【働く人の味方です】 思いどおりにいかない日でも笑うセイカツ -13ページ目

大根か否か

先日、とある芝居を観た。
そこには「副業:俳優」という人が
割と重要な役割で出ていた。
素人芝居ではない。
きちんとした、プロの商業演劇である。

面白かった。
プロの俳優さんが見たらどういうかわからないけれど、
少なくともお金を払った客であるワタシは
最後まで面白く芝居にのめりこんだ。

もちろん歌舞伎や宝塚だったら
こんなわけにいかないだろう。
そもそも副業で歌舞伎役者やら
宝塚のスタアになれるわけもないので。

舞台に立って演技をすれば、
誰もみな俳優であり女優だ。
いつ始めたかとか、どこの劇団かとか、
誰に演技を習ったかとか、
そんなことはまったく関係なくて、
目の前のお客の心を動かしたら
その人がいい俳優でありいい女優だ。
何年やってても、どんな大御所でも
今日、今、この舞台で
誰の心も動かせなければ
それは大根役者でしかない。

何の仕事でも、多分仕組みは同じことで。

どんなに派手な宣伝文句で釣ろうとも、
どんなに過去に素晴らしい実績があろうとも、
どんなに「○○さんにお褒めいただきました!」といっても、
今日、今、目の前のお客の心を動かせなければ
たぶんやっている価値はない。

そっちが来なさいよ

最初の会社は入社して2年9カ月で退職した。
ワタシが退職することが部署で公表されたのは
退職日の1か月半前くらいだっただろう。

退職日、2期下の後輩が、小さなプレゼントと
1冊のノートをくれた。
彼女は学生時代チアリーダーをやっていて、
きれいに日焼けして、長い髪をさらさらとなびかせ、
ゲラゲラ笑いぐびぐび飲み、8月の太陽のように明るく、
時に場外ホームラン級のボケをかっ飛ばす、
本当に気持ちのいい後輩で。
「家帰ってから見てくださいよっ!」と念を押された。

家に着いてから「そういえば」とノートを開くと、
ワタシの退職を知らされた日から退職当日までの
ワタシの様子を、イラストレーター並みの絵で
1日1ページずつ綴った
絵日記的メッセージだった。
ギャグマンガの要素も満載で、
たいがいが「こんなくだらないことを言い合った」とか
「お昼に●●でA定食食べた」みたいなことだけど、
そんなものを作っていたことすら全く知らなかったので
「もー!暇なの??」と悪態をつきながらも
嬉しくて、今も実家に大事にとってある。
もう20何年まえの話しだ。

10何年振りかに彼女からいきなり連絡をもらい、
飲みに行ったとき、あまりにも楽しすぎて
二人で大泥酔した。
お互い、結構人生でしょっぱいものを喰らってきたが、
その日はただただすべてを笑い飛ばしながら飲んでいた。
「あのノート、ホントに嬉しかったんだよ」と
酔っぱらって100回くらい言ったと思う。
「やだもー!捨ててくださいよー!
恥ずかしいですよー!」と100回くらい言われたけれど。

そのあと何度か飲みに行き、
ここしばらく…1年半くらい会ってなくて、
そろそろ「最近どうよ?」と連絡をしようと思ったら
ポンッと彼女の訃報が届いた。
すい臓がんだったそうだ。
4月に再婚したばかりだったそうだ。

なに死んじゃってんのよ。
なんで私が年下のあーたの葬式に行かなきゃなんないのよ。
あーたがワタシの葬式来なさいよ。
ワタシの70歳の誕生日のパーティで、
腰ミノつけてヤシの実だかホタテだかの
ブラジャーつけて珍妙な創作フラダンスを
絶対踊るって言ってたじゃんよ。
やんなさいよ。

やんなさいよ。

バカバカしい道

「バカバカしい」に目がない。
たとえば落語でも、お涙ちょうだいの人情噺より、
バカバカしい一席が大好きで、
バカの与太郎が出てくる噺では
何度でもバカみたいに笑い転げることができる。
(与太郎をやらせたら天下一品だった
故古今亭志ん五師匠は、
私的人間国宝である)
噺家さんがマクラで、
「この商売、バカじゃ出来ないんですよ。
でもね、利口はならないんです」というのに
毎度毎度大笑いする。

「バカだねぇ~」はワタシにとって最大級の賛辞である。
関西の方は「アホやなぁ」がほめ言葉だと
ほとんどの方が認識しているけれど、
関東人で「バカだねぇ~」といわれて
「そうかい?(←満面の笑顔)」と
言える人が少ないことに無念さを感じる。

日常から「バカバカしい」をていねいに拾い上げて、
きちんとストックしておいて、
過酷で冷たい現実の日々に
ちょいちょいちりばめていくと、
その険しい山を乗り越える
原動力になることがある。
ぐーっと肩や背中や眉間に力が入って
身体ががちがちになっているときに
わき腹をツンと突かれると
ふと力が抜ける。
「何すんだよー!」という顔は笑っている。

笑えない現実を荒業で笑い飛ばす。
そんな一手をいくつもマスターして
「バカバカしい道」師範になるために
今日もワタシはバカバカしく過ごそうと
日々鍛錬しているのである。ふんっ!←気合