社会人になって初めて新人歓迎会に参加したときの話。

 

 

新人研修を終えて工場勤務になってから一月ほど経ったころ新人歓迎会があった。40名くらいの大きな課で新人は3人。自己紹介であいさつをした後は普通の飲み会になった。その中に昨年学卒で入社した美人な先輩社員がいた。いつも課内にかかってくる電話を取ってくれて助かっていたので(自分は取りたくなくて逃げていた)お礼を言いたいなと思ったが、美人と話すのは慣れていなかったので言い出せなかった。

 

そのうちお酒も進んで気分が良くなってきたころに、その先輩が来て、

「どうしてここに入社したの?」

と聞いてきた。

 

「プロレスが好きで後楽園で生観戦したかったから(東京の会社を選んだ)」

と思わず本音を話してしまった。すると、

 

「私、前田日明(あきら)さんをよく知ってる」

と言ってきた。

 

「えー!?」

女性のプロレスファンは初めてだったけど、よりによって前田日明とは驚いた。

 

「事務所にも何回か行ったことある」

 

1988年6月というとちょうど第2次UWF(新生UWF)ができた頃。世田谷に事務所がありここからは近かった。ファンというより友人のような言い方をしていたので、もしかして前田日明の彼女?とも思ったが、さすがにそれは聞けなかった。

 

しかしながら"前田日明ファンに美人が多い説"は、このとき自分の中で真実になった。

 

プロレス好きとわかると仲間意識みたいなものができて、いろいろ話をすることができた。お父さんはトヨタに勤めていてソアラの開発責任者。実家には鍵付きの書斎があって家族も入れなかったとのこと。上品でお嬢様風な雰囲気とは思っていたが、本物のお嬢様とは思わなかった。入社が内定した後にスバルに勤めている旦那さんと在学中に結婚。前田日明の彼女ではなく既に人妻だった。スバルはトヨタの仲間なのでお父さん方面の関係者かなと思った。

 

当時は女性は結婚したら退職するのが一般的だったから、結婚して入社するという全く逆なことをしていて凄いと思った。

 

「(そんなお嬢様が)どうしてこの会社に入社したんですか?」

 

と逆に聞きたくなったが、宴会お開きの時間がきて聞けなかった。

 

 

せっかく美人さんと知り合えたのに人妻だったのは残念であったが、本命のお嬢様との出会いはもう少し後に訪れたので、これはその予告編ともいえた。お酒が入ると女の子との会話が弾むことを含めて。