こんにちは、リブラです。
今回は、「イニシエーション」17章「誓い」の解説です。
先ずは、あらすじから。
内なる声から告げられた使命と、その代償
エリザベスは、心霊主義の友人たちから
多くを学びました。
彼らとの交流を通じて、人々の魂の扉が開かれ
ていく様子を目の当たりにし、孤独の中で闇を
さまよっている人が、どれほど多いかを知ったのです。
また、自らの霊媒能力を通じて潜在意識の世界
を垣間見ながら、自己分析によって自分自身を解体し、
一歩ずつ道を切り開いてきました。
やがて彼女の関心は、心霊主義から心理学へと移り、
西洋の精神科学を学び始めます。
そして、国立精神科病院の医長と面会し、
体系的な研究と実習を行う許可を得ました。
ある晩、エリザベスは家の長椅子に腰を下ろし、
深い思索にふけっていました。
病院で彼女が目にしたのは、まるでダンテの『神曲』
に描かれた地獄のような光景でした。
しかし、苦しんでいるのは病院に収容されている人々
だけではないはずです。
普通に社会生活を送っている人々の中にも、
症状が目立たないために誰にも気づかれず、
心を病んでいる人が大勢いるのではないか。
そう考えると、彼女は絶望せずにはいられませんでした。
それでも、健康な人々が力を合わせれば、多くの悲劇を
乗り越えられるはずだという確信がありました。
人類の苦しみをなくすために、自分のすべてを捧げたい。
そう強く願ったものの、何から始めればよいのか、
彼女にはわかりませんでした。
そのとき、傍らに懐かしいエネルギーが感じられ、
内なる声が聞こえてきました。
「どこに行けば助けが得られるのか。
それは、お前の内側にある。
誰もが外からの助けを待っている。
しかし、助けを与えなければ、誰もそれを
受け取ることはできないのだ」
エリザベスは、人類を救済する偉大な仕事の
共働者になりたいと答えました。
すると、その声は彼女に警告しました。
「救済の共働者になるということは、
責務と犠牲に生きるということだ。
それは、不完全さに終止符を打つことでもある。
これまで抵抗できなかった誘惑が、ことごとく
お前の前に現れるだろう。
それに屈すれば、災いを招くことにもなりかねない」
内なる声は、さらに続けました。
「有限の存在が、神の力をもてあそぶことはできない。
共働者として手にする力を、二度と自分自身のために
使ってはならないのだ。
個人的な感情に従うことも、
自分自身の立場から物事を考えることも、
もはや許されない」
そして、最後にこう告げました。
「救済の共働者になり損ねるくらいなら、
一人の人間としての人生を全うする方がよい。
よく考えなさい」
しかし、エリザベスは恐れないと答えました。
「私の人生は、もうすべてやり終えています。
個人として望むものは、何も残っていません。
これ以上の個人的な幸福など、あり得ないのです。
どんな誘惑が現れようとも、恐れることはありません。
私はどうしても、
この偉大な仕事の共働者になりたいのです」
その後、しばらくの間、声は聞こえませんでした。
ただ、果てしなく大きな愛だけが、
エリザベスに注がれていました。
やがて、内なる声が再び語りかけます。
「お前が自信家であることは、
よく知っているよ、我が子よ。
だが、今度ばかりは、自分自身を
見失ってもらいたくない」
エリザベスは長椅子に座り直し、
額をさすりながら、あたりを見回しました。
部屋には、もう誰もいませんでした。
「あれほど懐かしい声で語りかけてきた存在は、
いったい誰?
そして、なぜ私が自信家だとわかるの?
