★★★★自己紹介は★★★★

★★★★こちらから★★★★

 

 

 

 

たまには大人だって

絵本の読み聞かせをして欲しい夜がある。

 

 

 

そう考えたのはその日、

柄にもなくいじけていたことも

関係しているのだろう。

 

 

 

それは遡ること、2日前のこと。

2月2日。




そう。2月2日と言えば、節分の日だ。

 

 

僕は玄関の前で、

「へーんしん!」と静かに叫んでいた。

 

 

 

その掛け声を皮切りにライダースーツに身を包むのは、仮面ライダー。

 

 

 

 

同じように僕は、

そう唱えて鬼の仮面を被った。

 

 

そして、心を鬼にして、攻撃開始!

 

 



 

「鬼だぞーー」と玄関のチャイムを鳴らし、モニターいっぱいに鬼の顔面を放り込んだ。

 

 

 

 

さっそく2歳になる下の子の泣き声が聞こえてくる。しめしめだ。

 

 

 



開けてくれそうもない玄関にしびれを切らし、

鬼はポケットから鍵をすっと取り出した。

 

 

 

本物の鬼と思い込んでいる下の娘からしたら、不法侵入も甚だしい。

 

 





まさに鬼畜の所業だ。

 

 



 

玄関の扉が開く音で、

泣き声の勢いがなおのこと増す2歳児。

 

 



 

それでも手加減を知らないこの鬼が、

次にターゲットを絞ったのは上の娘だ。

 



 

「鬼だぞー!」

とますます声を張り上げた。

 

 



ところがもう齢6歳。

 

 




子供騙しの通用しないお年頃だ。

 

 



ケタケタ笑いながら、

顔面目掛けて豆を次々に投球してくる。

 

 



「野球なら、連続死球で、

とっくに退場だぞー!」

 と、鬼の口調そのままで、意味の分からないセリフを吐く私は、鬼プロデュースゼロの男。



そして、目の前にはそんなことおかないなしに、ますます豆を投げ込んでくるかしまし娘。

 

 

 

続けてこの娘は、

鬼に向かって、こう言ったのだ。

 

 

 

 

「パパはー外!
福はー内!」

 

 

 

 

待て、待て、待て。パパは外に出しちゃいかん(鬼嫁ならまだしも)。

 

 



 

あくまでも外に出すのは鬼な。


 

 

 

 

 

前振りが長くなったが、こうしていじけた僕はその夜、娘に読み聞かせをせがんだわけだ。

 

 

 

 

「もうしょうがないなぁ」と彼女が取り出したのは桃太郎。




きっと鬼とのじゃれ合いがよっぽど楽しかったのだろう。


 

 

桃から生まれた桃太郎。

誰よりも強い桃太郎。

 

 

犬にきび団子を分け与え、

猿にも雉にも分け与え。

 

 

それと引き換えに旅のおともにと、

恒例の展開になつかしさが蘇る。

 

 

 

そうこうしていると、

娘の口元からいよいよ「鬼ヶ島」のワードが飛び出した。

 

 

 

 

さーていよいよクライマックス。

 

 

 

 

 

ここから鬼退治の始まr…

 

 

 

 

 

 

違った。

なんか、違った。

なんかと言うか、

全然違った。

 

 

 

 

 

 

「鬼ヶ島に到着した桃太郎は、

鬼たちにもきび団子をあげて、

みんなで仲良く食べたとさ。

めでたし、めでたし」

 

 

 

この時僕は、


「え!?なんか違う!」


と反論したい気持ちを、きび団子と一緒にぐっと飲み込んだ。

 

 

 

そして、娘に

「どうして鬼は倒さないの?」

と問うてみた。

 

 

 

すると娘は目をキラキラさせながら、

こう言った。

 

 

 

「だってみんなで食べたほうが

きび団子は美味しいでしょ?」

 

 

 

 

娘にとっては、「みんな」の中に鬼までもが含まれている。

 

 

 

それってなんか素敵と思った。

 

 

 



話し疲れたのか、その後、素直に眠りについた娘を見ながら僕は考えた。

 

本当の強さってなんだろうと考えた。

 

 


娘の世界では、桃太郎は戦わなかった。




でも、それが決して弱いとは繋がらない。


僕の知ってる桃太郎は、
誰より力が強いはずだから。
 


 

それで思ったのだけど、

「本当の強さ」って、

相手を打ち負かすことじゃない。

 

 

 

例えば守ることが強さなら。



夫婦喧嘩で相手を打ち負かして、

それで「勝ち」と言えるだろうか。

 

 


僕はそうは思わない。

 

 

 

 

最後に2人が笑っていることが、勝ちだし、

相手が笑っていることが、守るということだ。

 

 

 


 

 

格闘家の須藤元気さんが、インタビューでこんなことを言っていた。

 

 

 

「本当に強い人は、戦わない。

その代わり屈しない」と。

 

 

 

 

娘の世界の桃太郎は、戦わなかった。

 



 

かと言って、

わざと負けてあげた(屈した)わけでもない。

 

 

 

それどころか、最後、みんなで笑ったのだ。

 

 

 

 

本当に強いのは、

娘の語る桃太郎のほうかもしれないなあ。

 

 

 

 

何より、鬼も「みんな」に含めるなんて、

すごいぞ!と、娘の頭をなでて

眠りにつこうとしたその時…、




気づいた。

 

 

 

おい娘!

鬼は「みんな」に含めるのに、

「パパは外」って

どういうことや!

 

 


案の定、夢でうなされた。

 

 

 

 

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