最近だいぶ減ったようですが、年賀状にA Happy New Yearと書く人がいるようです。もちろんaをつけるのは間違いです。
なぜ間違いかというと、Happy New Yearが呼びかけだからです。
Good morning.もGood luck.も呼びかけです。これらをA good morning.と言ったり、A good luck.と冠詞をつけて言う人はいません。
aは冠詞(かんし)のうちの不定冠詞と言われます。aには聞き手にはまだ特定されていない1つのものというニュアンスがあります。
たとえば、I have a cat.と言うと「あなたにはまだ特定されていない1匹の猫を飼っている」という意味です。
「聞き手にまだ特定されていない」のですから、聞き手は「へえ、どんな猫なんですか」と特定作業を始めるのが普通でしょう。
不定冠詞 a の不特定の役割は、そうやって特定という作業によってコミュニケーションを促すことです。
A Happy New Yearと言うと、「あなたにまだ特定されていない幸せな1年」の意味になりますが、これでは呼びかけなど成立しません。なにしろ、相手が「それはどんな1年ですか」などと言ったら、せっかくの挨拶が台無しです。
たとえば、「お母さん」と呼びかけるのなら、A mother!では変でしょう。Mother!と冠詞なしで言います。「神様!」ならA God!ではなく、God!です。Happy New Yearと同じ呼びかけ表現の「メリークリスマス」は、A Merry Christmas!ではなく、もちろんMerry Christmas!です。
以上から、「明けましておめでとう」がHappy New Yearとなる理由がわかります。
Happy New Yearのもう1つのポイントとして、これが年末の「良いお年を」の意味に使えることがあります。日本語だと「明けましておめでとう」と「良いお年を」は時期を分けなければなりませんが、英語はどちらもHappy New Yearです。
同様の現象としてさきほどあげたGood morning.があります。Good morning.は「おはよう」の意味ですが、「それではまた」といった感じで、午前中であれば別れの挨拶にも使えます。
なぜこんなことになるのでしょうか?
それはHappy New YearもGood morning.もI wish you XのX部分が挨拶表現になったものだからです。Good luck.も同様です。
I wishはあとに名詞を2つ並べて、I wish A B.で「AがBを持てることを願っている」という意味です。A have B.の関係があります。
I wish you a happy new year.なら「あなたが幸せな新年を持てますように願っている」という意味になります。そのI wish youの部分が省略され、さらに呼びかけ表現としてaもなくなって、Happy New Yearとなったわけです。
「あなたが幸せな新年を持てますように願っている」であれば、「良いお年を」の意味にも「明けましておめでとう」の意味にもなることがわかります。
どちらも「来年が良い年になりますように」と「今年が良い年になりますように」と言う時点が違うだけで、「良い年になりますように」の部分は同じです。
Good morning.もGood luck.もMerry Christmasもすべて同じしくみです。
wishは語源的にはwinと同じです。つまり、「勝ち取る」というのがもともとの意味です。「あなたに勝ち取る」→「あなたのために勝ち取る」→「あなたが勝ち取れるように一生懸命に祈る」ということで、かなり強い表現です。
今は気軽に使う挨拶表現も、もともとは宗教的な色彩を帯びた、真摯な呼びかけだったというわけです。
本ブログを呼んでくださっているみなさんに、Happy New Year! 今年もよろしくお願いします!

Image(s): FreeDigitalPhotos.net


