世界的ベストセラーとなった『Give and Take』は、昨年読んだ実用的な洋書の中で最も印象深かったものです。趣旨は外形的にはあえて損をするような行動をするgiver(与える人)が、最終的に成功している例が多い。それはなぜなのかといったものです。
「世界の流れが日本に向かっている」という確信を深めた1冊でもあります。
さて、今回ご紹介する記事のタイトルはTip Sheet: How to Escape Misguided Decisions(ヒントメモ:判断ミスを避ける方法)です。A little foresight can help you avoid throwing good money after bad.(ちょっとした洞察があれば、墓穴を掘るのは避けられる)です(→外部記事リンク)。
throw good money after badは「悪い投資をしてしまい、そのぶんを取り返そうと良い投資にあてるぶんのお金までつぎこむ(そして、さらに損をする)」ということです。たとえば、ビジネスで失敗した事業にさらに資金をつぎ込んで損を膨らませることが該当します。
グラント氏はまずこのthrowing good money after badの状態を次のように説明します。
Think about the last time you waited for 45 minutes at a restaurant. You probably should have headed elsewhere at that point, but you'd already waited so long-how could you leave? You fell into a trap called "escalation of commitment." When we invest in a choice that falls short, we're often tempted to invest more. It pays to learn how to cut our losses.
「レストランで45分間待たされてしまったとしよう。その時点でほかの場所に移動すべきだったのかもしれないが、あなたはずいぶん待つのに費やしてしまっている。どうしたら移動できたのだろうか。あなたは「関与の増長」と呼ばれる罠にはまってしまったのである。選んだ投資で損をすると、私たちはさらにつぎ込みたくなる気持ちになることがよくある」
損したからそれを取り戻そうとしてさらに踏みとどまって勝負を続け、損を膨らませるというわけです。では、それを避けるにはどうすればいいのでしょうか。グラント氏は4つの策を提唱しています。1つ1つ見ていきましょう。
1.Get a Neutral Opinion 「中立的な意見を聞こう」
It's hard to avoid being biased in favor of sticking with an old car or a struggling employee. The solution? Consult a third party. In one study, bank managers tried to save face by giving second loans to clients who had defaulted. But new managers who had no responsibility for the first loan saw it was time to sever those relationships.
「古い車や奮闘する従業員にこだわるほうを選んでいては、偏った見方を避けるのは困難だ。その解決法とは? ある研究では、銀行の経営陣が破産した顧客へ追加融資してメンツを保とうとしたが、最初の融資に責任のない新しい経営陣がそういった関係を断ちきる時期だと判断したという事例がある」
車にだいぶガタが来ているのにもったいないと乗っていたが、修理費でかさんで新車を買ったほうがましだったとか、要領が悪いけれど頑張っているからとその社員にプロジェクトを継続させたら、大失敗して大損したなどといった話は、そこらじゅうに転がっています。
それは自分が関わったゆえの「こだわり」のために冷徹に計算ができなくなったからです。関わりのない第三者ならそんなものはないので、客観的に損得を計算できるのは当然でしょう。
進むか撤退するか迷ったとき、「利害関係もないし、とても公正な見方ができるので、冷静な判断ができるだろう」という人がいれば、その人に判断してもらうというのは有効な策です。
さて、今回ご紹介する記事のタイトルはTip Sheet: How to Escape Misguided Decisions(ヒントメモ:判断ミスを避ける方法)です。A little foresight can help you avoid throwing good money after bad.(ちょっとした洞察があれば、墓穴を掘るのは避けられる)です(→外部記事リンク)。
throw good money after badは「悪い投資をしてしまい、そのぶんを取り返そうと良い投資にあてるぶんのお金までつぎこむ(そして、さらに損をする)」ということです。たとえば、ビジネスで失敗した事業にさらに資金をつぎ込んで損を膨らませることが該当します。
グラント氏はまずこのthrowing good money after badの状態を次のように説明します。
Think about the last time you waited for 45 minutes at a restaurant. You probably should have headed elsewhere at that point, but you'd already waited so long-how could you leave? You fell into a trap called "escalation of commitment." When we invest in a choice that falls short, we're often tempted to invest more. It pays to learn how to cut our losses.
「レストランで45分間待たされてしまったとしよう。その時点でほかの場所に移動すべきだったのかもしれないが、あなたはずいぶん待つのに費やしてしまっている。どうしたら移動できたのだろうか。あなたは「関与の増長」と呼ばれる罠にはまってしまったのである。選んだ投資で損をすると、私たちはさらにつぎ込みたくなる気持ちになることがよくある」
損したからそれを取り戻そうとしてさらに踏みとどまって勝負を続け、損を膨らませるというわけです。では、それを避けるにはどうすればいいのでしょうか。グラント氏は4つの策を提唱しています。1つ1つ見ていきましょう。
1.Get a Neutral Opinion 「中立的な意見を聞こう」
It's hard to avoid being biased in favor of sticking with an old car or a struggling employee. The solution? Consult a third party. In one study, bank managers tried to save face by giving second loans to clients who had defaulted. But new managers who had no responsibility for the first loan saw it was time to sever those relationships.
