盛岡食いしん爺日記
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西和賀の寒ざらしそばを食べそこねたが、
秋田県の横手市で遅いランチ。
「名代三角そばや」で十文字中華そば。
足を延ばしてよかった。
いつもなら満足の後は帰途に着くが、アドレナリンは湧き続けていた。
「久し振りに来たんだ、横手の街を周ってみよう」
旅立つ前の白鳥とかんすいを使わない美味しい中華そばが、
心を軽くし、ぐいぐいと背中を押す。
十数年前は横手方面にも時々来ていた。
城のある丘にも上った。
湯沢市の三関でサクランボ狩り、
佐藤養助本店で稲庭うどん。
その向かいの正心庵で絶品の天ぷら。
蔵の町で知られる増田町へも。
帰りに横手の街を走ったが、近頃は通過するだけだった。
横手市役所の辺りを走ると、蔦の絡まる建物。
ひょっとしたら蔵の喫茶店かな。
しかし、店の前の駐車場はせいぜい2台。
空いていない。
Bossa Baroque · Dave Grusin · Rubens Bassini
また街を走った。
しばらくして戻ると、車1台分が空いている。
迷わず停めた。
炭火煎珈琲「銀の匙」。
やはり喫茶店だ。
食後の珈琲を飲んで行こう。
好奇心と期待が入り混じりながら蔵のドアを開けた。
想像したとおり中はクラシカルで落ち着く雰囲気。
カウンターとテーブル席が3つ。
この広さもいい。
太い梁と柱は長い間、蔵を支えてきたのだろう。
思い描いていた通りだ。
「いらっしやいませ」
「ここでいいですか」
「どうぞ」
小さな窓の傍のテーブルにした。
メニューの中から珈琲は「ブラジルサントス」を頼んだ。
ケーキもあるではないか、すぐに声をかけケーキセットにした。
オーナーは女性。
店のことを尋ねてみた。
ここは家蔵だったそうだ。
あの増田町にある様に大きな家の中に蔵がある。
この蔵を覆う立派で大きな家があった。
店の前の道路が出来て敷地が引っ込み、
建ち並んでいた古い商家は殆ど壊され、残っている家蔵も少ないという。
歴史に「もし」は、なんの役にも立たないが、
大きな商家が連なっていたら、
歴史を感じる場所で観光の呼び水にもなっていたかもしれない。
この蔵は、海産物などの乾物を扱う卸問屋だった。
よくぞ残して喫茶店にしてくれたものだ。
壁に並ぶ素敵なカップとソーサーのことを聞いてみた。
すると、始まりは、
この蔵で喫茶店を開きたいと考えていた方にオーナーが貸した。
その方は、サラリーマンを終えて夢だった喫茶店を始めた。
15年が経ち、オーナーが引継いだ。
蔵の喫茶店は家具もカップもそのままに30年を過ぎている。
なんだか楽しくなり、カウンターに移りたいと思ったが、
初めて来たばかりなので窓際に留まった。
横手の名物を聞いた。
あの「横手焼きそば」は一口で言うと、
子どものおやつみたいなものだったらしい。
十文字中華そばや隣の湯沢市の稲庭うどんのことも。
稲庭うどんは、以前は稲庭に行っても食べられる店がなく、
製造所だけが集まっていた。
観光で来た人が行っても食べられなかったが、
今はゆっくり食べられる。
昔は、献上品で高価なもので自分の家で食べるより、
お使い物にしたそうだ。
オーナーのお母さんが作るうどんは、
稲庭うどんのはじきを使っていたそうだ。
「ブラジルサントス」
いい香りだ。
ソフトな苦味、酸味に甘味が加わる。
品よくバランスがとれている感じで美味しい。
カウンターでホールに長いケーキ用の包丁を使うところが見えた。
聞くと、チーズケーキは思ったとおり自家製だった。
爽やかな酸味がブラジルサントスとよく合う。
初めての蔦の絡まる蔵の喫茶店「銀の匙」で、
美味しい珈琲と自家製チーズケーキ。
横手界隈の話を聞きながら寛いだ。
この辺りに来て落ち着く場所を見つけた。
そういう店があると、盛岡からの距離が縮まる。
ここから秋田県の南の地域の食などの文化に触れ、
歴史を知り、新たな人との出会いが広がりそうだ。
ゆっくりしてオーナーの顔を見て言った。
「また来ます、来てよかったです」
盛岡から雫石、西和賀を通り、横手まで。
半日のドライブは、いい感じの小旅になった。
秋田県横手市四日町、横手市役所の近く。
「炭火煎珈琲 銀の匙」













