英語にはone of the largest cats in Japanとかone of the most famous mountains in the worldなどといった言い方があります。そのまま訳せば「日本でいちばん大きな猫の中の1匹」とか「世界で最も有名な山のうちの1つ」と訳せます。
質問の趣旨は「日本でいちばん」だったら1つしかないはずなのに、なぜ「いちばん~なものの1つ」と言い方をするのかというものでした。
Financial Times紙から1つ例を引いてみましょう。
Mr Maehara, whose strong leadership and political convictions have made him one of the most popular DPJ members with the Japanese public, was considered a contender to lead the party in the event that Mr Kan decided to resign or call a general election.
「強いリーダーシップと政治信念を持つがゆえに日本国民に最も人気がある民主党議員のひとりでありつづけた前原氏は、菅氏が辞職したり解散を告示して総選挙になった際に、党のトップに立つ候補だと目されていた」
この場合、前原氏は、「民主党で最も人気がある議員」というグループがあり、そこに属しているといると考えています。
英語では、このように「いちばんグループ」というものを想定して、それに入っているか入っていないかといった発想をよくおこないますが、それが典型的に現れているのがone of the most ~という表現だと考えてください。
実は、日本語でも同じ発想をすることがあります。次のような例です。New York Times紙からです。
$140 billion pension plan is one of the largest pools of money in the world.
「1400億ドル年金計画は世界最大級の共同資金となる」
日本語で「最高級の」とか「トップクラスの」とかといった言い方をしますが、これと発想が似ています。これらは、実際に一番かどうかはわからないが、いちばんグループというものを想定して、それに属しているということを表します。
なぜこのような表現があるかを考えると、1つには「いちばんだ」と言い切ってしまうと、もしかしたら自分が知らないだけでそれを上回るものがあるかもしれない場合です。その場合、結果的に嘘を言ったことになってしまいます。そこで、「いちばんグループに属する」と言っておけば、責任を回避できます。
もう1つは、客観的なものさしがなくて「いちばん」が人によって違う場合です。「この人は私が会った中で一番美しい」ならいいのですが、「佐々木希さんは日本でいちばん美しい」だと、「いや、いちばんじゃない。いちばんは吉永小百合様だ」と反論されて、水掛け論になります。
日本語では英語ほど多用されないので、ときどき違和感も生じるかもしれませんが、日本語の「最高級の」の感覚を延長して考えれば納得できるようになると思います。
また、逆に言うと、日本語の「最高級の」といった表現を英語に訳すときにone of the most ~を活用できます。ぜひ覚えておきたい表現です。