「古い車や奮闘する従業員にこだわるほうを選んでいては、偏った見方を避けるのは困難だ。その解決法とは? ある研究では、銀行の経営陣が破産した顧客へ追加融資してメンツを保とうとしたが、最初の融資に責任のない新しい経営陣がそういった関係を断ちきる時期だと判断したという事例がある」
車にだいぶガタが来ているのにもったいないと乗っていたが、修理費でかさんで新車を買ったほうがましだったとか、要領が悪いけれど頑張っているからとその社員にプロジェクトを継続させたら、大失敗して大損したなどといった話は、そこらじゅうに転がっています。
それは自分が関わったゆえの「こだわり」のために冷徹に計算ができなくなったからです。関わりのない第三者ならそんなものはないので、客観的に損得を計算できるのは当然でしょう。
進むか撤退するか迷ったとき、「利害関係もないし、とても公正な見方ができるので、冷静な判断ができるだろう」という人がいれば、その人に判断してもらうというのは有効な策です。
2.Set Limits (基準を設ける)
Evaluate the process of making a decision, not only its outcome. Asking employees to explain their thinking can encourage them to conduct a thorough, evenhanded analysis of options. You can set advance criteria for your personal decisions, too: Before arriving at a restaurant, resolve to wait no more than 30 minutes.
「なりゆきだけにまかせるのでなく、意志決定のプロセスを評価しよう。従業員に考えを説明させると、選択肢の分析を完全かつ公平に行うことが促進される。あなたにも自分の意志決定において進んだ基準を設定できる。レストランに行く前に、30分は待たないと決めておこう」
プロセスをしっかり見ておくと、どこでどうなったら行きづまるかがわかってきます。そこでストップを掛けてしまえば、それ以上損はしません。
また、ごく個人的な意志決定でも「ここでここまで来たら止める」といった基準を作っておけば、すくなくともそこでかぶった以上の被害はなくなります。
3.Think of Others 「他人のことを考えよう」
In Mistakes Were Made (But Not By Me), psychologists Carol Tavris and Elliot Aronson present a chilling analysis of how prosecutors reject DNA evidence that proves the innocence of people they imprisoned. To avoid the pitfalls of a myopic, self-serving decision, consider its effect on others instead of thinking only of your own ego and image.
「心理学者のCarol TavrisとElliot Aronsonが『Mistake Were Made』で、自分が逮捕した人たちが無実だと証明するDNA鑑定を検察官が拒否するぞっとするような経過について分析して見せた。短絡的かつ利己的な判断をする落とし穴を避けるには、自分の利益や自分のイメージだけを考えるのでなく、他者への影響を考えよう」
「こいつが怪しい」と思えば、その人が何をやっても怪しく見えます。冤罪のほとんどがそういった決めつけから起こったもので、判断をあとまわしにしてまずは材料を集めるのに徹していれば、防げた冤罪が相当あると考えられます。
そういったときに、相手の立場になって考えると、それまで見えてなかったものが見えてくる場合があります。「怪しい」と思っている自分の立場だけでなく、自分が怪しいと疑われていたらどんなふうに感じるか考えれば、自分がいかに相手に対して公正さを欠いているかわかることがあります。
4.Be Careful With Compliments 「ほめ言葉に気をつける」
Praising people for their skills can help them feel secure enough to acknowledge a mistake. But when we give positive feedback in a domain where a person has failed, we invite overconfidence. Trying to help someone get over a bad financial decision? Compliment their writing or their family-not their investing know-how.
「能力をほめられると、ミスをしたとわかっても平気でいられたりする。だが、人が失敗した領域でプラスの評価をすると、過信を招く。投資の失敗から人を立ち直らせようとしているときはどうか。レポートや家族をほめても、投資方法をほめないようにしよう」
人はほめられるとその言葉を裏切らないように行動しがちです。たとえば、免許とりたての人の車に同乗して、「運転うまいねえー。初心者とは思えないよ-」などとお世辞を言うと、そのせいでまだ運転が未熟なのに上手にフリをして事故を起こすということが、とくに若い人には結構あるそうです。
大きな損を防ぐには、「失敗だとわかったらすぐに撤退する」という柔軟性が必要です。ところが、人はほめられると撤退という策がとりにくくなり、がんじがらめになったりします。
ほめることは人間関係の潤滑油になりますが、そのせいで損害を与えたら、知らず知らずにあいだに恨まれているなんてこともありえます。また、自分でもほめられたからと言って、その言に拘束されてはいけません。
以上、判断ミスの罠に入り込まないためには、1.自分の関わりをいったん捨象するために第三者の立場から見る、2.これ以上の損をしたら止めるという撤退の基準を設ける、3.他人のことを考える、4.相手の言葉に拘束されない、の4つが有効だというわけです。
投資の世界でも、大きく増やすことより損を以下に最小限に留めるかのほうが大事だなどと言います。この記事はそのことに触れているわけですが、投資がうまくいっている人がさほど多くないことを考えれば、それがいかに難しいかも透けて見えてきます。
「言うは易く行うは難し」ですが、損を最小限に抑えられる人が最後は勝利するわけで、傾聴に値するアドバイスだと感じました。


Image(s): FreeDigitalPhotos.net
【告知】
ディスカヴァー・トゥエンティワンからマイケル・マハルコ著の翻訳書『クリエイティブ・シンキング入門』を出版いたしました。日本ではロジックの大切さが強調されていますが、世界的な趨勢はロジックにとらわれずに、自由な発想でクリエイティブに活動するほうへと流れています。
それを実践するのがクリエイティブ・シンキングです。本書はクリエイティブ・シンキングを身につけるための最良の入門書です。ビジネスやアカデミズムの最先端で活躍していく方はぜひご一読ください。定価は2400円+税です。
本書がなぜ今の日本に必要なのかを書きました。ぜひご参照ください(→過去ログ)。
3.Think of Others 「他人のことを考えよう」
In Mistakes Were Made (But Not By Me), psychologists Carol Tavris and Elliot Aronson present a chilling analysis of how prosecutors reject DNA evidence that proves the innocence of people they imprisoned. To avoid the pitfalls of a myopic, self-serving decision, consider its effect on others instead of thinking only of your own ego and image.
