驚異的な記憶力の秘密 | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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英語や芸能など、思いついたことを適当に書いていくという、そういうブログです。

「自分史記憶」という言葉をご存じでしょうか。これについては、近年、アメリカのメディアで取り上げられることが増えているようです。



元の表現はHighly Superior Autobiographical Memory (HSAM)で、ある特殊な記憶力のことです。Autobiographical Memoryという表現は訳しにくいのですが、すでに「自分史記憶」という呼び方が先行しているようなので、それにならうことにします。


今回取り上げる記事は、People with Extraordinary Autobiographical Memory(驚くべき自伝記憶を持つ人々)というタイトルです。The unique brains of those with Highly Superior Autobiographical Memory (HSAM)(著しく優れた自伝記憶を持つ人たちのユニークな脳)というサブタイトルがついています(→外部記事リンク)。



筆者はコロラド州立大学准教授のAnne M. Cleary博士です。啓蒙的な科学記事なのですが、明晰で読みやすい英語です。ご関心があればぜひ原文もチャレンジしてください。



自分史記憶とは、たとえば「1989年2月3日は何曜日?」と聞かれて「○曜日です」とすぐに正解を出し、「その日は小学校の算数の時間に割り算の抜き打ちテストがありました」などといった個人的な記憶がすぐに取り出せるような能力のことです。



テレビの検証番組で取り上げられたことがあり、一定の割合でこういった人がいることが実証されました。


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さっそく読んでみましょう。



In 2006, Parker, Cahill and McGaugh reported the first known case of Highly Superior Autobiographical Memory (HSAM) in a research participant known as "AJ". When provided with a date, AJ could specify on which day of the week it fell and what she did that day. Since then, more people with this extraordinary ability have been identified, and researchers have now discovered structural brain differences in people with HSAM compared to people without it (LePort et al., 2012). This is especially interesting given that people with HSAM do not show exceptional memory in other domains besides autobiographical memory. Among the brain differences that the researchers note is "amplified white matter tract coherence" (p. 12), which they suggest may indicate that the transfer of information among connecting neural regions is enhanced in participants with HSAM and that this may contribute to their superior autobiographical memories.

「2006年にカーヒルとマックゴーフが報告したところでは、AJという名で知られた被験者に自分史記憶(HSAM)が見られたという。日付を言われると、AJはそれが案曜日であるか、自分がその日に何をしたかと特定する。それ以来、こういったすごい能力がある人たちがさらに見つかった。普通の人と比べてHSAMがある人の脳の構造に違いがあることがすでにわかっている。このことでさらに興味深いのは、HSAMの人たちの自分史記憶に隣接する領域では、特段の高い記憶力を見せなかったことである。研究者が気づいた脳の違いの1つには、「増幅された白色物質系結合力」、つまり、結合している神経部間の情報移動が自伝記憶を持つ被験者では頻繁であり、彼らのすぐれた自伝記憶に貢献している可能性があるが示唆されることがある」



どうやら、こういった人は、記憶力がすごいのではなく、脳の使い方が一般の人とすこし違っている。脳の構造が少し違っているかもしれない、ということまでわかっていいます。当初、生まれつきの特殊能力だとされていました。



ところで、「脳の構造が違う」と言っても脳の形が違っているわけではなく、神経系のつながりが違っていて、それが強力な自分史記憶を生み出しているのではないかということです。


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別の仮説もあります。それは、生まれつきではなくて、発達段階で普通の人と違った経験をした結果でないかというものです。



実際、経験によって脳内の変化が起こることは珍しくありません。ラット実験でも、目生まれた環境で育ったラットと過酷な環境で育ったラットでは、前者のほうが脳皮質の重量が重く、記憶力も高くなるのだとか。



Research on musical training is an excellent example of how experiences can impact the structure of the human brain, as discussed in this New York Times article and this Scientific American blog and reviewed here. Researchers have known for some time that the brains of musicians differ from those of non-musicians, but researchers have questioned whether this is due to innate differences between musicians and non-musicians. However, recent evidence suggests that musical training itself contributes to the brain differences between the musically trained and untrained. One study showed that children given 15 months of musical training exhibited structural changes in their brain relative those that did not. More recently, researchers at Northwestern showed that neural changes that appear to result from musical training in childhood persist into adulthood.

