの
鉄の棒に
巣を観察するかのように止まっていた。



「これ、大丈夫?」
「どーする?」
「でもここ外敵来るし」



なんて会話でもしてたんだろうか。






帰宅後、巣を確認すると

ーーーーいない。

車を泊めて降りると



またツガイの燕が戻ってきた。

でも巣には入らない。



何かを訴えているかのようにも感じた。



むしろとってしまった方が
新しい巣を作れて良いのか?


いやでもネットで落下したら
こうしたらいいよって
書いてあるとーりにした。





 


燕さん、どーして欲しい?









次の日の朝

やはり巣に
燕たちはいなかった。

止まり木にちょうどいいくらいの太さの
鉄の棒にも止まってなかった。



補正した巣が気に入らなかったのか。

外敵に場所を知られたから
もうここは辞めたのか。



理由はわからないけど



とにかく燕はもういなくなった。











外で鳥の声がすると思わずのぞいてしまう。


でもあの燕たちはもういない。
 






こんなに静かだったっけ。







どこか違うところで

もっと環境の良いところで

丈夫な巣が作れていれば

いいのだけれど。