孫社長は佐賀生まれ、李大統領は大阪生まれ、どちらも出自は在日韓国人です。
教育は孫社長が日本とアメリカ、李大統領は韓国と違っていますが、どちらも将来を嘱望され、苦学してここまでのぼりつめた苦労人です。
社員2万人以上を擁するソフトバンクグループの総帥として、そして日本の首相に任命された日本の代表として、大統領官邸で大統領と会見するのですから、孫社長には相当の感慨があったのではないでしょうか。
この2人にはもう1つ似ているところがあります。
皮肉な言い方になり恐縮ですが、ソフトバンクと韓国、どちらも「自転車操業」でなんとか回っている状態であることです。どちらも常に前に進まないと、あっという間に破綻する可能性があるほどギリギリでやっています。
孫社長はそこから脱するためにメガソーラー事業に乗り出しました。そのためには菅首相の再生エネルギー法案ができるだけそのまま通過することが必要でした。
大統領訪問の目的は、孫社長にとっては電力事業で韓国政府とのパイプを作ることでしょう。できれば日本の「脱原発」を評価してもらい、韓国からもそれを推進するように後押しすることを願っていたのではないでしょうか。
しかし、李大統領のほうが数段上でした。なにしろ5千万人近くの国民の生活を背負っています。
では、李大統領は何を考えていたか?
全くの推測ですが、おそらく孫社長を通じて韓国の原発推進を、そして電力の安定供給を日本企業に印象づけることでしょう。そうすれば、電力不足の日本を脱して、安定した電力供給がのぞめる韓国に進出する日本企業が相次ぐ可能性があります。
「何を根拠に?」と思われた方がいるでしょう。根拠は2つあります。
1つは韓国が日本企業誘致をさかんに進めていること。これは前回説明しました。
もう1つは今月15日にソウル市で起こった大停電です。
大停電がなぜ根拠になるか不思議に思われるでしょう。
この大停電、実に午後3時半から午後8時前までの長さで起こっています。ソウル市内は大混乱し、あやうく韓国全土まで拡がるところでした。
ここから1つの事実が露呈します。韓国は電力不足なのです。それなのに「韓国は電力が安く安定供給できる」とごまかしていたのです。
現在、韓国は中国と日本企業の誘致合戦を繰り広げています。膨大な人口を抱え旺盛な内需がある中国が圧倒的に有利ですが、韓国にとって日本企業の技術移転は生命線と言っていいほど大切です。
実は大停電の直後に李大統領は電力会社に怒鳴り込みます。
ここまで入念に積み上げてきたシナリオがパーになってしまったからでしょう。
80年代後半、日本の地価が高騰したバブル期に、日本企業がかつてこぞって韓国に進出したことがあります。そのときは、工場で賃上げ闘争のストライキが相次ぎ、ほとんど生産活動ができず、日本企業はまもなく撤退しました。
そのマイナスイメージを払拭する総仕上げが、おそらく電力の安定供給をアピールすることでした。
今回の大停電で日本企業の韓国への懐疑はおそらく強まり、シナリオの一部は水泡に帰してしまいました。
続きます。
