読了。

本書は図書館にリクエストを出して10か月以上待った。

2021年11月発行のものである。

大変な人気。

 

らんたん  (著)柚木麻子

 

本書は、女性教育者、恵泉女学園の創立者、そして日本YWCA同盟総幹事も務めた河井道、そしてその教え子である一色ゆりを中心とする物語である。

 

本書には、津田梅子を始めとする有名人が多く登場する。

 

「PRESIDENT WOMAN Online」の「気になるあの著者に会いに行く」のインタビュー記事で、著者の柚木麻子氏が、

 

恵泉の関係者は、思いつく限り、名簿に載っているご存命の方全員に電話をかけて「これでいいでしょうか?」と確認しながら執筆しました。

 

と話されていた。(太字部分は引用)

コロナ禍の真っただ中、年配の方は在宅が多く、電話取材ができたそう。

 

恵泉女学園関係者、卒業生、親族、津田梅子関係者まで広く取材したそうである。

 

作品中の驚きのエピソードは、著者の創作のみならず史実に基づくものも多いのか…。

 

特に、気になったのが河井道と有島武郎の関係。

インタビューによると、有島武郎の作品原稿についての河井道とのやり取りは、ほぼ史実だそう。

 

もう一つ気になったのは、徳富蘆花のところに河井道が乗り込んでいく場面。

これは、実際には交流がなかったそうで創作だそう。

 

しかし、徳富蘆花が妻にDVをしていたのは史実だそうだ。

 

作品には妻帯者の野口英世が河井道に言い寄るシーンがある。

 

これは「PRESIDENT WOMAN Online」ではなく、小学館のWEBサイト「小説丸」の「特別インタビュー」で、著者は、野口英世が友人への私信に河井道のことを書いていたと語っていらした。

 

しかし、野口英世は結婚の結納金で留学したにも関わらず、妻がアメリカに着いたらすぐ離婚したらしい。

 

このように、現代なら叩かれるような行動を男性著名人が明治、大正、昭和初期にしており、それをオープンにしていたのだ。

 

「PRESIDENT WOMAN Online」で柚木麻子氏は、このように語っている。

 

いい作品を書いているのだから、すごい研究をしたのだから、女の人を傷つけても仕方がないというスタンスでいる。だから私は誹謗中傷でも何でもなく、そのまま小説に書いただけです。

 

「闇は闇として、美しいから取っておけ」と、女性の人権の問題や、女性への暴力や差別を「仕方ない」と考える風潮が明治の頃から脈々と続いている。そんな灰色の人間の感情が、実は性暴力などを覆い隠していたのではないかなと、この小説を書きながら思いました。

このあたりは、本作品を読んでいて、私も大いに憤ったところであるし、考えさせられた。

 

また、本作品はとても楽しくもある。

 

できるだけ大勢の偉人を登場させつつ、分かりやすく書きたかったので、『アベンジャーズ』のように、それぞれ一瞬だけ見せ場を用意して、すぐ退場させるという構成にしています。

 

なるほど。

 

例えば、河井道が犬養毅の住む首相官邸を訪れるシーンでは、「文藝春秋社からこちらの書庫の整理でお手伝いに来ている」と「くまのプーさん」の翻訳者・石井桃子、そして、犬養毅の孫でもある作家の犬養道子も登場。

 

恵泉女学園の近くの経堂商店街を「あのいかにも同情や注視を浴びたがるような雰囲気を全身でからぷんぷん漂わせて」太宰治が歩いて、恵泉の生徒たちをうっとりさせていたり…。

 

戦後のシーンでは、「終戦連絡事務局の白洲次郎と申します」とロールスロイスを運転して白洲次郎が颯爽と登場する。

 

このほか、翻訳者・村岡花子も登場し、わくわくとした調子で河井道に「赤毛のアン」の魅力を語っていたりと、実在の著名人物が代わる代わる登場するので、大変楽しく読めた。

 

それにしても、河井道の明るさ、前向きさはどうだろう。

 

河井道の父親は伊勢神宮の神職であったが、明治の世の中になり失職、その後長く無職を続けたため、過酷な幼少時代を送り、その後も時代やその他の困難がどんどん押し寄せる中、悩み、苦しみながらも明るくバリバリと突き進んでいく。

 

いやあ、嫌なこと、面倒なこと、悩ましいことなどてんこ盛りの中、幻想まで見てしまう程の深い苦悩、マイナスの感情に振り回されつつも、その闇に支配されず、前向きに、明るい世界を目指して進んでいく河井道に大変感動した。

 

最後に、恵泉女学園のペットとして登場する「イナゾウ」。

これが大変気になった。

 

事実だろうか…と検索したところ、東京新聞のwebサイトに関係する記述を見つけた。創作ではないか、そのようなペットの飼育記録はないと書かれていて、何だか残念。

 

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「らんたん」を読み始めた頃、10月9日、「töe coffee(トーコーヒー)」を通りかかった。

 

満席のようだったので諦めようと思ったら、ちょうどお客さんが1組帰るところで、「今なら座れますよ~」と声をかけていただいたので、入店。

 

 

窓の外は住宅街。

ラッキーなことに、「3種のチーズケーキ」が提供される「töe の日」であった。

 

レアチーズケーキ、かぼちゃのバスクチーズケーキ・シナモンキャラメルのソース、ベイクドチーズケーキである。

 

 

8席だけの小ぢんまりしたお店なのだが、ひっきりなしにお客さんがやってくる。

席がないと、「今日はテイクアウトにするわ~」とコーヒーとケーキを持ち帰る方も多い人気店。

 

カフェラテにもケーキにも大満足。