おはん @宇野千代 | 本と映画とetc 〜Atsuko's Happy Blog〜

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好きなこと、したいことがたくさんある中で、このブログでは読んだ本と観た映画に限定してレビューなどを書いていきます。本と映画のメモ。備忘録。

宇野千代さんの代表作

 おはん

新潮文庫 127頁  370円(税別)


を読みました。






先ずこの本を手に取って思ったのは、『薄い』ということ。


何故ならこの「おはん」は、宇野千代さんが10年という歳月をかけて執筆したという小説だからです。そして昭和文学の古典的名作とうたわれる著者の代表作✨ なので、どれだけ分厚い本なのかと思っていました。


おはんを執筆し始めたのが、戦後まもない昭和21年の11月頃。その年は宇野千代さんが49歳、北原武夫を社長、千代さんを副社長としてスタイル社を再興、「スタイル」を復刊させ、記録的な売上を見せました。



〜参考までにその10年間には〜

52歳で「宇野千代きもの研究所」を設立。

53歳で木挽町に家を新築。スタイル社の1階に「スタイルの店」を開店。

54歳、宮田文子とともにヨーロッパへ旅行。「毎日新聞に「巴里通信」を寄稿。林芙美子、継母リュウの死去。

55歳、スタイル社の脱税が明るみになり、苦境に陥る。

58歳、青山南町に転居。


という、常に目まぐるしく人生を走り続け、スタイル社の隆盛と破滅があり、生活も一変していた。


そして、60歳に『おはん』を敢行。第十回野間文芸賞を受賞。そのおはんを敢行した年には、シアトルの博覧会にきものを出品するため、アメリカに40日間の滞在。

61歳では、第九回女流文学賞を受賞。




さて、この『おはん』のあらすじは、

主人公 "おはん" は、夫の心がほかの女、芸妓 "おかよ" に移ったとき、子を身ごもったことを告げずに自分から実家に退くことを決意する。おはんとおかよ、二人の女に惹かれる浅ましくも哀しい優柔不断な男の懺悔の物語。


特異な語り口で描かれていて、最初は少し読みづらい気がしたのですが、読み進めるうちにこの小説の形態はこれがぴったり合っていて、味わいがあると思いました。宇野千代さんが「ちゃんと最初にプランを立て」て執筆にかかったという。それでなのでしょうか、この小説が10年の歳月とともに出来上がったという感じが全くせず、最初から最後まで一貫した自然な流れの文体で描かれています。


驚いたことに、この10年間に他に一冊も執筆せず、この作品で戦前の作家から戦後に返り咲いたにも関わらず、再び沈黙に入ったということ。それがかえって『おはん』を不屈の名作にさせたようです。



宇野千代さんが親交もあった心から尊敬していた小林秀雄さん(宇野千代さんより5歳年下)の、『おはん』の批評を記しておきます。褒められて本当に嬉しかったようです。


「近松でも読むような一種の味わいがあって面白かった。特に初めの方がよいと思った。作者は、時も場所も不問に附し、不思議な魅力を持った話術を創案して、言葉が言葉だけの力で生き長らえたいと言っている様な、一種の小説的幻想世界を発明している。事実に屈服した現代小説界では珍しい事である。」



『おはん』は映画化もされているようです。ぜひ近いうちに観てみたいです。