読了。
20年近く日本語を教えてきたアメリカの大学の日本語学科の閉鎖のため終身雇用の職を失い、非常勤講師などで生活していたが、アメリカ人夫の不義のため離婚、そして任期付きではあったが日本の母校の大学から講師としてオファーがあったため、30年ぶりに帰国した女性が主人公の物語。
うらはぐさ風土記 (著)中島京子
主人公・沙希は帰国後に、大学近くの「うらはぐさ地区」にある、空き家となった伯父の家で暮らすことになる。
登場人物がみな魅力的。
物語に描かれている一つ一つの出来事も素敵なのだが、登場する美味しいものも大変魅力的。
例えば、主人公・沙希が教え子2人と雑談していて「スティルトンチーズを食べてすぐに寝ると不思議な夢を見る」という話題になった。
真夜中、沙希はこのような行動をする。
「柿を剥いていたら、がぜん食欲が湧いてきた。少し柔らかめの柿はいい匂いがした。八等分に切って皿に置き、その上にフォークで細かくしたスティルトンチーズを散らす。ついでに、素焼きのくるみを手でひねって細かくして振りまいた。こうなると、蜂蜜も回しかけたいものである」(太字は本文からの引用)
何とも美味しそうではないか!!
沙希は、住まいの伯父の家の物置となった部屋から「おそらくは貰い物と思われるソーテルヌの貴腐ワイン」を探し出し、
「舌の上にやわらかく広がる熟した柿の食感に、ブルーチーズの塩分と強烈な旨味、しびれるような感覚、蜂蜜の甘さ、くるみの歯ごたえ、そして、すべてを包み込むようなソーテルヌの馥郁とした香り、ああ!」
とワインを1本飲んでしまった。
私はお酒は飲まないが、柿とブルーチーズと蜂蜜とくるみ、ああ、なんて美味しそうなんでしょう。
また、年末にご近所のご夫婦から黒豆のおすそ分けをもらい、
沙希は「そこに黒豆があればただちにクリームチーズと混ぜることしか考えられなくなるのだった。パンに、あるいはクラッカーに載せて、ワインのおともにすれば際限なく食べ続けていられる」とのことだった。
黒豆とクリームチーズ!!
試してみたい。
お茶やお食事のシーンで話されている内容も興味深い。
沙希、同僚講師とその友人で「布袋」という焼き鳥屋さんでの話題に、井伏鱒二の『荻窪風土記』があがり、そこに関東大震災で被災した人たちの移り住んだ先として、「新宿郊外の中央沿線方面には三流作家が移り、世田谷方面には左翼作家が移り、大森方面には流行作家が移っていく」と書いてあったそうだ。
この大森方面というのは「馬込文士村」のことだろうか。
「川瀬巴水展」で大田区立郷土博物館に常設の「馬込文士村」展示があったり、文士村散策マップもあったことを思い出す。
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少し前に、「一幸庵」の「雪つぶて」を食べた。
群ようこ氏の「老いてお茶を習う」のお稽古のお菓子として紹介されており、ずっと食べたかった!
和三盆糖の中に小さな大徳寺納豆片が入っているお干菓子。
「錆枝」の「トリ豆皿」にのせて、
鈴木進氏の「粉引線紋碗」でお抹茶で楽しんだ。
中に入っている大徳寺納豆にパンチがあり、まろやかな甘さの和三盆糖と対照的。
小さな大徳寺納豆は長く口の中に残る感じ。
ほうじ茶と合わせてもきっと美味しいぞ!そして、ずーっと食べられそうな感じ。



