毎年、お正月の記事として書いているのですが、やっぱり質問が来る例の件についてまた書いてみます。はい、Happy New Yearについてです。
最近はだいぶ減りましたが、毎年、年末年始になるといつも「なぜHappy New YearにはAがつかないのか?」という質問を受けてきました。中には「Aがつかないのはおかしい!」と怒っている人までいたりして。
実際、この時期になると過去に書いたHappy New Yearについての記事にかなりアクセスがあるようです。それだけ疑問に持つ方が多いということでしょう。
ところで、お正月にJR山手線に乗ったら、車体に「ラブライブ」というアニメーションのイラストがありました。
アニメのことは詳しくないのでよく見なかったのですが、車内に乗りこむとき、扉の横のMerry Christmas & A Happy New Year!というコピーが目に飛びこんできました。
クリスマスシーズンになると、かつてはクリスマスカードにA Merry Christmas、あるいはA Merry X'masと書く人がかなりいました。「Aをつけるのは間違い」「X'masではなく、Xmas」という注意が繰りかえされるようになり、近年は(なぜかXmasも減って)Merry Christmasが主流になっています。
しかし、A Happy New Yearのほうは相変わらず流通しているようです。
wishは、そのことが起こるか、あるいはそういった状態になるかどうかわからないけれど、起こればいいという「願望がある」ということです。
とくに、wish A Bという名詞が2つ並ぶと「A have Bであることを願望する」(本当はA has Bですが、便宜的に)ということになります。
あいさつも同様です。Happy New Yearと年末に言われれば来年が、年始なら今年が良い年になるように言っているだとわかります。不要であればつけないのが当然ですし、あるとむしろ邪魔でしょう。
逆にA Happy New Year.などと言ったら、「いつの年のこと?」と思うでしょうし、The Happy New Year.だと、「あれ、そんな話題したっけ?」となってしまいます。
ようするに冠詞をつけることによって、聞き手がよけいなことを考えなければならなくなるので、相手に考える負担を増やすことになってしまいます。
ただ、山手線の車両にMerry Christmas & A Happy New Yearと書いてしまった人の気持ちは理解できます。というのは、12月になると、テレビCMでWe wish you a merry Christmas and a happy new year ~♪と流れるからです。
Merry ChristmasにAはつけないと知っている人がこの曲を聴けば、どうしても and a happy new yearのところが耳に残るでしょう。でもこれはあくまで文の一部だから冠詞があるのであって、あいさつ表現ではないので、やはり間違いということになります。
なお、Merry Christmasはto youをつけると、A Merry Christmas to you.とすることもよくあります(つけてもつけなくてもよい)。
「あいさつなのにAがついているのはなぜだ!」と言いたくなりますが、これはto youがあるところからもわかるように、目の前にいる人へのあいさつというより、歌詞やクリスマスカードなどに書き添えるメッセージのほうによく使われるように思います。
A message to you.のmessageがMerry Christmasになったと考えると、あいさつ表現がまた名詞に戻った先祖返り現象なのかもしれません。すると、「A Happy Birthday to you.は間違いですか?」のようななんとも答えにくい質問が来たりして、ルールによる理解のむなしさも感じます。
このように、言葉は1つのルールをつかんだと思ったとたん、それに合わないところが出てくる鵺(ぬえ)のような存在です。だから、どんな説明も参考に留めて、最後は経験を通して学んでいくしかないようです。
Happy New Year!
