ここ数年、オリエンタル音楽と呼ばれる音楽を演奏するようになってきている。
アラブ音楽やトルコ音楽と言われるジャンルの音楽。
これらに具体的に接する前は「音楽に国境は無い、心に素直になればどんな国の音楽だって交わることができる」などと思っていたのだが、ある意味それは今でも正しいけど、ある意味大きな限界があることも知った。
そう、オリエンタル音楽は西洋12音階ではないのである。
そんなことすらぼくは知らずに分かったようなことを思っていたのだ。
ぼくが演奏してきた楽器はサックスやフルートで、言うまでも無く徹頭徹尾西洋音楽用の楽器だ。
どちらも穴をふさいで音階を出す笛の形式だが、より豊かな音域を正確に演奏するために、穴は直接指で塞がない。
「キー」の遠隔操作、機械的動作で、計算された大きさの穴を延長線上に置かれたパッドで塞ぐ。
西洋音楽を演奏する上でそれは非常に考えられた機構であるが、非西洋音楽をやる上では実に邪魔な機構だ。
ここからが12音階でない話。
そちらの音楽に慣れ親しんでいるぼくの音楽仲間には今さら何をって感じだろうけど、そうでない人が大多数なので見逃していただきたい。
非西洋音楽では半音と半音の間の「微分音」と言うのがしょっちゅう出てくる。
オリエンタル音楽は和声の音楽ではなく「マカーム」=旋法(スケール)の音楽であり、その音列が西洋12音階ではない。
理屈でなくそういう歴史、そういう文化なのだ。
まずはそれを認め、敬意を払おうと思った。
これがないと、この手の音楽は始めてはいけないと思う。
そこで使われるメロディ楽器は主に弦楽器で、フレットレスのため音階は自由に出せる。
「ネイ(ナイ)」や「カバル」などと言った笛、「ミズマール」や「ズルナ」といったダブルリード楽器もあるが、かなり原始的な形態のため、かえって音階はアレンジしやすい。
トルコではクラリネットが多用されるが、ちゃんと微分音が出せるような機構になっているらしい。
ただぼくは縁があって普通のサックスやフルートを演奏しており、楽器を非西洋楽器にすぐ持ち変えられるほど器用ではない。
新たな楽器をマスターするにはそれだけの時間がかかるわけだが、今までの楽器を捨てる気はさらさら無いため、ぼくは腹をくくった。
「よし、今使っているサックスやフルートで微分音を出せるようになってやろう」
世界に視野を広げると同じようなことを考えて実行している人はそれなりにいるだろうが、ぼくの周りには一人もいなかった。
教則本もお手本もないので、自分で微分音が鳴るポイントのフィンガリング、アンブシュアなどを開発するわけだ。
厳密に言うと全音の間に9音ポイントが存在するらしいが、そこまで使い分けられる域はまだ先として、まずは半音の間を探る。
よく出てくるのが「BとBフラットの間」「EとEフラットの間」「AとAフラットの間」「FとFシャープの間」である。
この中で一番多用されるのが「BとBフラットの間」なのだが、フルートの場合、これを一発で出せる奏法がなかなか開発できなかった。
その音程は出せるのだがフィンガリングに頼らずアンブシュア、息と頭部管の角度でそのつど調節するため、速いパッセージは難しく、また音程的にもなかなか安定させられない。
フルートは機構的に右手の人差し指・中指・薬指のどのキーを押してもそのまま左手のBフラットのキーを塞いでしまい(あ、これはサックスの話だった…しかし有効に塞いでくれるキーがないことは事実)、これが最大のネックなのである。
リングキーの楽器にすればある程度解決するかなと思いつつ、その仕様の気に入った楽器はなかなか手が出る値段でない。
半ばフルートは仕方ないかと思っていたのだが、今日の自宅練習の際、偶然にもその「BとBフラットの間」の音に当たるフィンガリングが見つかった!
全音域ではなく2オクターブ目のみでしか使えないが、フルートの場合かなり多用する音域なので、これはぼく的に大発見だったのだ!
思わずTwitterにも書き込んでしまったぐらい。
詳しく文章で書くのは大変なので省くが、もし真剣に西洋フルートでオリエンタル音楽をやろうとしている人がいたら、分かち合いたいと思う。
「そんな方法、当の昔に知ってるよ」といわれるかもしれないけど。
それはそれで、同じチャレンジをしている仲間がそろそろ欲しい。
で早速今日(27日)のライブで使おうと思ったら、まだ練習が足りなかったため、今まで通りの頭部管の角度調整で自然と出そうとしてしまう。
無意識にそのフィンガリングがまだ出てこないのだ。
もうひたすら練習するしかないですわ。
