「自分が変われば、世界は変わる」
なんて言われているけど、
本当かよ、ともの思いにふける午後。
そんなどうでもいいような
問いが頭に浮かんだのは、
影響していたと思う。
僕は、取引先へと向かっていた。
平日ともあり、電車は混み合っている。
車内を埋め尽くすのは、
僕も含め、疲れ果てたサラリーマンたち。
さて目的地まで、あと5駅もある。
僕はと言えば、見事、角の席を確保し、
束の間の休息についていた。
コロナが蔓延し、
変化を強制的に求められた
この2020年におい
電車特有の生暖かさに変わりはない。
この状況において、
眠気に襲われない人っている?
もちろん僕も例外なく。
フ◯ーメイソンも驚きの
巨大組織=スリープメイソンに襲われていた。
と、言ってもだ。
襲われるの大歓迎のこの状況。
スリープメイソンに対し、
お好きにしてください、
事態は急変した。
僕の目の前に立つのは、
杖をついたおばあさん。
大きな荷物まで持っている。
周りを見渡した。
だが、この状況を救おうとする
革命家は現れそうもない。
…私がなるしかないのだろうか。
令和のチェ・ゲバラに
なるしかないのだろうか。
しかしだ。
私の目の前に立ちはだかるは、
逆らいでもして、
この社会から
干されてしまわないだろうか。
私は家族を持つ身だ。
もし私が干されてしまったら、
明日からのおむつ代は誰が?
皿洗いは? そして、風呂掃除は?
いや、でも目の前に
困っている人がいる!
これで社会から干されるなら本望。
娘たちよ。父の勇姿を見よ!
…あとのことは任せたよ。
そして私は、一線を超えた。
「あばあさん、
こちらに
お座りください」
命がけの大仕事を終えた僕は、
満身創痍でつり革につかまった。
ところが胸の奥は、清々しく、
田中邦衛が「ほたる~!」と叫ぶ声が
聞こえてきそうなほどだった。
なんせ誰も成し得ぬ
革命を成功させたのだから。
Tシャツに自分の顔が
プリントされる日も近いと思った。
世界が違って見えたのは
ちょうどその時だった。
なぜか、電車の中に
優しさが充満しているのが分かった。
先ほどまで、
いなかった僕の視界に、
風船で楽しそうに遊ぶ赤ん坊が見えた。
そして、
おや、それどころかみんながみんな、
優しそうに見える。
さらにさらに、ちょうど西日が
窓のブラインドに差し込み、
人類の文明が養殖のレンブラント光線を
生み出している。
なんと素敵な!
先ほどの世界と今のこの世界は
本当に同じ世界なのだろうか?
さて、話を冒頭に戻そう。
「自分が変われば世界が変わる」
これはどうやら都市伝説ではないようだ。
内情を紐解くと、きっとこんな感じ。
まずは席を譲る前の僕について。
疲れきった自覚がある。
すると、「自分だけ疲れきってるなんて嫌だ」と
深層心理は考える。
からの、そのつじつまを合わせるために、
現実に周りに疲れきったサラリーマンを
探し始める。
こうして「疲れきったサラリーマンで
満たされた世界」を自分で作ったのだろう。
一方、おばあさんに席を譲り、
清々しくなった後の僕はと言うと。
こんなに僕が清々しい気持ちに
なっているのだから、
周りも清々しいに違いないと
深層心理は考える。
からの、つじつまを合わせるために、
現実から清々しい光景を探し始める。
こうして、僕の世界に
優しさが充満した、ということだ。
えっと、つまりの話、
世界は壮大な
勘違いによって、
できているってことだ。
そりゃそうだ。
写真を見ただけじゃ、朝日なのか、
夕日なのかすら判断できないのが、
人間だもの。
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