「木挽町のあだ討ち」
映画も原作も良くて、永井紗耶子さんの他の作品も読んでみたくなりました。
「商う狼」
これも素晴らしかったです。
なにせキューバ革命に心酔しているきゅうばちゃんですから
正義感の強い男にはしびれてしまうんですよ。
正しいことを言ってても力がともなわなければ事が成せない。
ただ大人しくしていれば犠牲が後を絶たない。
そんな理不尽な世を立て直そうと一人立ち上がる茂十郎。
当時の社会にはそぐわないほどの切れ者で、敵もいっぱい。
だけど彼の真っすぐな人柄と才を見込んで力を貸してくれる味方も得て
どんどん力をつけていく様子を間近で見ていた弥三郎が語る物語です。
江戸時代、あきんどの地位は低かった。
武士は力づくで金をせびり、町人や農家からも業が深いと見下される。
必死で蓄えたものも飢饉が起きれば飢えた人々に奪われてしまう。
だから茂十郎は血液のように金が流れる世を目指し、商人としての
誇りを持とうとしたのです。
人の体をめぐる血液が一部に溜まれば瘤になり命も奪いかねません。
お金も下流まですみずみ行き渡ってこそ国が富む。
その思想を実際に形にして残してくれた偉大な人物だったのです。
長年、管理を放置されて大きな被害を出した橋を直し、商船を次々に
新造し、大店からお金を集めて米価の調整も請け負いました。
その飛びぬけた手腕を恐れた者たちによって、たったの13年で彼は
江戸から消されてしまいます。
腐った政治が偉業を成し遂げた者を葬り去る。
こんなことが幾度となく繰り返されてきて、名も残らずに消えていった
人々がいたことを口惜しく思います。
けれど高い志は受け継がれ、語り継がれることでしょう。
日本人が海外でも高く評価されるのは、そんな昔の人の地道な努力
あったればこそと思います。


