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やはり、5歳の娘がすごい気がする。
娘は美味しいお菓子を見つけると、
「パパも食べてみてー」と分け与えてくれる。
僕だったら、美味しいものを見つけたら
独り占めしたい。
少しでも、「甘いひと時」を延命するために。
そのためには、
いかに退屈な顔をするかがポイントだ。
つまり、美味しくなさそうに食べるか。
それは、ちょうどマネキン人形になった気分で。
ひっそりと。存在を消すように。
簡単そうに見えて、これが非常に難しい。
心は完全にとろけているのに、
どうやって顔に出さずに
目の前のスイーツを口に運べばいい?
最大の難関は、口に入れる瞬間だ。
やはり人は
口を開けた瞬間に
表情が一気に緩む。
過去の嫌な記憶を必死で引っ張り出し、集中。
宿題、失恋、不採用、口内炎、腹痛、頭痛、締め切り、ノルマ、不合格、その他もろもろ!
全集中の呼吸!
そして、最大の注意を払いながら、
ひと口、またひと口と、
あまいひと時を堪能するのだ。
そんな戦いをこれまで
いくつ重ねてきただろう。
この戦いをかき集めたら、
それだけで、社会科の教科書を
作れる自信だってある。
それなのに娘は5歳にして、
自分の大好きなものを、
人に分け与えることができるのだ。
この子は、本当に僕の子だろうか。
この子の辞書には
「独占」という文字はないのだから。
嬉しいことは、
みんなで
シェアしたほうが
もっと嬉しい。
決して言葉にまではしないが、
娘の行動からはそんな思いが
ひしひしと感じられる。
やるぜ、
この5歳児。
感性だってなかなか鋭いところがある。
確か、つい先月のことだったと思う。
仕事から帰ると、娘がはしゃいでいた。
ニュースで、その日の夜に
東京の空にも流れ星が流れることを
知ったからだ。
ところが、その夜は生憎の曇り空。
「100人乗っても大丈夫なのは
イナバ物置だけにして欲しいよ」
と言いたくなるほど、
何人乗ってもびくともしないだろう
分厚い雲が空を覆っていた。
すると娘。
おもむろに窓を開けて、
空に向かって息を吹きかけている。
ちょうど、その強さは
ガラス細工を命を吹き込む職人を
イメージしてもらえばいいだろうか。
とにかく空に向かって、
必死に息を吹きかけているのだ。
理由を知って驚いた。
雲を吹き飛ばすために、
空に息を
吹きかけていたんだと。
「いい感性してるなぁ」と、
愛くるしくなって、
一緒に息を吹きかけたよね。
娘よ。
あの時、君のおかげでパパの心には
たくさんの流れ星が流れていたよ。
だからお願いしておいた。
君がお金持ちの
男性と結婚して、
贅沢な老後が
おくれますようにって。
ごめんね。パパは君とは違って、
まだまだ人間としての修行が足りないみたいだ。
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