もしかすると、私はかつて、その忠告を無視して
何か過ちを犯したことがあるのかしら?」
しかし、エリザベスがどれほど考えても
答えは見つかりませんでした。
内なる声は、もう聞こえてきませんでした。
「イニシエーション」第17章の要約
〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇~〇
救いたいという衝動の先にあるもの
エリザベスは前章で、四季とともに移り変わる
植物のサイクルを通して、
生命エネルギーには終わりがなく、
形を変えながら循環していることに気づきました。
その気づきによって、
彼女の意識は死への恐怖から、
生命そのものの神秘へと向かいました。
目に見える世界から、目には見えない世界へ。
心霊主義の人々との交流や実験を通して、
エリザベスは未知の領域を体験し、
やがて確信を深めていきます。
そして、彼女の関心は人間の潜在意識へと広がり、
心を病む人々をなんとか助けたいという思い
にまで発展していきました。
しかし、何から手をつければよいのか、
彼女にはわかりません。
そんなとき、彼女の内なる心の声が語りかけます。
それは、後半の章で正体を表す、
エジプト転生時代の師の声でした。
師は、救済の共働者の厳しさを伝えます。
「救済の共働者になり損じるより、
個人としての人生を全うする方がいい」
なぜ、そんな謎めいた警告をするのでしょうか。
エリザベスは、自分がかつて忠告を無視し、
何らかの過ちを犯したことがあるような
感覚を覚え、躊躇します。
これは心霊や心理学など、
潜在意識に関心を持つとき、
起こりがちな出来事です。
目に見えない領域に心を開くと、
直感は働きますが、
自身と他者を隔てる境界が曖昧になり、
他者の思いのエネルギーが流入しやすくなります。
それで、他人ごととは思えなくて、
切羽詰まったように救済衝動に
駆られてしまうのです。
今回は、私自身の体験を交えながら、
この問いについて考えてみたいと思います。
精神科で出会った、忘れられない女の子
今から40年ほど前、
臨床検査技師の資格を取ったばかりの私は、
最初の勤務先である精神科病院で、
脳波測定の仕事をしていました。
検査がないときには、
受付や事務の手伝いもしていました。
あるとき、うつ病の女性患者さんが
点滴を受けている間、
3歳の娘さんの面倒を見てほしいと、
担当の精神科医から頼まれました。
「朝から何も食べていないみたいだから、
何か食べさせてあげて」
そう言われて、その女の子を
預かることになったのです。
女の子は、とても無表情でした。
母親と離され、知らない人ばかりの
事務所に連れてこられても、
泣いたり騒いだりしません。
ただ、私が砕いたクッキーを
口元に持っていくと、夢中で頬ばり、
私の左手の小指をぎゅっと握りました。
彼女は無表情のまま、
黙々とクッキーを食べ続けました。
そして、食べ終わっても、
私の小指を離そうとしません。
まるで、食べ物を与える人を
確保したかのようでした。
翌日から1週間ほど、
私は母親が点滴を受けている間、
その女の子の面倒を見ることになりました。
ところが、次の週に
病院を訪れた一家の様子は、
私の目に異様に映りました。
その日、女の子の頬には血糊が
ついていました。
鼻血が出たようでしたが、
誰かに拭いてもらった様子はありません。
一緒に来ていた4歳のお姉ちゃんは、
年齢相応に元気いっぱいでした。
母親の膝に乗ったり、
父親に抱っこしてもらったりして、
両親から愛情を注がれている
ことが見て取れます。
ところが、お姉ちゃんは退屈してくると、
突然、妹の背中に突然、噛みついたのです。
両親はそれを笑って見ているだけで、
止めようともしませんでした。
やがて診察の順番が来ると、
母親は夫と長女だけを連れて
診察室に入っていきました。
待合室のソファーには、
3歳の女の子だけが、
ぽつんと取り残されました。
私は、お姉ちゃんに噛まれた
彼女の背中が気になり、
そっとシャツをめくってみました。
その瞬間、ぞっとしました。
背中一面に、無数の小さな歯型が
ついていたのです。
私はすぐに担当医へ報告し、
事情を尋ねました。
その子は、十分な世話や愛情を受けられず、
危害からも守られていない状態
にありました。
担当医の話から、私は、
家庭の中で繰り返される心の傷と、
虐待の連鎖について知ることになったのです。
「あのまま、あの両親のもとにいて、
あの女の子は大丈夫なのでしょうか?」
その女の子の姿が、どうしても
他人事とは思えなかったからです。
私自身、子どもの頃、
何かにつけて父親から叩かれたり、
外に放り出されたりして育ちました。
だからこそ、両親から疎まれる子ども
の気持ちが、痛いほどわかったのです。
すると、担当医はこう答えました。
「あの子にはかわいそうだけど、
母親のうつ病が回復して、
母性を取り戻すまで待つしかない。
ここにあるカルテは、全部そういうケース
の患者さんのものだから、
読んでみるとわかるよ。
虐待する親も、子どもの頃に
虐待されていることが多いんだ」
当時の私は、あの女の子に何もして
あげられない無力感に苛まれていました。
一方で、人間の心の中には、
虐待の連鎖を生み出すメカニズムが
あることを知ったのです。
子どもの頃に受けた心の傷は、
大人になってからも残り、その後の人生に
暗い影を落とし続けることがあります。
では、私たちは、その影を消し去ることを
目指すべきなのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思っています。
自分のトラウマをなかったことに
しようとするのではなく、
それを自分の人生に与えられた
大切な課題として理解すること。
幼く、傷つきやすい自分の内側の
