ある人が『バイリンガル』であるかどうかを判断するには、その人の2つの言語能力を判定する必要があります。
2つ(あるいはそれ以上の)言語が同じように上手な人は、世界中にたくさんいます。
前にも書いたように、日本語と英語はとても離れている(言語距離がある)言語なので、日本語は、英語母語話者にとって、もっとも難しい言語の一つと見なされています。(この記事を参照しています。)
私は、主に英語が母語で、日本語が日本人のように上手な人の「日本語力」を測る仕事をしていますが、そういう人たちが、あまりにも日本語がうまいと本当に英語もうまいのか(本当に英語のネイティブスピーカーなのか)を疑ってしまうことさえあります。
日本語、あるいは英語が「うまい」と書きましたが、その言語が「上手」「うまい」と判断するためには、何を基準にしたらいいのでしょうか。
日本で一般的な英語の試験は、英検、TOEICなどですが、英検の二次試験以外は、口頭試験で英語力を測る試験は、あまり普及していないように思えます。
アメリカには、外国語協会(ACTFL)があり、すべての外国語の話す能力を測るスタンダーズ(基準)があります。そして話す能力を示すためには、資格を持ったテスターが1対1で20分ほどのインタビュー(OPIと呼ばれている)をして、全部で11のレベル(初級、中級、上級はそれぞれ上中下のサブレベルがあり、その上に超級、卓越級)のうちのどのレベルかを判定します。このテストでは、発音や文法の間違いなどで点数をつけるのではなく、与えられた話題や状況設定で、目標言語(学習している外国語)を使って何ができるかを試し、測るものです。
これは、あくまで「外国語」としての言語能力を測るので、いわゆる「母語訛り」があってもいいのですが、あまりにもその人の母語のアクセント(例えばスペイン語訛りの英語など)が強すぎると、上級より上にはいけません。
ただし、例えば同じ「中級の下」と判定された人でも、「発音」や「イントネーション」には、かなりの幅があります。まるでネイティブのような発音だけど、複文レベルで話せない、与えられたタスクが遂行できない、という人もいれば、発音はひどいけど、正しい文でしっかりした意見が言える人などもいて、ACTFLの基準では同じレベルだけど、いわゆる「うまさ」では差があることが多いです。
そこで今、私が所属する研究チームは、「発音」や「イントネーション」を測るシステムを開発しようとしています。
今、データを取っているのは、日本語と英語話者のVOICE ONSET TIME (VOT)というものです。
例えば、日本語で「パンダ」と言う時と、英語でPANDAと言う時の「ぱ/pa」の音は、[p]の音から[a]の音に行くまでの時間(といっても100分の1秒単位)が違います。
このような音声をたくさんの単語で言ってもらい、録音して、ソフトに入れて数値を出し、データを構築しています。そこから「英語らしさ=英語っぽい発音」「日本語らしさ=日本語っぽい発音」を探ろうとしています。
これは最も小さい(ミクロの)レベルで言語能力を測るひとつの方法ですが、これ以外にも文を読み上げ、どれだけ正しいイントネーションに近いかを測るものや、会話データの発音だけに焦点を当てて、採点する方法などを開発しようとしています。
このようにして、日々、日本語と英語の音声データを聞き続けていると、普段、誰かと話していても、その内容より、発音や韻律ばかり気になってしまうことがあります。
次は、日本語と英語のバイリンガルの子供が、どの程度、音を切り替えているかをいくつかの実例と共に書いてみようと思っています(...が、11月は、学会がたてこんでいるので、ちょっとごぶさたしてしまうかもしれません)。
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