約10年前の治療の話(前半) | kyupinの日記 気が向けば更新

約10年前の治療の話(前半)

ある日、ある患者さんの治療中、約10年前の入院時にどのような治療をしていたのか調べてみることにした。その理由は、あまりにも緊張病症候群が重く、また色々な薬を使ってみてもこれと言う手ごたえがなく、既に1か月以上保護室にいる状況だったからである。

 

入院して1か月以上経っても、保護室で壁に向き独語し続けておりこちらに向かない。全く話ができず、突然パッと水を吐く。この水は構造的に和式トイレにある水であった。

 

10年前の治療経過はおぼろげながら覚えていて、あきれるほど良くならず、2か月ほどして若干良くなり45か月してようやく幻覚妄想が消褪し、1年くらいしてやっと退院できたといった感じである。あまりにもうまくいかなかったという記憶しかない。

 

退院後は、なんとアパートで生活し日常生活には支障がほぼないほどに軽快している。そしてその後、10年ほどは良い状態を維持していたのである。

 

前回、なぜECTをしなかったのか不思議だった。どうも時間が経てばいずれ良くなる感覚というか見通しがあった。ちょっとうまく言えないが、この人は普通に薬物治療していても最終的にはそこまで酷いことにならない感覚があったからこそECTをしなかったのだろう。

 

ところがあまりにも良くならず、時間がかかってしまった。普通、あのように軽快する人はあれほどまで時間がかかったりしない。

 

今回の増悪は前回と非常に似ていて、悪化の内容まで、あるいは薬が効かないところまでそっくりだった。10年前のカルテを見ていると、不思議な治療内容だったのである。

 

それは、今から見ると抗精神病薬の緩急をつけて経過をみるといったものである。具体的にいうと、悪性症候群を起こす直前くらいまで抗精神病薬を増量、継続し、実際にCPK1000以上になったあと減薬中止。CPKが正常化するまで補液で様子を見るというもの。それを何度か同じようなパターンで繰り返しているのである。CPK上昇時にも眠剤やベンゾジアゼピンは中止していない。

 

その患者さんはその緩急というか揺さぶりにより少しずつ緊張病症候群を脱していったのである。

 

これはずっと診ているからこそできる治療である。これは体への作用的にはECTを施行することに似ている。

 

(前半おわり)

 

参考

悪性症候群の謎

悪性症候群の謎(補足)

ベンゾジアゼピンが潜在的に悪性症候群に効いている(1)

その薬が有効なのではなく、「過程」が有効

アトピーによる精神病状態および一連の過去ログ