ロサンゼルス近郊の火事の影響で、ずっと家に引きこもっている我が家です。
家にいると、家族3人、それぞれのデジタル機器(ラップトップやiPad)の世界に浸って、会話があるわけでもなく外にお出かけした方がよっぽど家族のコミュニケーションが活発になるような気もします。
昨日、バイリンガルに関するブログ記事を読んでいて、ある方が紹介していた記事に興味を持ったので、ここで私も持論を書きたいと思います。
紹介されていたのは、この記事です。
「日本の親が気づけない『子供をバイリンガルにしたい』の危険性」
これを書いている方は、アメリカ在住の日本人で「英語教育についてはまったくの門外漢」なので「英語教育の現場に立っていらっしゃる方から見るとピントが外れていたり、何をいまさらと思われるかもしれないが、部外者の勝手な感想だと思ってスルーしていただければ幸甚である」と書かれているので、スルーしようかと思ったのですが、英語教育というかバイリンガル教育を専門領域としている立場から自分の考えを書いてみます。
まず 日本では「英語」が「ピアノ」や「生け花」のようなお稽古事の一つとしてとらえられ、日本人は とかく芸事、試験とレベル分けが好きだと書かれていますが、確かに「習いごと」として「英語」(特に児童英語)がとらえられているという事実はあると思います。
それはなぜかというと、日本では「英語」が生活言語ではないからです。つまり特別な環境を作り出さないと英語は習得できないわけです。その環境づくりは「家で英語を使う」であったり「英語を使う場所に連れて行く」であったりします。
これは「危険なこと」なのでしょうか? これが危険なら「ピアノを弾かなくても生きていける子供にピアノを習わせること」や「泳げなくてもいいのに、スイミングスクールに通わせること」も危険なことだと言えると思います。
また「子供に二つの言語を完全に習得させようとするのは、二つの文化をまるごと理解させようとすることだ」と書かれていますが、「二つの言語を完全に習得する=バイリンガルになる」でも「二つの文化をまるごと理解すること=バイリンガル」でもないと思います。
バイリンガルにはバイリンガルの言語習得があり、バイリンガルに2つの文化をまるごと理解させる必要はありません。バイリンガルに限らず、人は独自の文化概念を形成していくので「これが〇〇文化」ですと教えて、理解させなくてもいいからです。
さらに「早期言語教育はコストパフォーマンスが悪い=投資効果が高くない」ということですが、確かに子供は認知能力が発達途上なので、「早く何かを覚える、習う」ことは苦手です。何年もかけてやっと習うようなことを大人だったら数日で覚えてしまうこともあります。だからと言って「お金と時間がかかって、もったいないから子供にやらせるのはやめなさい。」とは言えないと思います。
私は大学で日本語を教えているので、大学から言語を学び始めて、かなりのレベルまで上がった人を数多く見ています。中にはアメリカ政府で日本語通訳として活躍している卒業生もいます。これは夏のバイリンガル学会で質問されたことへの返事にもなりますが、こういう人は非常に稀なケースです。簡単に言うと...
子供の頃から2つの言語を学んだ人(例:アメリカにいる日本人の子供で現地校で英語を習い、日本語学校で日本語を習った)の約80%が、大学卒業時に両言語がAdvanced(上級)以上になれるのに対し、高校や大学から外国語として2つめの言語を学んだ人が大学卒業時に両言語がAdvanced(上級)以上になれるのは、10%以下だと言うことです。
モノリンガルは、一つの言語は「母語」であるため、何もしなくてもその言語では「上級」「超級」レベルになれると思う人も多いのですが、実はアメリカの外国語協会(ACTFL)の言語試験をすると、母語話者でも言語レベルが「上級以上」のレベルにならない人もいます。もちろん言語運用能力は個人差が大きいのですが、能力が低くても「長く習うこと」によって上達していくことはたくさんあります。
最後に私の例を出したいと思います。私は3歳の頃から17歳まで、ピアノを習っていました。私は非常に音楽的才能がなく(つまり音痴で)今でも耳から聞いた音楽を弾いたり、カラオケで歌うのがとても苦手です。
子供の頃、日本人なら誰でも弾ける「ねこふんじゃった」が弾けませんでした。みんな楽譜なんて読めないのに、ピアノなんて習ってないのにこの複雑な曲を上手に弾いていました。私はベートーベンやショパンの楽曲が弾けたのに、楽譜がないと全然演奏ができませんでした。
今、ピアノはまったく弾けないし、カラオケも苦手なままです。
では、子供の頃から習ったピアノは無駄だったのでしょうか。親は毎月、月謝を払い続けてくれてこんなに投資効果のない娘を天国で悔やんでいるでしょうか。
私はこの「(下手なのに、才能がないのに)ピアノを続けた」という経験が、自分の人生で「うまくいかないこと、なかなか上手にならないこと」に直面した時に「今はダメでもずっとやっていれば人並みになれる」と自分に言い聞かせる教訓のようになったと思っています。
長文になってしまいましたが「子供をバイリンガルにしたい」と言う親の気持ちは危険ではなく、英語を「芸事」として始めることも悪いことではない、と言うのが私の個人的意見です。
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