盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます。音量に注意してください。>
ある人が「五目焼きそば」を食べたいと言う。
そういえば、去年にある方のお祝いに何かご馳走しますと、
訊ねたら五目焼きそばが食べたいと返ってきた。
しかし、日程が上手く合わず、まだ約束を果たしていない。
私も好きだし、世の中には五目焼きそば好きが多いのかもしれない。
花巻市の大迫に出かけた。
盛岡からでもそう遠くない。
何人か盛岡に通勤している人を知っている。
花巻市といっても平成に入っての合併前は大迫町。
市街からは、だいぶ北東にある。
大迫の中心部には地域歴史博物館があり、
早池峰と賢治の展示もある。
大迫は、遠野街道沿いにあり、
盛岡城下と遠野、その先の沿岸を結ぶ街道の宿場町として栄えた。
また近くに金山があり、また葉タバコの産地としても知られ、
江戸では「南部花魁煙草」として人気だった。
400年を超える歴史のある町だ。
昔は豪商も多く、その名残が雛祭りだ。
町のあちこちで一斉に豪華な雛壇が飾られ、
多くの人が訪れる。
My One And Only Love · John Coltrane · Johnny Hartman
早池峰方面に続く道へ入ると川原町。
すぐ、あまり広くはないが川原町商店街駐車場がある。
そこに停めた。
一緒の人を案内して少し歩く。
見落としてしまいそうな川原町と刻まれた石柱がある。
ここから路地に入る。
隣を歩く人の横顔は、少し怪訝そう。
構わず歩く。
側溝は下水道を避けて曲がっているのだろうか。
よく分からない。
隣を歩く人は、
「何処に行くのだろう?」
「この先に店があるのだろうか?」
「あったとして美味しいのだろうか?」
表情には出さないが、
足どりからちょっとした不安が見え隠れ。
その人には黙って心の中で呟いた。
「大丈夫ですよ」
路地に入って左に折れ、狭い路を数軒分歩く。
目指す中華料理「秀華楼」が見えてくる。
店の前に若いサラリーマン2人組とお年寄りの夫婦が立っていたが、
3人が出てきてサラリーマン達が暖簾を潜った。
続いて2人出てきた。
奥さんに手を取られ、ゆっくり老夫婦が入った。
厨房の方のドアが開いていて、
忙しそうな店主が見えた。
2、3分して店主が出てきた。
「今日は、混んで混んで、もう終わります」
暖簾をしまう様だ。
「えっ!終わりですか?」
「あぁ、あんた方でね、入れるよ」
まだ1時前で、あまりに突然だったので驚き、
胸をなでおろした。
一緒の人も目を見開いていた。
確かに一つテーブル席が空いていた。
秀華楼は、テーブル席が2つに後はカウンターに座る。
店主も奥さんも天手古舞だ。
出前用のバイクもあり、
だいぶ前に訪れた時、運ぶ姿を見たことがある。
カウンターの3人が出て行った。
昔は紅い椅子とカウンターだったのだ。
淡いピンク色が歴史を物語っている。
今で言う典型的な「町中華」だ。
カウンターに座ったお年寄りは、
美味しそうにモヤシラーメンを食べていた。
玄関に3組ぐらいは来たと思う。
少し声がして去って行った。
運が良かったと二人で笑ったが、向かいはまだ硬い表情。
しばらくして登場。
大迫の路地裏、老舗町中華秀華楼の大人気メニュー「五目焼きそば」。
餃子も頼んだ。
五目焼きそばが食べたいと言った人がゆっくり箸を持った。
食べ始めるのを見ていた。
俯いて口に入れた瞬間、顔を上げ、
「美味しい~」
解き放たれ、安堵も入り混じった満面の笑み。
黙々と食べ始めた。
きっと虜になり、リピート間違いない。
野菜の旨味がたっぷりのあんで、丁度いい具合のとろみと甘さ加減。
もちっとした細麺にこのあんがよく絡む。
焦げた麺が、これまた美味しい!
こんがり狐色の餃子は皮に包まれたあんもたっぷり入っている。
焼きそばと交互に食べる。
幸せ気分になってくる。
会計をすると、
「お待たせしてすいませんでした」
「いえいえ久し振りに食べに来てよかった」
とやり取りしていると、
一緒の人が言った。
「ほんとに美味しかったです!」
秀華楼を後にすると、
老夫婦が仲良く歩いて行く姿が見えた。
この路地にある鮨屋も人気らしい。
しかし、通りから入るこの狭い路に名店があるとは、
思えないだろう。
ふと足元を見ると、道端にバッケ(ふきのとう)が咲いていた。
駐車場に向かう一緒の人は先頭を歩き足取りも軽やかだった。
花巻市大迫町
「秀華楼」

















