日本のGDPはなぜ落ちこんだのか? | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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11月17日に内閣府は、7~9月期のGDPが、前期(4~6月期)より-0.4%まで落ちこんだと第1次の速報を出した。同じ状態が1年間続いたものと仮定する「年率換算」だと、前年比で-1.6%まで落ちこむひどさだという。



当初は、多くの民間シンクタンクやエコノミストが7~9月期は前期比で+2%以上を予想していたので、この速報はマーケットに大きな負のパニックを与え、日本の株式マーケットは売り一色となった。



念のために解説すると、GDPとは国の経済の大きさを表す指標である。たとえば、カナダから木を100円で輸入して、それを熊の木彫りにして1000円で売ったら、900円の利益(粗利)が出る。この900円がGDPのイメージである。もちろん、北海道で切った木が100円で中国で売れたら、この100円もGDPに加えられる。



ただし、GDPが完全に実体経済を反映されているわけではない(また、サービス業が産業の中心に移行している日本経済ではGDPが体質的に伸びにくい)。ただ、昔から一定基準で指標をとっているので、比較することに意義があるのは間違いない。



ほかの指標として、公共投資は+2.2%、輸出が+1.3%と改善した。また、住宅投資が-6.7%に低下して、景気の先行きを見るのに重要な企業の設備投資も-0.2%となった。消費はわずかに上向いたものの、「予想より相当悪い」と言うべきひどさである(ただし、在庫の数字が落ちこんで足を引っ張っているんで、実体経済が悪くなったとまでは言えない)。





原因は言うまでもないだろう。4月に消費税率を5%から8%に引き上げたことだ。4月になって値段が上がって大規模な買い控えが起こったことが、まだ尾を引いているわけである(夏場の天候不順も響いたと言われている)。



では、なぜこれほど予想外の落ちこみを見せたのだろうか。・・・などと言うと複雑なことを論じなければならなそうに思えるが、意外と単純な話だと考えている。



消費税増税のあと、多くのエコノミストは企業業績が上がっているのを見て「日本経済は上向いている」と言ってきた。実際、消費以外のあらゆる指標は悪くはなかった。



なぜかと言えば、日本の大企業が多くが海外で外貨を稼いでいるからである。円が安くなれば、同じ1万ドルの稼ぎでも、1ドル100円なら100万円なのに、110円なら110万円になる。何もしなくても、円換算で10%(10万円)も利益が上がってしまう。



また、エコノミストたちは、春に落ち込んだ消費にしても、企業業績が良ければ雇用が増え、株が上がり、都市部(とくに都心部)についてはオフィス需要から土地も上がり、一部の個人の資産が増える。資産が増えれば資産を持っている人たちの消費が増えるから、それが回り回ってやがて日本経済全体が上向くと言い続けた。



基本的な考え方はこれでいいはずだが、1つ落とし穴がある。それは大企業のない「地方」というものが、ぽっかりと抜け落ちていることだ。





アベノミクスで恩恵を受けるのは、東京や大阪や名古屋などの大都市で働くか資産を持つ人たちである。だから、これらの地域では消費税増税の影響をあまり受けていない。



ところが、地方に行くと雇用も増えず、株高のメリットも受けられず、土地も上がるはずもない。単に消費税が上がっただけである。だから、消費が落ちて、地方経済は容赦なく冷えこむ。



消費税の影響をどう見るかというのは、「都市の景気拡大」と「地方の景気冷えこみ」を足して、プラスになるかマイナスになるかを判断するということである。都市>地方だと考えるならプラス、都市<地方だとマイナスになる。



多くのエコノミストは東京に住んでいる。しかも、仕事は金融関係である。だから、身近で大企業が円安メリットを受けて利益をどんどん上方修正していくのを目の当たりにしている。そんなところばかり見ていたら、「消費税があと5%上がったってへっちゃらだろ」と疑いもなく思ってしまう。



エコノミストというのは一般に日経新聞を読み、企業の重役の話を聞き、世界の主要都市で取材をする。もちろん、大きな組織なら地方経済の専門家もいるだろうが、多くは都市中心の発想をしてしまう。



実際には、株高などの恩恵が地方まで拡大するにはそれなりの時間が必要だ。上でも書いたとおり、「雇用が増え、株や土地が上がれば、一部の個人の資産が増える。資産が増えれば資産を持っている人たちの消費が増えるから、それが回り回ってやがて日本経済全体が上向く」というところまで行くのに、なんだかんだと2、3年くらいかかってもおかしくない。



そもそも消費税は、使ったお金から平等な割合で税金を取る制度である。年収が平均の100倍ある人が、平均の100倍消費するかというと、そうはならない。「ぎりぎりで生活する」という言葉があるように、年収が低い人ほど使う割合は大きいものだ。



貧しい人ほど消費税の負担は大きい。



まだ「株や土地が上がれば、一部の個人の資産が増える」のところまでしか行っていないのに消費税を上げたのだから、「一部の個人以外」の人がこの4月にいっせいに増税の被害を受けてしまったわけである。それがどれくらいになるかわからないが、日本人の金融資産における株式は数%と言われているので、おそらく1割いないのではないだろうか。





仮に1割がアベノミクスの恩恵を受けたとすると、残りの9割の人が恩恵を受ける前に増税したことになるので、恩恵を受けた1割と被害を受けた9割のせめぎ合いである。当然のことながら、9割の勝ち、つまりマイナスになるのが当然である。



「どうしても増税しないと日本の財政がもたない」というのであれば、アベノミクスによる恩恵を、システムとして9割にすみやかに再配分しなくてはいけないのであるが、それをしないままに増税したから、今回の「惨事」になったと考えられる。



これまで官僚(とくに財務官僚)にだまされてきた(あるいは言いくるめられてきた)安倍首相も、ようやくそのことに気づき、消費税増税を先送りすることにしたというのが、今回の件だろう。先週まで株が上がったのは「とりあえず2%くらいは持ち直すだろう」という予測に「増税先延ばし」が加わったからであるが、最初の見込みが甘かったので、今回の下げとなった。



このことに一昨年から一貫して警鐘を鳴らしてきたのは、私が知る限りグルーグマン氏と高橋洋一さんくらいだった。あくまで私の知る限りではという条件付きだが、日本の良い意味でも悪い意味でも賢い官僚に惑わされず日本経済にきちんとした提言ができるエコノミストはこの2人だけなのかもしれない。



安倍首相が消費税増税を上げるのを延期しようとしているとすれば、官僚ではなく、この2人の見解が正しいと確信したからだろう。そもそも、「日本経済復活には地方経済が大事」と戦略を変えた時点で、これまで官僚たちにだまされていた(あるいは身動きをとれなくされていた)ことに気づいているのは明白である。



今回の件で良かったことが1つあるとすれば、大組織の研究所に所属し、マスメディアで派手に発言しているエコノミストの多くが、官僚のご都合主義とさほど差がないとわかったことだろう。今回、多くのエコノミストたちが「+2%」の線でまとまっていた。彼らが見ていたのは東京であって、日本ではない気がする。








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