本年がみなさまによってすばらしいものになりますようにお祈りしております。


Image(s): FreeDigitalPhotos.net
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クリスマスシーズンになると、かつてはクリスマスカードにA Merry Christmas、あるいはA Merry X'masと書く人がかなりいました。「Aをつけるのは間違い」「X'masではなく、Xmas」という注意が繰りかえされるようになり、近年は(なぜかXmasも減って)Merry Christmasが主流になっています。
しかし、A Happy New Yearのほうは相変わらず流通しているようです。
A Merry Christmasと言わないのと同様に、A Happy New Yearも間違いです。
Happy New Yearはいわゆるあいさつ表現です。あいさつ表現の多くはI/We wish you X.のX部分だけを取り出したものです。
I wish A B.という形は日本人学習者にはピンと来ないところもあるようです。それはwishに対応する訳語「望む、求める」は、日本語では多くは「多くを望むな」とか「雇用を求める」など、自分(主語)に関わることについて使うからです。
しかも、「望む」は「望んでいたことが起こった」といった関係節として使う以外では、「富士山を望む」のように「面している」の意味で使うことのほうが多いようです。
Happy New Yearはいわゆるあいさつ表現です。あいさつ表現の多くはI/We wish you X.のX部分だけを取り出したものです。
I wish A B.という形は日本人学習者にはピンと来ないところもあるようです。それはwishに対応する訳語「望む、求める」は、日本語では多くは「多くを望むな」とか「雇用を求める」など、自分(主語)に関わることについて使うからです。
しかも、「望む」は「望んでいたことが起こった」といった関係節として使う以外では、「富士山を望む」のように「面している」の意味で使うことのほうが多いようです。
これがwishの使い方を違和感のあるものにする遠因の1つだと推測しています。
wishは、そのことが起こるか、あるいはそういった状態になるかどうかわからないけれど、起こればいいという「願望がある」ということです。
とくに、wish A Bという名詞が2つ並ぶと「A have Bであることを願望する」(本当はA has Bですが、便宜的に)ということになります。
・・・と言うと、「なんでhaveなんて出てくるんだ!」と思う方もいらっしゃるでしょう。
この文型の基本形であるgive A Bが「与えることで、A have Bにする」という意味であると言われれば、いちおうは納得してもらえるかもしれません。
すると、I wish you a merry Christmas.は「あなたが愉快なクリスマスを持てるようにと願望します」→「すてきなクリスマスを!」というになります。これから主語のI、動詞のwish、目的語のyou、そして冠詞をとってMerry Christmas.というあいさつ表現になったものです。
同じように、Good morning.はI wish you a good morning.から、Good evening.はI wish you a good evening.からです。
念のために、あいさつ表現の成立の仕方はこれだけではありません。Hello.は「ホー」といった感じの呼びかけから、Good-bye.はGod be with you.から発達したものです。
さて、そうなると、I wish you a happy new year.からHappy New Year.になるのは当然ということになりますが、それにしても、なぜあいさつでは冠詞が省略されるのでしょうか。
あとはめいめいで適当に理屈をつけるしかないわけですが、私は、呼びかけ表現と同じしくみではないかと考えています。
たとえば、「彼はもう二児の父です」はHe is already a father of two.ですが、「父はいま留守です」はFather is out now.と冠詞をつけないこともよくあります。さらに、「お父さん!」といった呼びかけとなると、My father!と呼ぶのは変で、Daddy!やDad!やFather!などで、Myをつけないのが普通です。
学生時代、私は自宅に電話するときに、いつも「もしもし、あなたの息子ですが」と言っていたのですが、あるとき横にいた友達に大笑いされたことがあります。
この文型の基本形であるgive A Bが「与えることで、A have Bにする」という意味であると言われれば、いちおうは納得してもらえるかもしれません。
すると、I wish you a merry Christmas.は「あなたが愉快なクリスマスを持てるようにと願望します」→「すてきなクリスマスを!」というになります。これから主語のI、動詞のwish、目的語のyou、そして冠詞をとってMerry Christmas.というあいさつ表現になったものです。
