一昨日から、最近話題の言語習得に関する論文の話題について書いていますが、この論文に限らず、たくさんの論文を読むにつれ、書いている人の意図していることと、読み手の解釈は、かなり異なるということに気づきます。(話題にした論文の内容について書いたおとといのブログは、こちら)
この論文では、英語話者を「モノリンガル」「イマージョン環境(英語圏で生活しているか家族に英語話者がいる状況)で英語を習得した人」と「イマージョンではなく(おそらく外国語として)英語を習得した人」に分けています。
英語のモノリンガルは「英語ネイティブ」であることは確かですが、「ネイティブ」の中にもどの国でどのような教育を受け、現在何をしているかによって、英語力には相当な差があるはずです。
また「イマージョン環境(英語圏で生活しているか家族に英語話者がいる状況)で英語を習得した人」の中には、もう英語が自分の最も強い言語になり、母語のレベルがかなり低くなっている「バイリンガル」もいることでしょう。
モノリンガルの大人はどのくらいの語彙数を知っているかというと、これも何を持って「知っている」と見なすかにもよりますが、英語では、20,000から35,000と言われています。それに対して、日本語では大学生レベルでは45,000から50,000と言われています。
英語話者の方が語彙数が少ないというわけではなく、英語の方が熟語(動詞+前置詞など)が多いというのも関係していると思います。そして、モノリンガルの英語話者の場合、20,000から80,000のようにかなり文献に開きがあるのに対し、モノリンガルの日本人は数が少ないので、それほど個人差がないというのも関係しているかもしれません。
ほとんどの言語は、6,000語くらいの語彙があれば、日常会話に困ることはないと言われていますが、6,000語という数字はたいていの先進国の子供は就学前にほぼマスターしている語数と同じです。
では6−7歳の子供が大人の会話をどれだけ理解しているか、大人と同じ程度の会話ができるかというと、ある研究によれば、小学校就学時の子供は大人の会話の40%くらいしか理解していないという結果となっていました。これは、大人同士が会話している1000パターンくらいのビデオクリップをランダムに見せて、理解度を測るというテスト形式だったので、自分や自分の周りの人に関係ない話題だったら、まったくわからなくなる可能性もあるということです。「語彙」そのものを知らない上に、その「現象」や「物質」自体を知らなければ、何を話しているかわからないのは当然です。
...ということは、何を言いたいかというと、やはり6-7歳の子供が習得しているとされる5000-6000語くらいの語彙数では、大人としての日常会話はできないということです。
そのため、モノリンガルもバイリンガルも学校教育を通して、語彙数を増やし、複雑な構文を理解し、言語能力を高めていく必要があります。
小学校で習得する語彙数は10,000-15,000で、日本の子供はこれに加え、文字表記(ひらがな、カタカナ、漢字)も学んでいくから本当にたいへんだと思います。それでも不思議とほとんどの子供が、それなりに言語を習得していくことを考えると、やっぱり小さい頃から、コツコツと積み上げていけば、大人になってから、一気に何万もの単語を覚える必要がなくていいんじゃないかと思います。
これはあくまで「ネイティブレベル」の語彙数ということで、「ネイティブのような発音」とか「ネイティブのように話せる」というのとは、別次元の話です。
私の友人で「Oh, My God」の発音だけはネイティブレベルの人がいますが、この人を「ネイティブレベル」と呼んでいいのかどうか...そもそも「ネイティブスピーカー」の定義がとっても曖昧ですよね。