おそらく日本で一番有名であろう国産ファンド、「さわかみファンド」の会長さんです。長期投資のパイオニアと言われていて、澤上さんの講演会や本はいつも大人気です。
日経新聞で本書が出ることを知ってすぐアマゾンで買おうと思ったのですが、なんと1週間待ち。アマゾンはあきらめて、いつも冷やかしている書店を探しましたがどこにもなく、あきらめてアマゾンに注文しようと思ったら、近所の書店にありました。やれやれ。
奥付を見ると2011年10月11日初版で、おととい買ったのは11月15日発行の・・・なんと17刷。人気の高さがわかります。
本書は澤上さんが1997年に出した『超インフレが来る』の新版です。内容をひとことで言うと、「なぜ予言したインフレが来なかったか」と「やっぱり近い将来インフレが来る」という2つの柱があります。
本書を支えているのは、ひとことで言うと、国の経済政策に対する怒りです。
まともな経済政策をとっていれば、もっと経済は上向きになってインフレが来たはずだったのに、経済政策があまりにひどくて、逆に日本経済をとことんまで落ち込ませた。いい加減しろ!
そんな感じの怒りが随所に見られます。
本書では、なぜ日本経済が1990年のバブル崩壊から20年以上経った今も立ち直っていないのかを、図も使って丁寧に解説しています。
澤上さんによると、好況というのは法人から個人にお金が移動する高金利の時期で、不況というのは個人から法人にお金が移動する低金利の時期です。
バブル崩壊の時期に国は徹底的なバブル退治をおこない、企業や銀行が身動きがとれない状態にしてしまいました。これが不況が長引いた原因です。
その個人から法人にお金が移動する時期に、国は銀行救済など後ろ向きのお金の使い方をして、そのまま国民の税金から銀行に流れたお金が停滞してしまいます。法人から個人へというお金の流れができず、経済が上向かないまま停滞が長期に続いてしまったと主張しています。
このような目からうろこが落ちるような説明が随所に見られます。
このように、国の経済政策がいかに日本経済をダメにしたかを丁寧に、独特の「澤上節」でわかりやすく解説しています。澤上さんの考え方に共鳴するかどうかはその人しだいでしょうが、澤上さんの怒りは多くの人に共有できるのではないでしょうか。
澤上さんの日本経済への処方箋は一貫しています。お金の流れをスムーズにして、お金に働いてもらうことです。
ところが、現在の日本では、個人はお金を貯蓄し、企業は内部留保し、銀行は日本国債を買い、お金が停留しています。お金が「サボっている」状態です。これをなんとかしないと、日本経済の復活はありません。
まずは経済に明るいまともな政治家が出てくること。官僚が民間の邪魔をせず、現場感覚で仕事をすること。生産性を上げるために労働に活力を与えること。競争原理を導入して既得権益を壊し時代に合ったしくみを作ること。そして・・・
澤上さんはおもしろい提案をするのですが、これはぜひ本書で。有能な長期投資家の独創性を味わってみてください。
澤上さんの言う「インフレ」は必然ではなくて目標です。そのためにはどんなことが必要かがわかります。
経済は結局、需要と供給が紡ぎ出すものだとあらためて痛感しました。
経済はきれいごとではありません。東北を復興させるには最後はお金です。今の状態では震災復興すらままならないのです。お金は経済の血液です。それをいかにうまく流すかが、日本経済の復活だけでなく、東北を復興させる鍵です。
投資をしている人はもちろん、そうでない人も日本経済に関心があればぜひ一読をお勧めします。
●書籍情報●
『やっぱり! インフレがやって来る』
澤上篤人 (著)
定価1,575円/246ページ
明日香出版社
2011年10月11日初版
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