同じように、Good morning.はI wish you a good morning.から、Good evening.はI wish you a good evening.からです。
念のために、あいさつ表現の成立の仕方はこれだけではありません。Hello.は「ホー」といった感じの呼びかけから、Good-bye.はGod be with you.から発達したものです。
さて、そうなると、I wish you a happy new year.からHappy New Year.になるのは当然ということになりますが、それにしても、なぜあいさつでは冠詞が省略されるのでしょうか。
あとはめいめいで適当に理屈をつけるしかないわけですが、私は、呼びかけ表現と同じしくみではないかと考えています。
たとえば、「彼はもう二児の父です」はHe is already a father of two.ですが、「父はいま留守です」はFather is out now.と冠詞をつけないこともよくあります。さらに、「お父さん!」といった呼びかけとなると、My father!と呼ぶのは変で、Daddy!やDad!やFather!などで、Myをつけないのが普通です。
学生時代、私は自宅に電話するときに、いつも「もしもし、あなたの息子ですが」と言っていたのですが、あるとき横にいた友達に大笑いされたことがあります。
なぜ笑ったか聞いたら、普通は「オレだけど」とか「太郎だけど」など自分の名前を言い、少なくとも「あなたの」はいらない、とのことでした。へー。
話が少し横道にそれましたが、呼びかけでMyがいらないかと考えると、所有格や冠詞の機能を考えればわかります。これらは、「誰のものか」「聞き手が特定できるか」など、その名詞が指す対象の範囲を絞りこんだり、明確にすることです。
でも、呼びかけの場合、目の前にいる人に向かって言っているので、特定など必要ありません。娘さんが父親であるあなたを見ながらFather!と呼んだら、間違いなくご自分のことでしょう。
話が少し横道にそれましたが、呼びかけでMyがいらないかと考えると、所有格や冠詞の機能を考えればわかります。これらは、「誰のものか」「聞き手が特定できるか」など、その名詞が指す対象の範囲を絞りこんだり、明確にすることです。
でも、呼びかけの場合、目の前にいる人に向かって言っているので、特定など必要ありません。娘さんが父親であるあなたを見ながらFather!と呼んだら、間違いなくご自分のことでしょう。
あいさつも同様です。Happy New Yearと年末に言われれば来年が、年始なら今年が良い年になるように言っているだとわかります。不要であればつけないのが当然ですし、あるとむしろ邪魔でしょう。
逆にA Happy New Year.などと言ったら、「いつの年のこと?」と思うでしょうし、The Happy New Year.だと、「あれ、そんな話題したっけ?」となってしまいます。
ようするに冠詞をつけることによって、聞き手がよけいなことを考えなければならなくなるので、相手に考える負担を増やすことになってしまいます。
ただ、山手線の車両にMerry Christmas & A Happy New Yearと書いてしまった人の気持ちは理解できます。というのは、12月になると、テレビCMでWe wish you a merry Christmas and a happy new year ~♪と流れるからです。
Merry ChristmasにAはつけないと知っている人がこの曲を聴けば、どうしても and a happy new yearのところが耳に残るでしょう。でもこれはあくまで文の一部だから冠詞があるのであって、あいさつ表現ではないので、やはり間違いということになります。
なお、Merry Christmasはto youをつけると、A Merry Christmas to you.とすることもよくあります(つけてもつけなくてもよい)。
「あいさつなのにAがついているのはなぜだ!」と言いたくなりますが、これはto youがあるところからもわかるように、目の前にいる人へのあいさつというより、歌詞やクリスマスカードなどに書き添えるメッセージのほうによく使われるように思います。
A message to you.のmessageがMerry Christmasになったと考えると、あいさつ表現がまた名詞に戻った先祖返り現象なのかもしれません。すると、「A Happy Birthday to you.は間違いですか?」のようななんとも答えにくい質問が来たりして、ルールによる理解のむなしさも感じます。
このように、言葉は1つのルールをつかんだと思ったとたん、それに合わないところが出てくる鵺(ぬえ)のような存在です。だから、どんな説明も参考に留めて、最後は経験を通して学んでいくしかないようです。
Happy New Year!
本年がみなさまによってすばらしいものになりますようにお祈りしております。

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