「心理学者のCarol TavrisとElliot Aronsonが『Mistake Were Made』で、自分が逮捕した人たちが無実だと証明するDNA鑑定を検察官が拒否するぞっとするような経過について分析して見せた。短絡的かつ利己的な判断をする落とし穴を避けるには、自分の利益や自分のイメージだけを考えるのでなく、他者への影響を考えよう」
「こいつが怪しい」と思えば、その人が何をやっても怪しく見えます。冤罪のほとんどがそういった決めつけから起こったもので、判断をあとまわしにしてまずは材料を集めるのに徹していれば、防げた冤罪が相当あると考えられます。
そういったときに、相手の立場になって考えると、それまで見えてなかったものが見えてくる場合があります。「怪しい」と思っている自分の立場だけでなく、自分が怪しいと疑われていたらどんなふうに感じるか考えれば、自分がいかに相手に対して公正さを欠いているかわかることがあります。
4.Be Careful With Compliments 「ほめ言葉に気をつける」
Praising people for their skills can help them feel secure enough to acknowledge a mistake. But when we give positive feedback in a domain where a person has failed, we invite overconfidence. Trying to help someone get over a bad financial decision? Compliment their writing or their family-not their investing know-how.
「能力をほめられると、ミスをしたとわかっても平気でいられたりする。だが、人が失敗した領域でプラスの評価をすると、過信を招く。投資の失敗から人を立ち直らせようとしているときはどうか。レポートや家族をほめても、投資方法をほめないようにしよう」
人はほめられるとその言葉を裏切らないように行動しがちです。たとえば、免許とりたての人の車に同乗して、「運転うまいねえー。初心者とは思えないよ-」などとお世辞を言うと、そのせいでまだ運転が未熟なのに上手にフリをして事故を起こすということが、とくに若い人には結構あるそうです。
大きな損を防ぐには、「失敗だとわかったらすぐに撤退する」という柔軟性が必要です。ところが、人はほめられると撤退という策がとりにくくなり、がんじがらめになったりします。
ほめることは人間関係の潤滑油になりますが、そのせいで損害を与えたら、知らず知らずにあいだに恨まれているなんてこともありえます。また、自分でもほめられたからと言って、その言に拘束されてはいけません。
以上、判断ミスの罠に入り込まないためには、1.自分の関わりをいったん捨象するために第三者の立場から見る、2.これ以上の損をしたら止めるという撤退の基準を設ける、3.他人のことを考える、4.相手の言葉に拘束されない、の4つが有効だというわけです。
投資の世界でも、大きく増やすことより損を以下に最小限に留めるかのほうが大事だなどと言います。この記事はそのことに触れているわけですが、投資がうまくいっている人がさほど多くないことを考えれば、それがいかに難しいかも透けて見えてきます。
「言うは易く行うは難し」ですが、損を最小限に抑えられる人が最後は勝利するわけで、傾聴に値するアドバイスだと感じました。

Image(s): FreeDigitalPhotos.net
【告知】
ディスカヴァー・トゥエンティワンからマイケル・マハルコ著の翻訳書『クリエイティブ・シンキング入門』を出版いたしました。日本ではロジックの大切さが強調されていますが、世界的な趨勢はロジックにとらわれずに、自由な発想でクリエイティブに活動するほうへと流れています。
それを実践するのがクリエイティブ・シンキングです。本書はクリエイティブ・シンキングを身につけるための最良の入門書です。ビジネスやアカデミズムの最先端で活躍していく方はぜひご一読ください。定価は2400円+税です。
本書がなぜ今の日本に必要なのかを書きました。ぜひご参照ください(→過去ログ)。