「音楽的なトレーニングの研究は、『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事やこの『サイエンティフィック・アメリカン』誌のブログやこのサイトでも議論されているように、音楽的なトレーニングの研究は、経験というものが人間の脳構造にいかに影響するかを見る好例である。研究者は音楽家の脳はそれ以外の人のものと違っていることを最近になってつきとめたが、それが両者の生まれつきの違いによるのかどうかはまだ検証中である。だが、最近拝命したことから示唆されるのは、音楽的なトレーニングが両者の脳の違いに影響しているということである。ある研究によると、15ヶ月間音楽的なトレーニング施された子供たちは、トレーニングをしなかった子供と比べると、脳構造に変化が見られた(いいめえる注:relative those that did notはrelative to those that did notが間違いではないかと思います)。その後、ノースウエスタン大学の研究者が明らかにしたのは、幼児期の音楽的トレーニングによると考えられる神経系の変化は大人になっても維持されるということだ」



これは影響力のある研究になりそうです。なにしろ子供のときの音楽の訓練によって脳に変化が起こり、それがずっと続くのであれば、音楽家になるためには子供のときに訓練しなければダメだということになるからです。



子供をある種のプロにしたかったら、子供が何をやりたいかはともかく、とりあえずトレーニングはさせておかなければその可能性が小さくなるということでしょう。


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たとえそれが言いすぎだとしても、芸術系に進ませたい場合は家庭環境が重要だというのは間違いありません。



さて、話は元に戻ります。では、自分史記憶のある人たちは、どういった経験をしたのでしょうか。



アメリカの女優のMarilu Hennerが自著やテレビ番組で述べているところでは、この能力のある彼女は、子供のころ独り遊びで「1週間前に何をしたか」「2週間前に何をしたか」「昨年の今ごろ何をしたか」「幼稚園児だった特定の日に何をしたか」などを思い出すことをやっていたそうです。



それをゲームとして習慣として繰り返しているうちに、まるで時間旅行をしているかのようにいろんなことを自由に思い出せるようになりました。



どうやら、子供のとき記憶のトレーニングを積んでくことで、それに応じた脳構造ができたのではないかと推測されます。



As McGaugh and colleagues suggest in their article, future research on children with HSAM might shed light on this issue. But perhaps an approach similar to that taken with recent research on musical training could be taken as well. Specifically, maybe children could be randomly assigned to either a no-memory-training control condition or to an autobiographical memory training condition in which they receive a daily autobiographical memory training exercise similar to what Marilu Henner describes in her book. Would structural brain differences be shown 15 months later? If so, would they still be shown in adulthood? Would characteristics of HSAM be found? This would be an interesting study indeed.

「マックゴーフのチームの記事で示唆されているのは、自分史記憶のある子供に関する将来の研究がこのテーマを明らかにする可能性があるということだ。だが、音楽トレーニングに関する最近の研究でとられたときの似たアプローチがおそらくとられることになるだろう。表面上は、子供たちはランダムに全く記憶訓練ができない環境と、自分史記憶のトレーニングができる環境に振り分けられ、後者ではMarlu Hennerが自著で述べたものと似た自分史記憶トレーニングを毎日受けることになる。15か月後に、脳構造の違いが現れるのだろうか。もしそうなら、大人になっても違った構造のままだろうか。HSAMの特徴がわかるのだろうか。これは実に興味深い研究になるだろう」



ここまで読むと、「実験するまでもなくそうだろう」と私など考えてしまいますが、それは科学マインドに反するものです。やってみなくちゃわからないのです。



天才モーツァルトが幼い頃からしごかれていたことには大きな意味があったのは間違いないと再確認します。



タイムマシーンに乗って当時の様子を見たら「幼児虐待」だと思うでしょう。でも、そのおかげでその後の人類はその偉大な芸術に浸れることができたわけで、すこし複雑な気持ちになってしまいます。



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