盛岡食いしん爺日記

<音楽が流れます。音量に注意してください。>

 

 

花巻まで出かけ用事が済んで東和町の「東和温泉」へ。

泉質を単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)。

と書いてあるが、よく分からない。

湯量が多く肌に優しい感じの温泉。

陽が沈む頃に着いた。

 

 

近くの人が多い様で賑わっていた。

それでも広い湯船でゆっくり。

 

さて、花巻の街に戻り、夕飯を食べて盛岡に帰ろう。

嘉司屋さんへ。

 

 

 

 

 

 

Barbara Carroll Trio - I Can't Get Started

 

 

 

 

久し振りに暖簾を潜った。

 

 

中はテーブル席、小上がりとカウンター。

 

 

 

 

前に来たのは?

昨年は来ていない、一昨年は来たかどうか。

落ち着く佇まい。

 

 

花巻が生んだ童話作家宮沢賢治が、

もう一つの老舗「やぶ屋」で、天ぷらそばと三ツ矢サイダー。

ここでは、かしわ南蛮とサイダーを好んで食べそうだ。

最近では、どちらの店でも賢治セットとしてメニューにある。

3年ぐらい前だろうか、やぶやで食べたが、

どうもそばとサイダーは・・・

ただ、賢治さんの心に少し触れた気がした。

 

創業明治37年わんこそばで知られる花巻の老舗「嘉司屋」の天ざる。

久し振りだ。

 

 

 

 

揚げたてでサクサク!

海老のしっぽも食べた。

 

 

何種かのそば粉をブレンドし、毎朝打つ二八そば。

コシがあり、喉越しがいい。

そばの風味もよく独自の味。

そうそう、このそば、美味しい!

 

嘉司屋は、高校時代には別の場所にあった。

今はないがバスセンターの近くだった。

あの頃、夏休みに友達と2人で建設会社でアルバイトをした。

生まれて初めてのバイト。

プレハブ小屋で中華鍋を使い試験用のアスファルトを練った様な朧げな記憶。

舗装の工事の後に丸く繰り抜いたコアの厚みや密度などを計測した。

計算機という機器があり、使い方を教わった。

1週間ぐらいで結構なお金になり、ビニールの安いテントを買った。

友達とキャンプに行くために稼いだのだ。

早速、翌日に花巻駅から花巻電鉄の鉛温泉方面の電車に乗った。

1972年に廃線になったが、とても幅の狭い電車で、

座ると向かいの人の膝と擦れ合う様な感じだった。

高倉温泉に向かった。

2人とも学生服にボロボロの帽子を被り下駄を履いていた。

今思えば、まるで大正時代の様だ。

高倉温泉に青少年が安い料金で安全に旅が出来る様にと、

全国に各地に建てられていたユースホステルがあった。

ユースホステルと聞くと、昭和の匂いがする。

何故、高倉温泉だったのかは全く覚えていない。

ただ、ユースホステルの傍に小さな川があり、意外に河原が広かった。

その場所に薄っぺらのビニール製のテントをたてた。

色だけは綺麗な緑。

直ぐに暗くなった。

テントに入り駅の売店で買ったパンを食べ、コーラを飲んでいた。

近くでキャンプファイヤーが始まり、歌声が声が聞こえてきた。

ユースホステルに泊まっている人達だ。

少しして数人が、近寄ってきた。

「こんなところにテントがあるよ」

友達が威嚇を込めて外に出て背伸びをしてみせた。

学生服と下駄を見ると、ひそひそ声になり、戻って行った。

 

 

 

 

 

やはり嘉司屋のそばは美味しい。

あっという間に天ざるを完食したが、もっと食べたい。

長いつきあいの仲間の声が下りてきた。

「迷ったら、やってみる。これが大事で悔いを残すな」

店の方に言った。

「ざる一枚、お願いします!」

微笑ながら「かしこまりました」。

 

 

頼んでよかった。

心置きなく嘉司屋のそばを味わった。

 

 

 

 

 

 

鰹節の香るそば湯を飲みつつ思い出に耽る。

 

あのキャンプの晩。

雨が降り、夜中に起きてテントの周りに溝を掘った。

そうしないと水が入って来ることを知った。

石の上に毛布一枚では背中が痛く、なかなか眠れない。

うとうとしていると、突然、静寂を破って友達の悲鳴に似た声。

「なんかいるぞ!」

恐る恐る懐中電灯で照らす。

「あっ!」

テントの端に20センチほどの笹竹の枝があり、

てっぺんに蝉が抜け殻から抜け出している。

もう雨は止んでいた。

しばらくすると、辺りが明るくなり出した。

テントを張っていた時、少し破いてしまい、

開いていた幅数センチほどの切れ目から蝉に陽射しが当たる。

透きとおった体とぐにゃぐにゃした羽。

しだいに頭は黒くなり、体は見る見るうちに茶色に。

羽は網目の様な筋がはっきりしてきた。

アブラゼミは、乾いた羽を震わせて上手いこと隙間から飛んで行った。

笑いながらコーラで乾杯した。

夜が明けたのでもう帰ろうと、外に出て驚いた。

昨夜の雨でテントの傍まで川が迫っていた。

慌ててテントを畳んだ。

結局、午後遅く出て朝一番の電車で花巻駅に帰って来た。

あの頃、駅の2階に食堂があり開店するのを待って入った。

食べたのは大盛りのカレーライス。

 

 

 

蕎麦猪口を片手にひとり思い出しては苦笑い。

あの緑のテントのその後の記憶はない。

思春期を過ごした花巻。

すっかり変わってしまったが、

想い出はあちこちに転がっている。

 

 

 

 

 

 

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