子どもの存在を認め、
その子を守ることができる自分へ
と成長していくこと。
私は、そうした歩みこそ、
この世界への貢献につながるのでは
ないかと思うのです。
「救いたい」という思いが、救済になるとは限らない
エリザベスの内なる師が
導こうとしているのも、こうした方向
なのではないでしょうか。
人間の苦しみを目の当たりにすれば、
なんとかしてあげたいと思うのは
自然なことです。
しかし、他者を救いたい
という強い衝動に駆られ、そのために
自分を犠牲にして行動することが、
本当の意味での救済になるとは限りません。
行動すること、
何かを成し遂げること、
目に見える結果を出すこと。
こうした「doing」に意識が向きすぎると、
救済活動そのものが、自分をすり減らす営み
になってしまうことがあります。
また、自分がなんとかしなければと
他者の問題を引き受けすぎると、
相手自身が持っている力や、
自分で歩み始める可能性を奪ってしまう
こともあるでしょう。
もちろん、現実の危険から人を守るために、
具体的な行動や支援が必要な場面もあります。
ただ、すべてを自分の力で
解決しようとすることと、
必要な支援を差し出すことは、
同じではありません。
そして、目に見えない領域に
心を開いているときには、
自分と他者との境界が曖昧になり、
相手の苦しみを自分のことのように
感じてしまう場合もあります。
相手の苦しみを感じ取れることは、
共感する力の一つです。
けれども、相手の苦しみを感じ取ることと、
その苦しみを自分が背負わなければならない
と思うことは、別の話なのです。
では、どうすれば、他者の苦しみに
心を寄せながら、自分自身を犠牲にせずに
生きられるのでしょうか。
その手がかりが、自分の立場と在り方、
「being」を知ることにあると、
私は考えています。
自分のbeingを知るということ
自分のbeing(在り方)を知るとは、
自分がどのような人間で、
何を大切にし、
どのような形でこの世界に関わっていきたい
のかを理解することです。
そのための手がかりは、今の人生に与えられて
いる環境や能力、可能性を、どのように
活かしたいと思うのか。
そして、自分は何に純粋な至福を感じるのか、
という問いの中にあるのではないでしょうか。
誰かに指示を仰いだり、
自分が進むべき方向を外側に探し続けたり
しなくても、自分の在り方が明確になれば、
内側から湧き上がる純粋な衝動をきっかけに、
自然と行動が生まれてくることがあります。
自分の至福や成長を感じながら、
その喜びを通して誰かや社会に貢献していく。
そうした生き方なら、少なくとも、
誰かを救うために自分を犠牲にすること
だけが目的にはなりません。
自分自身もまた、人生を生きる
一人の人間だからです。
自分の内側にいる、傷つきやすく
幼い子どもの存在を理解する。
そして、その子を守り、
育てていける自分になる。
それは、過去の傷を消し去ることではなく、
過去の傷がある自分を含めて、
より大きな視点から自分を受け入れていく
ことでもあります。
自分の内側にある苦しみと向き合うことは、
他者の苦しみを理解する力にもつながっていくでしょう。
エリザベスが目指したもの
後にエリザベス・ハイチは、
人間の心身の健やかさを願い、
ヨーロッパで初のヨガスクールを
創設することになります。
彼女が人々の苦しみをなくしたいと願った
ことは、その後の人生において、
一つの具体的な活動へと結実していったのです。
けれども、ここで改めて考えて
みたいことがあります。
彼女の内なる師は、なぜ、救済の共働者になる
ことに対して、あれほど厳しい警告を
与えたのでしょうか。
私は、その言葉が、エリザベスの目指す
救済活動の動機について、
何かを示唆しているように思います。
彼女は本当に、魂の深いところから湧き上がる
聖なる衝動に導かれていたのでしょうか。
それとも、人類の苦しみを
目の当たりにしたことで、
自分が何とかしなければならない
という思いに駆られていたのでしょうか。
もちろん、彼女の内面を
断定することはできません。
ただ、師の言葉は、私たちにも問いを
投げかけているように思うのです。
「あなたが誰かを救いたいと思うとき、
その思いはどこから来ているのだろう?」
他者の苦しみを
見ていられないからでしょうか。
自分が何とかしなければ、
という責任感からでしょうか。
それとも、自分に与えられた
能力や可能性を活かして、
この世界に関わりたいという、
内側からの純粋な衝動なのでしょうか。
その違いは、外から見える行動だけでは
わからないかもしれません。
だからこそ、私たちは自分の内側を
見つめる必要があるのだと思います。
自分を犠牲にして誰かを救おうとする
のではなく、
自分自身の成長と至福を大切にしながら、
その在り方を通じて世界に貢献していく。
私には、それが、エリザベスの内なる師が
示そうとしていた道の一つに思えるのです。
次回も「イニシエーション」の解説を予定しています。
Noteも更新しました。こちらも読んでいただけたらうれしいです!
わたしのサロン、リブラライブラリーでは、
あなたの心のしくみをホロスコープで解説し、
心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題に
セルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。
詳しくはこちらをご覧ください。
新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、
キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。
最後までお読みいただきありがとうございます。


